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【ラルフ・ハイデル】初来日コンサート直前インタビュー|日本のデザインスタジオと連携して待望の初来日公演を実現


ドイツの音楽家、ラルフ・ハイデルが日本で初のコンサートを開催(2026年10月6日、ルーテル市ヶ谷ホールにて実施)する。ラルフ・ハイデルはベルリン在住のミュージシャン。作曲家として、またマルチ楽器奏者として、サックスやフルート、クラリネット、ピアノ、シンセサイザーなどを操り、ジャズやクラシック、現代音楽を横断する作品を生み出している。

そんな偉才の初来日公演を企画したのは、日本のデザインスタジオ、upcoming.studio(アップカミングスタジオ)である。音楽ビジネスとは無縁の彼らが、なぜベルリン在住の音楽家と連携し、初来日公演をプロデュースするに至ったのか。そして、一体どんなステージになるのか。

ベルリンのラルフ・ハイデルと、東京の upcoming.studio(孫兆軒さん/マッカートニー龍馬さん)をオンラインでつなぎ、その経緯を聞いた。

SNSのメッセージから来日公演へ

──そもそも、どんな経緯でこのプロジェクトは始動したのですか?

孫兆軒(以下:孫) 僕とマッカートニーは、東京都内でデザインスタジオを運営していまして。2人とも音楽が好きなので、よく情報交換をするんです。それで、最近聴いたラルフ・ハイデルの『anyways.onto better things』が良かった、という話になって。

──あのアルバムは2025年の発表でしたね。

 そうです。ちょうど1年くらい前。僕は「春の雨」というレコードショップのSNSでラルフの存在を知って。めちゃくちゃいいサウンドだと思ってすぐにアナログ盤を買いました。で、そのレコードをマッカートニーが見て「俺もそれ買った。めっちゃいいよね」って。

マッカートニー龍馬(以下:龍馬) そんな話の流れで、ラルフのインスタグラムを見つけて「あなたのアルバムは最高だ」とコメントしたんです。するとラルフから「君はどこで何をやっている人なの?」という返信が来ました(笑)。それで、僕は日本で活動しているデザイナーで…みたいな感じで自己紹介して。

ラルフ・ハイデル (以下:ラルフ) 僕はその頃ちょうど「日本でライブをやりたいな…」と思っていた時期だったので、そのことを彼らに伝えました。でも、どこで演奏できるのか分からないし、誰を頼ればいいのかもわからない。そんな話をしたことが、今回のプロジェクトのはじまりです。

 それで、僕らの知り合いでライブをオーガナイズできる人を探して、一度ミーティングをしよう、ということになりました。でも話しているうちに「これもう、自分たちでやろうか」という方向へどんどん進んでいきました。

──ラルフさんはなぜ日本でコンサートをやりたいと思ったのですか?

ラルフ 僕は以前にプライベートな旅行で日本を訪れたことがあります。そのときに、いろんなレコードショップや音楽的な場所にも行きました。そして、僕の音楽を好きだと言ってくれる人たちにも会うことができた。自分の音楽が、遠い日本の人たちに響いていることはすごく嬉しかったし、なんだか不思議な感覚でした。それで、「いつかここで演奏したい」と思うようになりました。

さっき彼らの話にも出たけれど、東京の「春の雨」というレコード店が僕のレコードを扱ってくれました。最初は5枚くらい渡して、それから2週間後に「もっと送ってほしい」と連絡が来たんです。すぐに追加で15枚を送り、そのあとさらに15枚といった具合にどんどん増えていった。とても自然な流れで、口コミで広がっていったのだと感じました。

日本独特の「音楽鑑賞」文化

──日本のリスナーに響いた理由は何だと思いますか?

ラルフ 以前に僕が出したアルバム『anyways.onto better things』で、三宅純さんが参加してくれました。そのことは僕が日本のファンに気づいてもらえる大きなきっかけになったと思います。

もうひとつ付け加えるなら、日本にはアンビエント・ミュージックの長い伝統があります。僕自身はアンビエントを専門につくっているわけではありませんが、その伝統があるからこそ、僕のような音楽に対する理解も深いのだと思います。

日本の皆さんは、アナログな温かい音色や古い楽器と、現代テクノロジーを融合させる僕のスタイルを評価してくれていると感じます。それは、伝統的な要素と非常に高度なテクノロジーが同時に存在している日本という国にも重なります。

──あなたの音楽にはアンビエント的な側面もありますが、ジャズやクラシックの素養も活かしつつ、独創的な表現を編み出してしますね。

ラルフ 最近ではジャズのアーティストも新しい領域をどんどん開拓しています。そうした音楽は複雑さや難解さもあって孤立しがちです。でも日本では違う。多くの人が集うような場所で、複雑で奥深い音楽が流れていて皆それを楽しんでいます。

もちろんヨーロッパにもそうした音楽が聴ける場所はありますが、東京はより自然で日常的にそうした音楽を楽しめる環境が整っている。

──なかでも特に心を惹かれた場所や現象はありますか?

ラルフ リスニングバーです。これは非常に豊かな、日本の文化のひとつだと思う。そこはコンサートホールやライブハウスではない。けれど人々は音楽を聴くためにその空間へ集まって、音を聴くことに強く集中している。そんな場所や催しはヨーロッパではあまり見かけません。僕が日本を観光したとき、まずそのことに驚いたし、本当に素晴らしい環境だと思いました。

「人生最高のライブ」を求めて

──最新アルバムLive at silent green Berlinについて伺います。これはどういう内容の作品ですか?

ラルフ さっき話に出たアルバム『anyways.onto better things』のリリース・コンサートを収録したものです。ベルリンにあるサイレント・グリーンというホールで行ったライブ録音です。当然ですが、スタジオアルバムとは少し違います。即興演奏の比率が多く、よりジャズ的で、エネルギーもずっと強い。

──このライブは、サックス奏者のモリッツ・シュタール(Moritz Stahl)と、ドラマーのダニ・シェフェルズ(Dani Scheffels)とのトリオ編成でしたね。

ラルフ そう、私はピアノとシンセサイザー、ボーカル、サックスを担当しました。あの日は会場の雰囲気も信じられないほど素晴らしかった。僕たちが中央で演奏し、観客がその周りを囲むように座っている。本当に美しいコンサートで、僕の人生のなかで最高のライブのひとつです。

 

──今回の日本公演も録音作品になる可能性もありますか?

ラルフ そうなるくらい素晴らしい内容になることを願っています。

──今回はバンド形態ではなく、ソロ公演です。どんな内容を想定していますか?

ラルフ もちろん、魔法のような瞬間をあらかじめ計画することはできません。ただ、僕にとって非常に特別な公演です。日本で演奏するのは初めてだし、初公演としては比較的大きな規模なので、まだ発表していない作品や誰も聴いたことのない曲も演奏するつもりです。

楽器はピアノ、サックス、シンセサイザーが中心になります。それぞれの楽器に、しっかりと焦点を当てられる構成が好きなんです。それから、会場にとても美しいグランドピアノがあるので、それも生かしたい。

デザインスタジオと音楽家のセッション

龍馬 僕らはブッキングのプロではないし、音楽や興行に関しても素人です。そんな人間と仕事をするのは、プロのミュージシャンにとって大きなリスクだと思います。きちんとブッキングできるのか、そもそも本当に信頼できるのか。そこはラルフも心配だったんじゃないかな。

ラルフ いや、僕はいつも音楽業界の外側にも目を向けるようにしているので、アップカミングスタジオとの連携は自分にとって自然な流れだった。そもそも僕自身がすべてDIYだからね。自分のレーベルを立ち上げ、ディストリビューションも自分でやって、レコードも自分でプレスし、ドイツ国内のライブも自分でブッキングしている。

もちろん、その過程で音楽業界のいろんな人と接触し、一緒に仕事をすることもあります。ただ僕にとって、一緒に仕事をする相手が音楽業界にいるかどうかは重要なことではありません。相手に対してポジティブな感覚を持てたら、僕はその人と一緒にやってみます。そういうときにこそ、型にはまらない、おもしろい結果が得られるから。

──デザインスタジオならではの強みもありますね。

 僕たちはコンサートを制作した経験はありませんが、デザインスタジオとして培ってきた別の経験があります。それから、僕らは一人の音楽ファンとして、いろいろなライブへ行ってきました。そんな中で「ここが良かった」と感じることもあるし「ここが残念だったな」と思うこともあります。例えば、音楽と会場がマッチしていなかったり、演出や進行が適切でなかったり。そうしたストレスのない、気配りの効いたコンサートにしたいです。

龍馬 音だけでなく視覚も大切だし、なによりそのライブが「体験として素晴らしかった」と感じてもらえることが大切です。まずはそういう環境をつくる。その前提ができたときに、ラルフがどんなモチベーションで、どんなコンサートをするのか。僕らも楽しみにしています。そこは、ある意味で僕らとラルフとのセッションだと思っています。

ラルフ 彼らアップカミングスタジオとその周りにある世界を見たとき、そのシーンの中ですでに僕の音楽を聴いて理解してくれている人たちがいた。それは僕にとって、とても重要なことでした。

僕自身も彼らの作品がとても好きですし、すでに別のプロジェクトでも一緒に仕事をしました。だから今回の決断は、とても自然で、前向きなものでした。

──このコンサート以外にも、すでに進行しているプロジェクトがあるのですか?

龍馬 ファッションブランドの映像作品でラルフに音楽を依頼しました。知り合いの映像監督が映像を撮り、孫がディレクションに入り、ラルフに音楽をつくってもらいました。

その作品の仕上がりも良かったし、実際に一度仕事をしたことで互いの信頼も深まりました。映像監督もラルフの音楽をとても気に入って、来日時にミュージックビデオを撮りたいという話にまで広がっています。

 単にラルフを日本へ呼ぶだけではなく、セッションのように一緒に作品や機会をつくっていく。そういう仕事の仕方は、今回に限らず僕らの活動の根っこにあります。今回、それが実現していることをうれしく思っています。

いわゆる “音楽業界” の中だけで完結させない、日本のさまざまなクリエイティブやほかの業界にとも繋がって、そこへきちんと還元されるようなイベントにしたいです。

ラルフ 僕は今回の来日公演まで、しばらくヨーロッパでもライブを行わない予定です。フレッシュな状態で新しい音楽を演奏できることを楽しみにしています。僕にとって、本当に特別な公演になると思います。



Ralph Heidel in Tokyo

日時:2026年10月6日(開場 18:30/開演 19:30)
会場:ルーテル市ヶ谷ホール

Tickets
– 全席指定席
– ZAIKO, イープラスにて販売受付中

主催:upcoming.studio
音響設計:Motoki Moky Tanizawa
制作協力:朝河電気
広報協力:春の雨 cafe & records
助成:アーツカウンシル東京[東京芸術文化創造発信助成(単年助成)]芸術創造活動

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