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超基本!ロンドン“新世代ジャズ”を知るためのアーティスト10

現在のロンドンの新世代“ジャズ系”ミュージシャンの中でも、特に注目すべきアーティスト/バンドを厳選して紹介。

シャバカ・ハッチングス(Shabaka Hutchings)

現ロンドン・ジャズ・シーンを長きにわたって支え続けるカリスマ的サックス奏者。少年期を過ごしたカリブ海の国バルバドスで現地の音楽ソカやカリプソに触れ、ロンドンのギルドホール音楽院と「トゥモローズ・ウォーリアーズ」で音楽教育を経験。以後、ロンドンを拠点に活動中。「シャバカ・アンド・ジ・アンセスターズ」や「コメット・イズ・カミング」など複数のバンドを主導し、サン・ラ・アーケストラへの参加経験も持つ。中でも「サンズ・オブ・ケメット」は、黒人のための英音楽賞「MOBOアワード」で「Best Jazz Act」(2013年)の受賞をはじめ、「マーキュリー・プライズ」にもノミネート。さらに米国の名門ジャズ・レーベル「インパルス・レコード」と契約したことでも話題となった。

 


ヌバイア・ガルシア(Nubya Garcia)

Photo/Rodrigo_Gianesi

「女性版カマシ・ワシントン」との呼び声高い、世界的な活躍を展開する若手女性サックス/フルート奏者。王立音楽アカデミーやトリニティ音楽院などでの音楽教育をはじめ、「トゥモローズ・ウォーリアーズ」のプログラムも経験。2017年には自身のソロ・プロジェクトを始動し、同年デビュー作『Nubya’s 5ive』を、今年3月にはEP『When We Are』を発表。「マイシャ」や「ネリヤ」などの様々なバンドに所属する傍ら、シーンの重要プレーヤーたちとも多数共演。英ラジオ局が主催する「Jazz FM Award 2018」では、「Breakthrough Act of the Year」を受賞。

 


エズラ・コレクティヴ(Ezra Collective)

フェミ・コレオソ(ds)、TJ・コレオソ(b)、ジョー・アーモン・ジョーンズ(key)、ディラン・ジョーンズ(tp)、ジェームス・モリソン(sax)の5人からなる人気ジャズ・コレクティヴ(集団)。メンバーは、ジャズ教育プログラム「トゥモローズ・ウォーリアーズ」の同門。

アフロビート、ヒップホップ、レゲエなど、さまざまな音楽を吸収したスピリチュアル/ストリートなサウンドで人気を博し、近年はメジャー・アーティストともコラボレーション。「トゥモローズ・ウォーリアーズ」在籍時には英議会ジャズ賞「Best Jazz Ensemble」を2期連続で受賞(2012~13年度)。英ラジオ局主催の「Jazz FM Award 2018」では、一般投票から「Jazz Act of the Year」と「Live Experience of the Year」の2つを、さらにジャイルス・ピーターソンの「Worldwide Awards 2018」では「Jazz Album of the Year」受賞。

 


ジョー・アーモン・ジョーンズ(Joe Armon-Jones)

シーンの中枢で活躍する白人系最重要キーボーディストのひとり。ジャズ教育プログラム「トゥモローズ・ウォーリアーズ」と英名門音楽校「トリニティ音楽院」のふたつを経験し、上記のエズラ・コレクティヴの創立メンバーとしても活躍。2016年発表のマックスウェル・オーウィンとの共同作『idiom』は、“現ロンドン・サウンドを体現した作品”として話題を呼び、2018年には、ヌバイア・ガルシアやモーゼス・ボイドら、シーンの重要プレーヤーたちを集結させて制作した最新作『Starting Today』を発表。

 


モーゼス・ボイド(Moses Boyd)

「次世代アート・ブレイキー」とも評されるシーン屈指の若手天才ドラマー。英名門音楽校「トリニティ音楽院」在校中にジャズ教育プログラム「トゥモローズ・ウォーリアーズ」にも参加。2014年度の英議会ジャズ賞「Young Musician of the Year」を受賞し、2015年には黒人のための英音楽賞「MOBOアワード」のジャズ部門を受賞。さらに2016年には、ジャイルス・ピーターソンの「Worldwide Award」で「John Peel Play More Jazz Award」も受賞している。サックス奏者ビンカー・ゴールディングとのデュオ「ビンカー・アンド・モーゼス」としても活動するほか、自身のレーベル「Exodus Records」も主宰している。


カマール・ウィリアムス(a.k.a. ヘンリー・ウー)(Kamaal Williams a.k.a. Henry Wu)

ダンス・ミュージック側からジャズへとアプローチした異色のキーボーディスト。別名義「ヘンリー・ウー」ではハウス/ブロークン・ビーツなどをプロデュースするビートメイカーとして、本名カマール・ウィリアムスではキーボーディストとして活躍。2016年には盟友ユセフ・デイズ(ds)とのジャズ・ユニット「ユセフ・カマール」でアルバム『Black Focus』をリリース。同作は「Jazz FM Award 2017」で「Breakthrough Act of the Year」を獲得。ユセフ・カマール解散後、2018年には自身のレーベル「Black Focus Records」よりカマール・ウィリアムス名義でソロ・アルバム『The Return』をリリース。

 


女性の活躍めざましいロンドン・シーン
近年のロンドンではジェンダー・バランス(性別間のバランス)を取る動きが活発なようで、性別に関係なく女性も男性も同じ土俵で活躍している。しかも活躍しているのはボーカリストだけでなく楽器プレーヤーもだ。プレイさえ良ければ性別に関係なく評価を受けられる、なんとも先鋭的なロンドンらしい在り方と言える。ここでは、ロンドン・シーンで頭角を現す“女性が活躍するバンド”をいくつか紹介したい。

ネリヤ(NERIJA)

ヌバイア・ガルシア(t.sax)、シーラ・モーリスグレイ(tp)、キャシー・キノシ(a.sax)、シャーリー・テテー(g)ら、女性プレーヤー6人+男性1人で構成された7人編成のバンド。2017年度の英議会ジャズ賞「Jazz Newcomer」を受賞。先日、英ロック・バンド、アークティック・モンキーズやフランツ・フェルディナンドらを輩出した「ドミノレコーズ」と契約したことでも話題となった。

 


ココロコ(KOKOROKO)

Photograph/Bunny_from_Jazz_refreshed

シーラ・モーリスグレイ(tp)、キャシー・キノシ(a.sax)、リッチー・シーヴライト(tb)の女性3人をフロントに据えたロンドンを拠点に活動するバンド。フェラ・クティやトニー・アレンなどのアフロ・ビートや西アフリカ音楽などからインスパイアされたサウンドで人気を博すセクステット。

 


マイシャ(MAISHA)

リーダーのジェイク・ロング(ds)を中心に、ヌバイア・ガルシア(sax/fl)とシャーリー・テテー(g)の女性2人を雄するバンド。ジャズからアフロ・ビート、アフリカン・リズムなど、自分たちのあらゆる音楽的手法を駆使してさまざまなサウンドを融合。今年11月にはデビュー・アルバム『There Is A Place』をブラウンズウッドからリリースしている。

 


シード・アンサンブル(Seed Ensemble)

キャシー・キノシ(a.sax)を中心に2016年に結成された10人編成のバンド。メンバーには、シーラ・モーリスグレイ(tp)、チェルシー・カーマイケル(t.sax)、シャーリー・テテー(g)などの女性プレーヤーをはじめ、人気チューバ奏者テオン・クロスなども参加。ロンドン系ジャズに西アフリカやカリビアンなど、さまざまなジャンルをブレンドしたサウンドで、各メディアからも「ロンドン・ジャズのあるべき姿」などと賞賛されている。来年2月にはデビュー・アルバム『DRIFTGLASS AT KING’S PLACE』のリリースを予定。

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