2019.05.27

【ピーター・バラカン】僕がどうしても手放せない21世紀の愛聴盤〈第32回〉スティーヴ・クロッパー『Dedicated: A Salute to the 5 Royales』

文/ピーター・バラカン 写真/西田周平

ピーター・バラカンの連載コラム。西暦2000年以降にリリースされたCD作品のなかから、どうしても手放せない愛聴盤を紹介します。

これはやや意外な愛聴盤となりました。スティーヴ・クロッパーは好きなギタリストですが、彼のソロ・アルバムを熱烈に聞いたことはなかったし、ファイヴ・ロヤールズというグループにも詳しいとは言えません。しかし、軽く聞いてみたら一発ではまってしまいました。

Steve Cropper『Dedicated: A Salute to the 5 Royales』(429, 2011)

まず曲に魅力があります。R&Bのヴォーカル・グループだったファイヴ・ロヤールズが活動したのは1950年代ですが、ジェイムズ・ブラウンが取り上げた「ベイビー・ドント・ドゥー・イット」や「シンク」、ママズ&パパズのヴァージョンが有名な「デディケイテッド・トゥ・ザ・ワン・アイ・ラヴ」は60年代のレコードで、当時それがオリジナルだと思い込んでいました。これらの曲を作り、またギタリストとしてファンが多かったローマン・ポーリングはスティーヴ・クロッパーにとって最も好きなギタリストだったそうです。

曲は50年代のR&Bらしいシンプルなものですが、フックが多く、ゴキゲンなものが多いです。このアルバムのリズム・セクションを務めるベースのデイヴィッド・フッドとキーボードのスプーナー・オールダムは、かつてのマスル・ショールズでファンキーなソウル・ミュージックの時代を築き上げるのに大きく貢献した2人です。ドラマーのスティーヴ・ジョーダンと、ここではパーカショニストとして参加するスティーヴ・フェローニはもう少し若いですが、2人とも強者です。

またローマン・ポーリングの曲をここで聞かせてくれるゲストのヴォーカリストは申し分のない顔ぶれです。のっけからスティーヴ・ウィンウッドが登場し、B.B.キングも参加しています。スプーナー・オールダムの相棒ダン・ペンが2曲で渋いカントリー・ソウルを聞かせ、女性陣ではベティ・ラヴェット、シャロン・ジョーンズ、ルシンダ・ウィリアムズというちょっと硬派な実力者が2曲ずつ姿を見せます。

意外な参加者もいます。クイーンのブライン・メイはこのアルバムの企画者ジョン・ティヴンと仲がいいことがきっかけで参加しましたが、彼の存在が浮いていないのはティヴン氏のプロデューサーとしての手腕によるところでしょう。個人的に大好きな曲は、レコード・プロデューサーとしてもとても才能のある歌手/ギタリストのバディ・ミラーが担当する「ザ・スラマー・ザ・スラム」です。スティーヴ・クロッパーは全面的にギターを弾いていて、簡潔にまとまったソロもありますが、他の出演者と同様に、昔のR&Bに対する彼の愛情が終始感じられるアルバムです。

Steve Cropper『Dedicated: A Salute to the 5 Royales』(429, 2011)

  1. Thirty Second Lover(Gloria Paul/Lowman Pauling)feat. Steve Winwood
  2. Don’t Be Ashamed(Lowman Pauling) feat. Bettye LaVette
  3. Baby Don’t Do It(Lowman Pauling)feat. Guitar – B.B. King, Shemekia Copeland
  4. Dedicated To The One I Love(Ralph Bass/Lowman Pauling)feat. Dan Penn, Lucinda Williams
  5. My Sugar Sugar(Lowman Pauling) feat. John Popper
  6. Right Around The Corner(Rose Marie McCoy/Charlie Singleton)featuring Delbert McClinton
  7. Help Me Somebody(Lowman Pauling)(Instrumental)
  8. I Do(Lowman Pauling) feat. Brian May
  9. Messin’ Up(Lowman Pauling) feat. Sharon Jones
  10. Say It(Lowman Pauling) feat. Bettye LaVette
  11. The Slummer The Slum(Obediah Carter/Lowman Pauling)feat. Buddy Miller
  12. Someone Made You For Me(Henry Glover) feat. Dan Penn
  13. Think(Lowman Pauling)(Instrumental)
  14. Come On & Save Me(Lowman Pauling)feat. Dylan Leblanc, Sharon Jones
  15. When I Get Like This(Otto Jeffries/Carl LeBow)feat. Lucinda Williams
ピーター・バラカン/Peter Barakan
1951年8月20日ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科卒業後、74年に来日。シンコー・ミュージック国際部入社、著作権関係の仕事に従事する。80年、同退社後、執筆活動やラジオ番組への出演などを開始。また80年から86年までイエロー・マジック・オーケストラ、のちに個々のメンバーの海外コーディネーションを担当。 84年、TBS-TVのミュージック・ヴィデオ番組『ザ・ポッパーズMTV』の司会を担当。88年、TBS-TV『CBSドキュメント』(アメリカCBS制作番組60 Minutesを主な素材とする、社会問題を扱ったドキュメンタリー番組)の司会を担当。2010年、TBS系列のニュース専門チャンネル『ニュースバード』に移籍し、番組名も『CBS 60ミニッツ』に変更。2014年3月まで司会を務める。 現在も放送番組の制作、出演のほか、執筆や音楽フェスティバルの監修なども手がける。
http://peterbarakan.net/

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