【ピーター・バラカン】僕がどうしても手放せない21世紀の愛聴盤/第34回 アフロキュービズム『AfroCubism』

文/ピーター・バラカン 写真/西田周平

2019.06.24

広く知られているように、「Buena Vista Social Club」の企画は本来、キューバと西アフリカのミュージシャンによる共作になるはずでしたが、アフリカのミュージシャンたちがヴィサの問題で現れなかったために、プロデューサー役を引き受けたライ・クーダーが急きょ、あの愛すべき高齢者の名人たちを集めて、後に作られたヴィム・ヴェンダーズのドキュメンタリー映画の力もあって、結果的にワールド・ミュージック界における化け物的な大ヒットとなりました。

そして14年後の2010年、同じワールド・サーキット・レコードの経営者ニック・ゴールドはもう一度、最初の趣旨でアルバムを作ろうと決めました。その間にブエナ・ビスタの当事者たちのほとんどが亡くなってしまっていて、唯一ギターとヴォーカルのエリアデス・オチョアが、自分のグループのメンバーと一緒に参加しています。

AfroCubism『AfroCubism』(World Circuit/2010)

アフリカ側はマリのオール・スターのメンバー、ヴォーカルのカセ・マディ・ジャバテ、バラフォンのラサナ・ジャバテ、コラのトゥマニ・ジャバテ、ンゴニのバセク・クヤテ、エレクトリック・ギターのジェリマディ・トゥンカラというドリーム・チームのようなライン・アップです。

今回はマドリッドのスタジオでの録音なので、旅の手配もスムーズだったのでしょう。 1960〜70年代、植民地から独立したアフリカの多くの国で社会主義政権ができ、政治的にキューバと親密な関係を結んでいたし、またキューバのソンなどの音楽は元々アフリカからの影響で出来上がった部分も大きいので、相性は極めてよく、もっと前にこういった試みがなかったのが不思議なほどです。

1曲目の「マリ・クーバ」はまさにその古くからある関係を祝うような内容です。 アルバムを聞いていると両側のミュージシャンがお互いのサウンドを楽しんでいる感じが濃厚です。またキューバの曲の中でもジェリマディのエレクトリック・ギターのラインが光ったり、マリの名曲ジャラビでエリアデスのアクースティック・ギターがいい味を出したり、脳内にアルファ波が流れる瞬間が次々と出てきます。

ブエナ・ビスタと比べたらこちらは大きな話題にはならなかったものの、グラミー賞のワールド・ミュージック部門でノミネイションを受けました。アフリカの音楽をあまり聞いたことのない方には特にお薦めします。文化大国マリの凄腕たちが勢ぞろいで、土臭さと洗練を兼ね備えた強力なグルーヴの音楽です。

AfroCubism『AfroCubism』(World Circuit/2010)

  1. Mali Cuba(Toumani Diabaté)
  2. Al Vaivén De Mi Carreta[The Swaying of My Cart](Ñico Saquito)
  3. Karamo[The Hunter](Bassekou Kouyate)
  4. Djelimady Rumba(Djelimady Tounkara)
  5. La Culebra[The Snake](Benny Moré)
  6. Jarabi[Passion](Toumani Diabaté)
  7. Eliades Tumbao 27(Eliades Ochoa)
  8. Dakan(Baba Sissoko)
  9. Nima Diyala[I Beg You My Sweetheart](Djelimady Tounkara)
  10. A La Luna Yo Me Voy[I’m Going to the Moon](Eliades Ochoa)
  11. Mariama(Bassekou Kouyate/Eliades Ochoa)
  12. Para Los Pinares Se Va Montoro[Montoro’s Going to Los Pinares](Lorenzo Hierrezuelo/Francisco Repilado)
  13. Benséma[Change](Kassé-Mady Diabaté)
  14. Guantanamera[Woman From Guantánamo](Joseíto Fernandez)
ピーター・バラカン/Peter Barakan
1951年8月20日ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科卒業後、74年に来日。シンコー・ミュージック国際部入社、著作権関係の仕事に従事する。80年、同退社後、執筆活動やラジオ番組への出演などを開始。また80年から86年までイエロー・マジック・オーケストラ、のちに個々のメンバーの海外コーディネーションを担当。 84年、TBS-TVのミュージック・ヴィデオ番組『ザ・ポッパーズMTV』の司会を担当。88年、TBS-TV『CBSドキュメント』(アメリカCBS制作番組60 Minutesを主な素材とする、社会問題を扱ったドキュメンタリー番組)の司会を担当。2010年、TBS系列のニュース専門チャンネル『ニュースバード』に移籍し、番組名も『CBS 60ミニッツ』に変更。2014年3月まで司会を務める。 現在も放送番組の制作、出演のほか、執筆や音楽フェスティバルの監修なども手がける。
http://peterbarakan.net/

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