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青野賢一が選ぶ「2025年のベスト」3作品

青野賢一
青野賢一
文筆家/選曲家/DJ
1968年東京生まれ。株式会社ビームスにてプレス、クリエイティブディレクターや音楽部門〈BEAMS RECORDS〉のディレクターなどを務め、2021年10月に退社、独立。フリーランスとして執筆、DJ、選曲をはじめさまざまな活動を行なっている。音楽、ファッション、映画、文学などのポピュラー・カルチャーをアクチュアルな問題意識を持って論じた書籍『音楽とファッション 6つの現代的視点』(リットーミュージック)を2022年7月に上梓。また、USENの店舗向けBGM配信アプリ「OTORAKU」にキュレーターとして参画し、プレイリストを定期的に公開中。

Kali Malone
『The Sacrificial Code』

ストックホルムを拠点に活動するアメリカの作曲家、カリ・マローンの『The Sacrificial Code』(2019)に「Sacrificial CodeⅡ」(2018)と「Sacrificial CodeⅢ」(2023)の2曲を加えたリイシュー盤。神々しいパイプオルガンの響き、静かにゆったりと変化する旋律のイマジネーション豊かな美しさのみならず、西洋文化の象徴ともいうべき標準的な調律への懐疑と挑戦が垣間見える傑作。


Annie & The Caldwells
『Can’t Lose My(Soul)』

アメリカ・ミシシッピのファミリー・バンドの現時点では唯一のアルバム。地元の教会で一発録りされたというこの作品の白眉はなんといっても「Can’t Lose My Soul」だろう。ゆっくり熱を帯びてゆく10分越えのこのナンバーは、そこに込められた信仰心や流されない強さをひしひしと感じさせる真のゴスペル。一聴してすぐさまとりこになった。この曲、DJプレイの際は当然フル尺である。


Butterfly
『The Music of Butterfly』

ヴィンセント・ギャロとハーパー・サイモンがバタフライ名義で発表したアルバムは、淡々としたなかに美しさやおかしみ、狂気が宿っており「ああ、ギャロだなぁ」という印象。ギャロがミックスやマスタリングからグラフィック・デザインまでと全面的に携わっているそうで、なるほど納得の出来栄えだ。代わりが見つからないこうした音楽や表現に触れられるのは幸せというほかない。

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