【ピーター・バラカン】僕がどうしても手放せない21世紀の愛聴盤/第26回 コンチャ・ブイカ『Mi Niña Lola』

文/ピーター・バラカン 写真/西田周平

2019.02.25

このアルバムを最初に聞いたきっかけは何だったのかな。とにかくよく憶えているのは、そのちょっと後にラテン音楽の大きなコンサートが東京で開催され、そこで見たコンチャ・ブイカのライヴのカッコよさに圧倒されたことです。

最近はただのブイカとして活動している彼女はスペインのマヨルカ島で、赤道ギネアから政治亡命した両親のもとで1972年に生まれました。90年代から、最初はミュージシャンとして活動を始めましたが、女性のドラマーとして認めてもらうのがなかなか難しく、仕方なく歌い出したと言います。

「ミ・ニーニャ・ロラ」は彼女の3作目のアルバムです。基本的にフラメンコがベースになっている音楽ですが、そこにジャズやソウルの要素が微妙に混ざっていて、とても斬新なサウンドになっています。

Concha Buika『Mi Niña Lola』(DRO Atlantic, 2006)

アルバムの冒頭を飾るタイトル曲で、煙で燻したようなハスキーな声でフラメンコのメロディを歌い上げますが、バックはピアノで、途中でストリングズも登場します。伝統のフラメンコを好む人にはどう評価されるか分かりませんが、このような試みを得意とするプロデューサーのハビエール・リモンの力量も手伝って、ブイカの独自の味わいが色濃く出ています。

曲によってはギターやベースも登場するし、ラテン・ジャズ畑からフラメンコに興味を持ち始めたジェリー・ゴンサレスのトランペットがフィチャーされる曲もあります。フラメンコでつきものの手拍子の他に、キューバのオラシオ “エル・ネグロ” エルナンデスがドラムズで参加しています。

サウンド的に十分ヴァライエティがあり、曲もフラメンコだけでなく、「コプラ」と呼ばれるアンダルシア地方のフォルクローレのような歌もあり、ブイカの自作もあります。彼女は詩人としての顔もあり、残念ながらぼくはそこまでスペイン語は分かりませんが、とにかく歌にものすごい説得力があります。

これ以降のアルバムではもっとR&B寄りのサウンドになったり、作品ごとに雰囲気が変わりがちなところがありますが、ここ数年マイアミ在住です。最近再び来日公演があり、相変わらず非常にカッコよかったですが、近距離で聞けるクラブで見るとかわいらしい面もあってより身近に感じました。

最初に聞いたせいか、今も彼女の「アフリカ系フラメンコ」が見事に表現されているこのアルバムがいちばんの愛聴盤です。

Concha Buika『Mi Niña Lola』(DRO Atlantic, 2006)

  1. Mi Niña Lola(Luis Rivas Gómez/Andrés Molina Moles/José Torres Garzón)
  2. Ojos Verdes(Calverde-León-Quiroga)
  3. Te Camelo(Genaro Monreal Lacosta/Fco Muñoz Acosta)
  4. Ay De Mi Primavera(Concha Buika)
  5. A Mi Manera(Concha Buika)
  6. Nostalgias(Juan Carlos Cobán/Enrique Cadicamo)
  7. Triunfo(Javier Limon)
  8. Bulería Alegre(Javier Limon/Concha Buika)
  9. Love(Concha Buika)
  10. Loca(Concha Buika)
  11. Jodida Pero Contenta(Concha Buika)

 

ピーター・バラカン/Peter Barakan
1951年8月20日ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科卒業後、74年に来日。シンコー・ミュージック国際部入社、著作権関係の仕事に従事する。80年、同退社後、執筆活動やラジオ番組への出演などを開始。また80年から86年までイエロー・マジック・オーケストラ、のちに個々のメンバーの海外コーディネーションを担当。 84年、TBS-TVのミュージック・ヴィデオ番組『ザ・ポッパーズMTV』の司会を担当。88年、TBS-TV『CBSドキュメント』(アメリカCBS制作番組60 Minutesを主な素材とする、社会問題を扱ったドキュメンタリー番組)の司会を担当。2010年、TBS系列のニュース専門チャンネル『ニュースバード』に移籍し、番組名も『CBS 60ミニッツ』に変更。2014年3月まで司会を務める。 現在も放送番組の制作、出演のほか、執筆や音楽フェスティバルの監修なども手がける。
http://peterbarakan.net/

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