投稿日 : 2017.06.30 更新日 : 2019.02.26

【パット・マルティーノ】記憶をなくした天才ギタリスト… “あの噂”について本人を直撃

取材・文/富澤えいち 撮影/米田泰久

パット・マルティーノ インタビュー

効率を追求して生まれた即興理論

——あなたが提唱している“マイナー・コンバージョン”という即興理論について教えてください。まず、この理論を考案したきっかけは?

「楽器を自由に弾こうとするとき、なにがしかの“拠り所”が必要になるわけだけど、それは、その人にとっていちばん弾きやすいものが効率的だよね? 私にとっていちばん弾きやすかったのが、音程のインターバル(距離)をマイナーに縮めたストラクチャー(構造・手法)だった。メジャー・インターバルよりもマイナー・インターバルのほうが、自分でも不思議なぐらい流れるように自然に弾くことができたんだよ。だったら、自分にとって効率的なこのフレーズについて、ひたすら追求してみようと思って始めたのがマイナー・コンバージョンだ。幸いにも、そこから生まれるフレーズの関係性が、バラバラではなく、『じつはすべてが繋がっているものだった』ということにたどり着くことができたんだ」

——その理論を、初心者にもわかるように簡単に説明することは可能ですか?

「それは難題だな(笑)。一口で言うとしたら、マイナーとメジャーは物事の陰と陽と同じで(手で円形の太極図を描きながら)、互いにつながっていて、相反するものではないということ。だから音楽も、始まりがあって終わりがあるのではなく、じつは円を描いているところに、たまたま自分がいずれかのタイミングで入っていくだけ、ということなんだ。そこに、あるインターバルを使えば、すべてがフィットして途切れることなく続けることができる、というわけ。う~ん、もっと簡単に説明したいけど、これが精一杯だね(笑)」

——その理論に加えて、あなたの代名詞でもある“マシンガンのようなピッキング”に憧れるギタリストも多いと思います。運指のためにやるべきエクササイズがあれば、教えていただけますか?

「おもしろい質問だね(笑)。ただ、私は、自分とは違う存在になりたくて何かをしよう、と思ったことはないんだよ。例えばそれが、上達のための練習であってもね。私がギターを弾くのは“楽しいから“であって、それ以外の理由はない。とはいえ、ゆったりと叙情的に弾くときも、速く弾くときも、正確性にこだわって奏法を追求しているよ。そのなかで“正確性を楽しんでいる”というのが私のスタイルなんだ。だからリハビリのときも『以前の自分のように弾かなければ』という思いではなく、ひたすら正確に弾くことを楽しんでいた。子どものような無垢な気持ちで、楽しんでやっていたらこうなった、としか言いようがないよ(笑)」

——最後にもうひとつ“噂”の検証を。次のアルバムが完成間近というのは本当ですか?

「ああ、本当だよ。今回のアルバムはトリオを含むクインテット編成で、非常にパワフルな内容だ。じつは、さらに次の作品にも着手しているんだよ。そっちはフルオーケストラとギターの共演になる。まだ全体像を話すことはできないけどね、時が来たら詳細を発表するよ」

取材協力:COTTON CLUB

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