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【review】エズラ・コレクティヴ:南ロンドンの真打ちが放つ“遅すぎたデビュー作”

「南ロンドンを知りたければ、まずはこれを聴いてみて!」とオススメしたくなる一枚。数々の才能を輩出するUK“新世代ジャズ”シーンにおいて、ひときわ高い人気を誇るバンド=エズラ・コレクティヴ。そのデビュー・アルバムが本作『ユー・キャント・スティール・マイ・ジョイ』だ。

しかし、これがデビュー・アルバムというのは少々意外だった。というのも彼らは今年で結成7年目。デビュー作をリリースするには遅すぎるくらいだし、2017年に日本限定で発表された合作EPChapter 7 + Juan Pablo: The Philosopher』(注1)は、オリジナル・フルアルバムと見紛うほどの快作だったからだ。

注1:自主リリースのEP『Chapter 7』(2016)と『Juan Pablo: The Philosopher』(2017)の2作をカップリングした日本企画盤

スタイルを確立するまでに時間がかかったのか、はたまたキャリアのピークに達するまで温存していたのか、いずれにせよ、今回のアルバムには良い意味でデビュー作らしからぬ貫禄が漂っている。

エズラ・コレクティヴのメンバー。向かって左から、ディラン・ジョーンズ(tp)、TJ・コレオソ(b)、ジェームス・モリソン(sax)、ジョー・アーモン・ジョーンズ(key)フェミ・コレオソ(ds)

メンバーは全員、英国のジャズ教育プログラム「トゥモローズ・ウォーリアーズ」の出身。そこで出会った彼らは在学中にエズラ・コレクティヴを結成した。当初は、ジョン・コルトレーンやフェラ・クティ、ボブ・マーリーといった先人たちを模倣したゴチャ混ぜバンドだったようだが、この雑食性が「今日の俺たちを作った」とフェミ・コレオソ(ds)は語っている。

結成から間もなく、2期連続で「英議会ジャズ賞:Best Jazz Ensemble」に輝いた彼らは、その後も数々の英国音楽賞を受賞。その快進撃は海外にも波及している。

昨年のスイス「モントルー・ジャズ・フェスティバル」では、クインシー・ジョーンズの85歳のバースデー・イベントに、ロバート・グラスパーら現ジャズ・シーンの顔役たちとともに出演。フェミ・コレオソいわく、出演の経緯はクインシーから直々にラブコールを受けてのことだったという。

こうした濃密な経験を経て、ついに完成した今回のアルバムは、わずか2日という驚異的なスピードで録音。ジャズ/アフロビート/R&B/ヒップホップなど、あらゆるジャンルを取り込んだお馴染みのスタイルも健在だ。

客演陣も、彼らと同じ南ロンドンで活躍する面々。女性3TOPバンドのココロコ(KOKOROKO)をはじめ、2017年に「イギリスで最もブレイクしたラッパー」として名高いロイル・カーナーや、グラミー賞にもノミネートされた21歳の歌姫ジョルジャ・スミスも参加している。

ちなみに、1曲目の「Space is the place」とラストの「Shakara」は、それぞれサン・ラとフェラ・クティのカバー。これは「作品の最初と最後は自分たちのヒーローのカバーで」という彼らの思いが込められているらしい。

前述のEP『Chapter 7 + Juan Pablo: The Philosopher』が、彼らの個性をストレートに表現した作品とするならば、本作は多様性に富んだ作品と言える。これまで培ったあらゆる表現を「試さずにはいられない!」という印象だ。まさに「You Can’t Steal My Joy」(誰も俺の喜びを奪えない)。そんな想いが伝わってくる。

『ユー・キャント・スティール・マイ・ジョイ』詳細
http://www.inpartmaint.com/site/26590/

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