2019.05.13

【ピーター・バラカン】僕がどうしても手放せない21世紀の愛聴盤/第31回 スティーヴ・ウィンウッド『Greatest Hits Live』

文/ピーター・バラカン 写真/西田周平

スティーヴ・ウィンウッドがまだ十代のうちにスペンサー・デイヴィス・グループのリード・ヴォーカル/リード・ギター/キーボード奏者として驚異的なデビューを果たした1965年からぼくはずっとファンでした。 まるでレイ・チャールズのような凄まじくソウルフルなあの歌はイギリス人の体から出てくるものとは誰も想像できなかったはずです。また自分の年に比較的近いので特に憧れる存在でした。

その後、67年から新たにトラフィックというバンドではロック、フォーク、ブルーズ、ジャズ、インドやラテンなどの要素を誰よりも早く、そして有機的に融合させたのです。エリック・クラプトンと一緒にほんの短い間活動したブラインド・フェイスの時期を挟んで、一度解散状態に陥ったトラフィックが再結成したものの、74年以降ウィンウッドはずっとソロ活動を続けています。最後のヒット曲は80年代半ばなので、この2枚組のライヴ盤には新しい曲はほとんどありませんが、タイトルに嘘はないし、演奏も抜群です。

Steve Winwood『Greatest Hits Live』(Wincraft, 2017)

本人は基本的にオルガンを弾いていて、ベースもそれで演奏します。ギターやマンドリンを弾くときは管楽器も担当するポール・ブースがキーボードに代わる形です。ギターは最近のバンドでずっと起用されているポルトガル人のジョゼ・ネト。ドラムズはその昔ジェフ・ベックの「ブロー・バイ・ブロー」でもお馴染みのリチャード・ベイリーです。

ちょうどこのアルバムが出る直前ぐらいのコンサートを、たまたま訪れたロンドンで見ることができました。そこそこ広いハマースミス・オデオンを埋め尽くした観客を見回すと圧倒的に高齢者が多い印象で、一瞬ショックでしたが、その皆さんが自分と同じぐらいの世代であることに気づいたらまた更にショック! ぼくらにとってウィンウッドは大スターですが、今の若い音楽ファンは知らない、あるいはバーなどのBGMで流れた彼の曲を聞いたことがあっても誰の作品か当然分からないわけです。

一緒に連れて行った20代の娘は、開演前は不安だったかも知れませんが、終わった後感想を聞いたらとても感銘を受けていました。エリック・クラプトンやヴァン・モリスンより少しだけ年が下のウィンウッドはしばらく新作アルバムを作っていませんが、このような素晴らしいライヴ活動を今も続けているので、 ラジオを始め、年寄り以外の耳に入るようにメディアで取り上げて欲しいミュージシャンです。

Steve Winwood『Greatest Hits Live』(Wincraft, 2017)  

  1. I’m A Man(Jimmy Miller/Steve Winwood)
  2. Fly(Peter Godwin/José Neto/Steve Winwood)
  3. Can’t Find My Way Home(Steve Winwood)
  4. Had To Cry Today(Steve Winwood)
  5. Low Spark Of High Heeled Boys(Jim Capaldi/Steve Winwood)
  6. Empty Pages(Steve Winwood)
  7. Back In The High Life Again(Will Jennings/Steve Winwood)
  8. Higher Love(Will Jennings/Steve Winwood)
  9. Dear Mr Fantasy(Jim Capaldi/Steve Winwood/Chris Wood)
  10. Gimme Some Lovin’(Spencer Davis/Muff Winwood/Steve Winwood)
  11. Rainmaker(Jim Capaldi/Steve Winwood)
  12. Pearly Queen(Jim Capaldi/Steve Winwood)
  13. Glad(Steve Winwood)
  14. Why Can’t We Live Together(Timmy Thomas)
  15. 40,000 Headme(Jim Capaldi/Steve Winwood)
  16. Walking In The Wind(Jim Capaldi/Steve Winwood)
  17. Medicated Goo(Jimmy Miller/Steve Winwood)
  18. John Barleycorn(trad. arr. Steve Winwood)
  19. While You See A Chance(Will Jennings/Steve Winwood)
  20. Arc Of A Diver(Viv Stanshall/Steve Winwood)
  21. Freedom Overspill(George Fleming/James Hooker/Steve Winwood)
  22. Roll With It(Lamont Dozier/Brian Holland/Eddie Holland/Will Jennings/Steve Winwood)
ピーター・バラカン/Peter Barakan
1951年8月20日ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科卒業後、74年に来日。シンコー・ミュージック国際部入社、著作権関係の仕事に従事する。80年、同退社後、執筆活動やラジオ番組への出演などを開始。また80年から86年までイエロー・マジック・オーケストラ、のちに個々のメンバーの海外コーディネーションを担当。 84年、TBS-TVのミュージック・ヴィデオ番組『ザ・ポッパーズMTV』の司会を担当。88年、TBS-TV『CBSドキュメント』(アメリカCBS制作番組60 Minutesを主な素材とする、社会問題を扱ったドキュメンタリー番組)の司会を担当。2010年、TBS系列のニュース専門チャンネル『ニュースバード』に移籍し、番組名も『CBS 60ミニッツ』に変更。2014年3月まで司会を務める。 現在も放送番組の制作、出演のほか、執筆や音楽フェスティバルの監修なども手がける。
http://peterbarakan.net/

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