2019.03.11

【ピーター・バラカン】僕がどうしても手放せない21世紀の愛聴盤/第27回 リアノン・ギデンズ『Tomorrow Is My Turn』

文/ピーター・バラカン 写真/西田周平

カロライナ・チョコレート・ドロップスというアフリカン・アメリカン3人によるフォーク・グループで活動していたリアノン・ギデンズは、1960年代初頭のフォーク・リヴァイヴァルを舞台にした映画『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』の音楽をコンサートで特集するイヴェントに参加。その際、コンサートの音楽監督を務めたTボーン・バーネットからソロ・アルバムを作らないかと誘われました。その結果がこれです。

Rhiannon Giddens『Tomorrow Is My Turn』(Nonesuch, 2015)

ここで彼女が取り上げている曲はフォークもあり、ブルーズも、ゴスペルも、カントリーも、英訳したシャンソン(シャルル・アズナヴールのタイトル曲)もありますが、どの曲にも共通しているのは女性歌手で知られることです。しかも強い女性が多いです。

ゴスペル界に革命を起こしたシスター・ロセタ・サープが40年代に作った「アップ・アバヴ・マイ・ヘッド」では、頭の上の空気中に音楽が響く、だからこそ神の存在を確信する、という揺るぎない信仰心を伝えます。ニーナ・シモーンのヴァージョンをモチーフにしている「トゥモロー・イズ・マイ・ターン」では、多くの犠牲を払い続けたが、明日は私が報われる、という信念がひしひしと感じられます。

リアノン・ギデンズは珍しくルーツ・ミュージックに必要な誠実さとエンタテイナーに不可欠なカリスマ性を両方兼ね備えている歌手で、父親はウェールズ出身の白人ですが、黒人女性としてのアイデンティティが強く、彼女が得意とするバンジョーという楽器がカントリー・ミュージックのイメージにもかかわらず、歴史的にアフリカン・アメリカンの文化でそのサウンドが育まれたことを示す活動をしています。

安定した発声からクラシックの勉強もしていたことが分かるリアノンのバックで、Tボーン・バーネットが見事にまとめたアクースティックなサウンドが流れます。パツィ・クライン作のカントリーのバラード「シーズ・ゴット・ユー」ではソウル風のホーン・セクションが登場するといったちょっと意外なタッチもさりげなくカッコいいです。あるいは「ブラック・イズ・ザ・カラー」という昔のフォーク・ソングは躍動感のある編曲でウッド・ベースが中心になっていて、途中でメロディカが疾走するソロが彩りを添えます。全体的に非常に洗練された印象のルーツ・ミュージックです。

Rhiannon Giddens『Tomorrow Is My Turn』(Nonesuch, 2015)

  1. Last Kind Word (Geeshie Wiley)
  2. Don’t Let It Trouble Your Mind (Dolly Parton)
  3. Waterboy (Odetta/Jacques Wolfe)
  4. She’s Got You (Hank Cochran)
  5. Up Above My Head (Sister Rosetta Tharpe)
  6. Tomorrow Is My Turn (Charles Aznavour, Marcel Stellman, Yves Stephane)
  7. Black Is The Color (trad., arr. Rhiannon Giddens)
  8. Round About The Mountain (trad., arr. Roland Hayes)
  9. Shake Sugaree (Elizabeth Cotten)
  10. O Love Is Teasin’ (trad., arr. Rhiannon Giddens)
  11. Angel City (Rhiannon Giddens)

 

ピーター・バラカン/Peter Barakan
1951年8月20日ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科卒業後、74年に来日。シンコー・ミュージック国際部入社、著作権関係の仕事に従事する。80年、同退社後、執筆活動やラジオ番組への出演などを開始。また80年から86年までイエロー・マジック・オーケストラ、のちに個々のメンバーの海外コーディネーションを担当。 84年、TBS-TVのミュージック・ヴィデオ番組『ザ・ポッパーズMTV』の司会を担当。88年、TBS-TV『CBSドキュメント』(アメリカCBS制作番組60 Minutesを主な素材とする、社会問題を扱ったドキュメンタリー番組)の司会を担当。2010年、TBS系列のニュース専門チャンネル『ニュースバード』に移籍し、番組名も『CBS 60ミニッツ』に変更。2014年3月まで司会を務める。 現在も放送番組の制作、出演のほか、執筆や音楽フェスティバルの監修なども手がける。
http://peterbarakan.net/

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