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【ACO】「静かな叫びを感じてもらいたい」 時代に左右されないACOの歌

ACOは常に新しい音楽に挑戦してきたミュージシャンだ。いや、彼女の中にある豊かな音楽性をその時の最良の形で表現し続けてきた。そう言った方が的確だろう。1996年から1998年に立て続けに発表した初期3作品(『Kittenish Love』、『NUDE』、『Lady Soul』)は日本のR&B/ソウルの名盤である。また、砂原良徳やエイドリアン・シャーウッドをプロデューサーに迎えて独自のエレクトロニック・ソウルを作り出す一方で、シリータやマッシヴ・アタックやジェフ・バックリーの美しいカバーを歌ってきた人でもある。それらの音楽はいまも輝きを放っている。そして、彼女はさらに先に進み続けている。

昨年12月、ACOは約2年ぶりに通算9作目となるオリジナル・アルバム『VALENTINE』を発表した。中尾憲太郎(ba)、岩谷啓士郎(gt)、柏倉隆史(dr)、塚本亮(pf,key)という『LUCK』(2012年)で確立したバンド体制によるシンプルかつパワフルなサウンドが彼女を支える。一曲一曲にじっくり向き合い制作したのだろう。ソリッドな演奏が、大人の女性の憂いと少女の無垢さをあわせもつ彼女の歌を静かに引き立てている。新進気鋭のラッパー/ビートメイカー・jjj、くるりの岸田繁、バイオリン奏者・山本啓(Nabowa)といった個性的なゲスト陣もACOにそっと寄り添うようにいる。全10曲すべてに異なる色と物語がある。時代に左右されることのないACOの芯の強さが作り出した素晴らしい歌のアルバムだ。

ACOは2015年に音楽活動20周年を迎えた。1月11日(月)にはBillboard Live TOKYO(東京都港区)、1月16日(土)にはSOLE CAFE(京都府京都市)でのライブを控えている。ここに掲載するのは昨年12月に行ったメール・インタビューである。確固たる意思が宿るシンプルな回答は、『VALENTINE』のACOの歌そのもののようだ。

——『TRAD』、『LIVE LUCK』の同時リリースから約2年ぶりの新作になります。この2年間はどのように過ごされていましたか?

「こつこつと曲を溜めるのは日常生活とのバランスを取るのにとても大変な作業だったと思います。どうしても作業を始めると夜起きてなくてはならなくなるので」

——『LUCK』以降のACOさんの音楽は、オルタナティヴ・ロックやグランジ、あるいはポスト・ロックへと変化しました。音楽性の変化を促したものは何でしょうか?

「まったくジャンルの事を気にしていません。逆にラーメンも食べたければ寿司も食べたいという感じです。特に思い入れなどは私の場合そこには存在しません。とにかくオルタナやグランジなんてジャンルは高校生のときにあって当たり前の音楽でしたし、他にもミニマルな打ち込みも大好きです。とにかくジャンルというよりは重低音などそういったものを重視して音楽を体感しているのかもしれません。あと、歌い続けて一つだけいえるのは歌心を動かす音(トラック)とそうでないものがあります。何か表現するという事はとてもエネルギーのいる事だと思いますが、静かな叫びを感じてもらえればと思いながら常に音楽を続けています」

——『LUCK』以降のバンド編成の制作において今作で最も変化した点は何でしょうか? また、変化しなかった点はどこでしょうか?

「特に変化はありませんが、メンバーが私の欲しているものを理解してくれるのが早くなった気がします。勘みたいなもので私は音について話しますが、その辺りはドラムの柏倉くんが近い感じ方をしてくれます。とはいえみんな常に同じ方向を見ています。ですがテレパシーを送るわけではないのでいろいろ説明しなければならない場合がありますが、初めから最後まで私は同じことを言います。なんかデモを作った時点で頭にあるんですよね、イメージが。メンバーは理解力があります」

——10代の心情を歌う「Teenage Blues」と、岸田繁さんがヴォーカルで参加して共に10代の若者にエールを送る「未成年」はコインの裏表のような2曲だと感じました。この2曲の創作の背景について教えてください。また、なぜ10代をテーマに曲を作ろうと考えたのでしょうか?

「自分が18歳でデビューをしていろいろな経験をしました。現金で退廃的な90年代を過ごしてきた少女時代を振り返り歌詞を書いたり、未成年に関してはこのご時世気落ちする事が多いような事にも負けずに踏ん張って有り余るエネルギーを明るく使ってほしいと子供たちに思ったりします。“こうでなくてはならない”という事がとても苦手なタイプなので常に新しい発見や反省もしていきたいと思います」

——歌詞はどのように考えられますか?

「言葉はとても深いようで浅いようで歌詞を書くのが本当は苦手です。若い頃は本も読んでいましたが最近は目が悪くなり、眠くなるのでまったく読んでいません。若い頃、哲学の本など読みあさった時期がありますが実際の生活に役立つのかどうかは今でも疑問です。しかし世界に浸るという事はとてもいい事だと思うので多感な時期はお勧めします。ただし、短絡的に悪いエネルギーにつなげてほしくないと思いますね」

——影響を受けたり、よく聴いたりした音楽は何ですか?

「R&Bやヒップホップは大好きです。ニーナ・シモンなんてレコーディングの最中も何回も聴いていますし、初めの方にも言いましたが要は私の心に響いたか響かないかで音楽を選んでいるんだと思います。もちろんロックも聴きますしジャズも聴きます。一番聴いた事がないのがクラシックですね。単純に教えてくれる人がいないだけで」

——『VALENTINE』は全体を通して「映画的」だと感じました。ここ最近観たものでも、オールタイム・フェイバリットでもかまいませんので、好きな映画や好きな映画音楽をいくつか挙げて、その理由も簡単に語ってもらえますか。

「いっぱいありすぎますね……困ったな。キューブリックの『シャイニング』は最も美しいかもしれませんね。いっぱい観ますよ。ただSFものが大嫌いです」

——『VALENTINE』というアルバム・タイトルにした理由、またこの言葉に込めた思いは何でしょうか?

「響きと暖かさ」

——あるインタビューで「『absolute ego』あたりで変わりましたね」と自身のミュージシャン人生のターニング・ポイントについて語られていました。その発言は、「Grateful Days」の成功によって音楽制作のイニシアチブをとりやすくなったという事だと読みました。当時から、音楽業界のあり方も、もちろんACOさんの音楽環境も大きく変わったと思います。そこでお聞きしたいのは、さらにその後のACOさんのミュージシャンとしてのキャリアで、いまに繋がる大きな転機となった出来事や作品はあったでしょうか?

「そうですね、メジャーの会社はまさに売れたらやりたい事がやれるんです。売れなくてもやりたい事をやって突っ走る人もいますが。元々裕福な家庭ではありませんでしたから、デビューをきっかけに東京に出るというのはある意味チャンスでした。高校生の頃はバイトもしていましたし(その頃グランジ、オルタナは当たり前のように深夜テレビでミュージックビデオが流れていました)デビュー前のまだ高校を卒業する前にSONYの偉い人が実家へ訪れてきた事を覚えています。が、『Grateful Days』のヒットで人生の明暗をみました。それは計り知れないもので、とても大切な良い思い出なのです。私は音楽を続けるとそこで絶対に揺るぎない決心をしました。ま、最近は『マイペースにやらせてくださってどうもありがとうございます』という感じです」

——最後に今後の展望や夢について教えてください。

「絶対にまた行きたいなと思えるライブをできるように頑張るので、ぜひ遊びにきてください」

リリース情報
アーティスト:ACO
タイトル:Valentine
レーベル:AWDR/LR2
価格:2,500円(税別)
発売日:2015年12月16日(水)
■iTunes
https://itunes.apple.com/jp/album/valentine/id1062441911

■HMV
http://www.hmv.co.jp/artist_ACO_000000000063784/item_Valentine_6722444

ライブ情報
タイトル:ACO ~Valentine~(東京公演)
開催日:2016年1月11日(月)
会場:Billboard Live TOKYO
時間:[1st] 開場15:30 開演16:30 [2nd]開場18:30 開演19:30
料金:6,900円(サービスエリア)、4,900円(カジュアルエリア)

■Billboard Live TOKYO
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=9769&shop=1

タイトル:「歌とギター 」(京都公演)
開催日:1月16日(土)開場18:30/開演19:00
会場:京都・SOLE CAFE
出演:ACO, support 岩谷啓士郎
料金:前売予約3,500円 当日4,000円 (共に1ドリンク別)

■SOLE CAFE
http://solecafe.jp/

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