【ピーター・バラカン】僕がどうしても手放せない21世紀の愛聴盤/第17回 ジョン・クリアリー & ザ・アブソリュート・モンスター・ジェントルマン『Mo’ Hippa』

文/ピーター・バラカン 写真/西田周平

2018.10.09

ニュー・オーリンズの音楽って、一度好きになるととことんはまっていくものです。ぼくの世代だとだいたいドクター・ジョンの1972年の名盤『ガンボ』が入り口になったのですが、そこからミーターズ、アラン・トゥーサント、プロフェサー・ロングヘアへとつながって行き、気がついたらあの独特のシンコペイションは自分のDNAの一部になっています。

イギリスで生まれ育ったジョン・クリアリーにとって、しばらくニュー・オーリンズに住んだ彼のおじが持ち帰ってきた多くのシングル盤に惚れ込んだことがきっかけで、18歳で学校を卒業するとすぐにニュー・オーリンズへ行って、結果的に住み着くことになりました。1980年のことです。

Jon Cleary & The Absolute Monster Gentlemen『Mo’ Hippa』(FHQ, 2008)

元々ギターを弾いていた彼はピアニストになり、ニュー・オーリンズの様々なミュージシャンのバックで活動を続け、後にボニー・レイトのツアー・バンドで長く起用され、タージ・マハールやそれこそドクター・ジョンとも共演した経験があります。次第に自分のアルバムも作るようになりましたが、2008年にツアー先のオーストラリアで録音されたこのライヴ・アルバムではソウルフルでウィットのきいた自作に混じってプロフェサー・ロングヘアやミーターズの曲をゴキゲンに演奏していますバックでは相撲取りより更に大きい体形からは想像できない、とても繊細なギターを弾くビッグDことダーウィン・パーキンズをはじめ、アブソルート・モンスター・ジェントルメンの洗練されたファンクは終始見事です。

ジョンとの出会いを作ってくれたのは、当時日本でインディ・レーベルを営んでいたアメリカ人の友だちでした。彼のアルバムを発売しただけでなく、何度か日本へ呼び、人気をニュー・オーリンズの音楽の好きな人の間で着実に浸透させて行ったのです。その友人はもう日本を離れましたが、2014年にLive Magicという音楽フェスのキュレイションをすることになった時、彼の協力でジョンを早速招聘しました。そして今年(2018年)、4年ぶりにLive Magicのヘッドライナーとしてジョンがまた来日します。

イギリス人の彼が敢えてアメリカの一つの地方の音楽を自分のものにし、その道を究めて行く姿に強い魅力を感じます。今のジョン・クリアリーをライヴでもぜひ聞いて欲しいし、この『モー・ヒパ』から彼の一連の優れたアルバムも聞いてください。

Jon Cleary & The Absolute Monster Gentlemen
『Mo’ Hippa』(FHQ, 2008)

  1. Go To The Mardi Gras(R. Byrd)
  2. People Say(J. Modeliste, A. Neville, L. Nocentelli, G. Porter)
  3. C’mon Second Line(Jon Cleary)
  4. Tipitina(R. Byrd)
  5. Cheatin On You(Jon Cleary)
  6. Port Street Blues(Jon Cleary)
  7. Help Me Somebody(Jon Cleary)
  8. Groove Me(K.Floyd)
  9. When U Get Back(Jon Cleary)
  10. Mo Hippa(Jon Cleary)

 

ピーター・バラカン/Peter Barakan
1951年8月20日ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科卒業後、74年に来日。シンコー・ミュージック国際部入社、著作権関係の仕事に従事する。80年、同退社後、執筆活動やラジオ番組への出演などを開始。また80年から86年までイエロー・マジック・オーケストラ、のちに個々のメンバーの海外コーディネーションを担当。 84年、TBS-TVのミュージック・ヴィデオ番組『ザ・ポッパーズMTV』の司会を担当。88年、TBS-TV『CBSドキュメント』(アメリカCBS制作番組60 Minutesを主な素材とする、社会問題を扱ったドキュメンタリー番組)の司会を担当。2010年、TBS系列のニュース専門チャンネル『ニュースバード』に移籍し、番組名も『CBS 60ミニッツ』に変更。2014年3月まで司会を務める。 現在も放送番組の制作、出演のほか、執筆や音楽フェスティバルの監修なども手がける。
http://peterbarakan.net/

ピーター・バラカンが監修する
音楽フェスティヴァル
LIVE MAGIC!
10月20日(土)〜21日(日)
恵比寿ガーデンプレイスにて開催
https://www.livemagic.jp/

※記事内のカタカナ表記について。仮名づかいは著者の解釈を尊重して掲載しているため、一般的な表記および、他ページ(同サイト内)の表記と異なる場合があります。

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