【ピーター・バラカン】僕がどうしても手放せない21世紀の愛聴盤/第21回 Hadouk Trio『Air Hadouk』

文/ピーター・バラカン 写真/西田周平

2018.12.10

初めてラジオに出た1980年代初頭からずっと聞いているという方に時々出会うことがあります。嬉しさと同時に驚きを感じるものですが、そういう方でもおそらく知らないぼくの番組があると思います。

スカイパーフェクTV! の音声チャンネル、スター・デジオで、2002年11月から2012年1月まで月に一度のジャズの番組「pb’s blues」を担当しました。番組でいつもメイル・アドレスを伝えていたものの、9年あまりの間にメイルをいただいたのは2、3回、それもたぶん一人の方からでした。果たしてその方以外に聞いている人がいたかどうか、いまだに未確認です。

その番組のディレクターはジャズをはじめ、色々なジャンルの音楽に驚くほど詳しい方で、収録の度に様々な音楽の情報交換をする中でぼくが知らないミュージシャンのことを教えてもらうことがよくありました。その中で今でも深く印象に残っているのはHadouk Trioです。発音は「ハドゥーク」か「アドゥーク」か、フランスのグループなので後者かもしれません。

Hadouk Trio『Air Hadouk』(Naive, 2010)

かつてはヒッピー(ハッパ?)の匂いがぷんぷんするジャズ寄りのプログレ・バンド、ゴングのサックス奏者として知られるディディエ・マレルブが中心人物で、このトリオではドィドゥクと呼ばれるアルメニアの二重リードの楽器をメインに演奏します。その音色はオーボエとフルートの中間にある、ちょっと乾いた美しいサウンドです。

同じくフランス人のロイ・エールリッヒはモロッコのグナワ音楽で使われるゲンブリ(表記は様々)という素朴な弦楽器を、いうならばアクースティックのベース・ギターのように使い、他にもキーボードなども演奏します。アメリカ人パカショニストのスティーヴ・シハンはアフリカや中東の色々な打楽器とハング・ドラムを駆使します。彼らの音楽はジャズともワールド・ミュージックとも言い切れないもので、例えばウェザー・リポートをもっとロー・テクでしかもロー・テンションにすればこのようなメロディが生まれたかもしれません。

クールで、ちょっとファンキーで、エクソティック(ぼくはこう発音します)な響きを持つこういう音楽は、人々に聞かれさえすれば絶対に受けると思いますが、どういうわけかあまり注目されている印象はありません。このアルバムの数年後には別のドラマーとギタリストを加えたカルテットでアルバムを出しましたが、ぼくはこれをぜひお薦めします。

 

 


Hadouk Trio『Air Hadouk』(Naive, 2010)

  1. Lomsha(D.Malherbe, L. Ehrlich)
  2. Aerozen(D.Malherbe, L. Ehrlich)
  3. Babbalanja(D.Malherbe, L. Ehrlich, S. Shehan)
  4. Yillah(S. Shehan)
  5. Dididi(D.Malherbe, L. Ehrlich)
  6. Friday The 13th(Thelonious Monk)
  7. Hang Around Me(S. Shehan)
  8. Hang2Hang(S. Shehan)
  9. Nambaraï Gate Intro(D.Malherbe)
  10. Nambaraï(D.Malherbe)
  11. Ayel(L. Ehrlich)
  12. Tricotin(D.Malherbe, L. Ehrlich)
  13. Soft Landing(D.Malherbe, L. Ehrlich, S. Shehan

ピーター・バラカン/Peter Barakan
1951年8月20日ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科卒業後、74年に来日。シンコー・ミュージック国際部入社、著作権関係の仕事に従事する。80年、同退社後、執筆活動やラジオ番組への出演などを開始。また80年から86年までイエロー・マジック・オーケストラ、のちに個々のメンバーの海外コーディネーションを担当。 84年、TBS-TVのミュージック・ヴィデオ番組『ザ・ポッパーズMTV』の司会を担当。88年、TBS-TV『CBSドキュメント』(アメリカCBS制作番組60 Minutesを主な素材とする、社会問題を扱ったドキュメンタリー番組)の司会を担当。2010年、TBS系列のニュース専門チャンネル『ニュースバード』に移籍し、番組名も『CBS 60ミニッツ』に変更。2014年3月まで司会を務める。 現在も放送番組の制作、出演のほか、執筆や音楽フェスティバルの監修なども手がける。
http://peterbarakan.net/

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