【ピーター・バラカン】僕がどうしても手放せない21世紀の愛聴盤/第11回 ジョン・スコーフィールド『Piety Street』

文/ピーター・バラカン 写真/西田周平

2018.07.09

1980年代にマイルズ・デイヴィスのバンドに参加したことで大きく注目されたギタリストのジョン・スコーフィールドはぼくと同い年の1951生まれで、やはり60年代のロックやソウルなどを聞いて育っているので、基本的にジャズ・ギタリストでありながら音色もフレイジングもジャズの語彙に束縛されることなく、ときにはジミ・ヘンドリックスやジェリー・ガルシアからの影響も感じられて自由自在です。

John Scofield『Piety Street』(EmArcy – 2009)

それにしてもこのアルバムはユニークな企画です。演奏している曲はすべてゴスペルの有名な曲で、一緒にやっているミュージシャンの多くがニュー・オーリンズの人たちなので、ビートはとてもファンキーです。キーボードとヴォーカルを担当するジョン・クリアリーはイギリス生まれですが、長年拠点にしているニュー・オーリンズのスタイルを見事にこなします。ここでは曲によってピアノとオルガンを使い分け、スモークしたようなハスキーな歌声でスコーフィールドのエモーショナルなギターを引き立てています。

ベースは元ミーターズのジョージ・ポーター、ドラムズは南アフリカ生まれで70年代にビーチ・ボイズのメンバーだったリキ・ファターが終始好サポートをします。因みにジョン・クリアリーもリキ・ファターもボニー・レイトのツアー・バンド経験者なのですが、ボニーがもしこのアルバムに参加したとすればぴったりはまったはずです。また3曲だけヴォーカルで参加しているジョン・ブテはニュー・オーリンズでは知らない人がいないけれど、ツアーをしないので他ではほとんど知られていないとても味のある歌い手です。

全体的にブルージーなグルーヴを維持し、決して派手な作りではありませんが、スコーフィールドの独特なギター・サウンドが随所に行き渡っています。そして抑制された中でも、ところどころ得意の突拍子もないサイケデリックなフレイズが飛び出ると、聞いていて急にのけ反ってしまうような快感があります。かといって、ジョン・クリアリーが歌うラインにピタッと添うハーモニーを弾く時も極めて気持ちがいいです。以前レイ・チャールズへのトリビュート・アルバムも作ったことがあるスコーフィールドは歌心がすごくよく分かるミュージシャンで、そのセンスがこのアルバムで余すところなく反映されています。

 

John Scofield『Piety Street』(EmArcy – 2009

  1. That’s Enough(Dorothy Love Coates)
  2. Motherless Child(Traditional)
  3. It’s A Big Army(John Scofield)
  4. His Eye Is On The Sparrow(Gabriel, Martin)
  5. Something’s Got A Hold On Me(Rev. James Cleveland)
  6. The Old Ship Of Zion(Thomas A. Dorsey)
  7. 99 And A Half(Dorothy Love Coates)
  8. Just A Little While To Stay Here(Eugene Bartlett)
  9. Never Turn Back(Thomas A. Dorsey)
  10. Walk With Me(Traditional)
  11. But I Like The Message(John Scofield)
  12. The Angel Of Death(Hank Williams)
  13. I’ll Fly Away(Albert E. Brumley, Sr.)

ピーター・バラカン/Peter Barakan
1951年8月20日ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科卒業後、74年に来日。シンコー・ミュージック国際部入社、著作権関係の仕事に従事する。80年、同退社後、執筆活動やラジオ番組への出演などを開始。また80年から86年までイエロー・マジック・オーケストラ、のちに個々のメンバーの海外コーディネーションを担当。 84年、TBS-TVのミュージック・ヴィデオ番組『ザ・ポッパーズMTV』の司会を担当。88年、TBS-TV『CBSドキュメント』(アメリカCBS制作番組60 Minutesを主な素材とする、社会問題を扱ったドキュメンタリー番組)の司会を担当。2010年、TBS系列のニュース専門チャンネル『ニュースバード』に移籍し、番組名も『CBS 60ミニッツ』に変更。2014年3月まで司会を務める。 現在も放送番組の制作、出演のほか、執筆や音楽フェスティバルの監修なども手がける。
http://peterbarakan.net/

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