2019.08.12

【ピーター・バラカン】僕がどうしても手放せない21世紀の愛聴盤〈第37回〉『Goin’ Home-A Tribute To Fats Domino』

文/ピーター・バラカン 写真/西田周平

ピーター・バラカンの連載コラム。西暦2000年以降にリリースされたCD作品のなかから、どうしても手放せない愛聴盤を紹介します。

2019年6月に100歳で亡くなったデイヴ・バーソロミューは、ファッツ・ドミノの多くのヒット曲の作者とプロデューサーとして有名でした。まだロックンロール革命が本格化するちょっと前の50年代前半からヒット曲を連発したファッツと、彼を発掘したバーソロミューの役割は極めて大きかったのです。

ニュー・オーリンズの優れたミュージシャンたちと共に、常に楽しくて踊りたくなるような音楽を作り続けたファッツは、60年代以降も活動を続けてはいましたが、2005年のハリケイン・カトリーナがニュー・オーリンズを襲ったとき77歳だったファッツの家は洪水にのまれてしまい、本人は屋根の上からヘリコプターで救出されました。2017年、89歳で亡くなりました。

このトリビュート・アルバムはカトリーナの2年後、2007年に制作されました。冒頭のジョン・レノンの「エイント・ザット・ア・シェイム」だけ70年代の録音ですが、それ以外は驚くほどの大物アーティストによるこのアルバムのための新録音です。

Various – Goin’ Home-A Tribute To Fats Domino(Vanguard, 2007)

共演が沢山あり、多くの場合はニュー・オーリンズのミュージシャンを含む組み合わせになっています。例えばファッツの代役を務めることで注目を浴び、その次のニュー・オーリンズの黄金時代を築くことになるアラン・トゥーサントはポール・マカートニと一緒に「アイ・ウォント・トゥ・ウォーク・ユー・ホーム」と担当。

これに負けない意外なコンビが他にもいます。ミーターズのメンバーと組んだハービー・ハンコックは「アイム・ゴナ・ビー・ア・ウィール・サムデイ」を取り上げています。この類いのトリビュート・アルバムではよく名前を見かけるアーティストも多いですが、決して「お仕事」としてやっている印象はなく、全体的にとても満足感の高い作品です。

ファッツの黄金時代に、まだ10代でプロのミュージシャンとして活動し始めたドクター・ジョンは「ドント・リーヴ・ミー・ディス・ウェイ」を演奏します。2019年6月、77歳で世界中のファンに惜しまれながら亡くなりました。彼と仲がよかったジョン・クリアリーは長年ニュー・オーリンズ在住のイギリス人ピアニスト/ヴォーカリストですが、彼が以前バンド・リーダー的な役割をはたしたボニー・レイトと二人でファッツの「アイム・イン・ラヴ・アゲン/オール・バイ・マイセルフ」を聞かせます。

他にトム・ペティ、エルトン・ジョン、ロス・ロボス、ノーラ・ジョーンズ、ロバート・プラントなど、出来すぎというぐらいの楽しいアルバムです。

Various『Goin’ Home-A Tribute To Fats Domino』

John Lennon/Ain’t That A Shame (Domino/Bartholomew)
Tom Petty & The Heartbreakers/I’m Walkin'(Domino/Bartholomew)
B.B. King With Ian Neville’s Dumpstaphunk/Goin’ Home (Domino/Young)
Elton John/Blueberry Hill (Lewis/Stock/Rose)
Taj Mahal And The New Orleans Social Club/My Girl Josephine (Domino/Bartholomew)
The Dirty Dozen Brass Band With Joss Stone And Buddy Guy/Every Night About This Time (Domino)
Paul McCartney Featuring Allen Toussaint/I Want to Walk You Home (Domino)
Lenny Kravitz With Rebirth Brass Band, Troy “Trombone Shorty” Andrews, Fred Wesley, Pee Wee Ellis And Maceo Parker/Whole Lotta Loving (Domino/Bartholomew)
Dr. John/Don’t Leave Me This Way (Domino/Bartholomew)
Bonnie Raitt And Jon Cleary/I’m In Love Again~All By Myself (Domino/Bartholomew)
Art Neville/Please Don’t Leave Me (Domino)
Robbie Robertson With Galactic/Going To The River (Domino/Bartholomew)
Randy Newman/Blue Monday (Bartholomew)
Robert Plant With Lil’ Band O’ Gold/It Keeps Rainin’ (Domino/Bartholomew/Guidry)
Corinne Bailey Rae/One Night (Of Sin) (Bartholomew/King)
Neil Young/Walking To New Orleans (Domino/Bartholomew/Guidry)
Robert Plant And The Soweto Gospel Choir/Valley Of Tears (Domino/Bartholomew)
Norah Jones/My Blue Heaven (Donaldson/Whiting)
Lucinda Williams/Honey Chile (Domino/Bartholomew)
Marc Broussard, Sam Bush/Rising Sun (Domino)
Olu Dara And The Natchezippi Band Featuring Donald Harrison, Jr./When I See You (Domino/Bartholomew)
Ben Harper With The Skatalites/Be My Guest (Domino/Marascalco/Boyce)
Toots & The Maytals/Let The Four Winds Blow (Domino/Bartholomew)
Willie Nelson/I Hear You Knockin’ (Bartholomew/King)
Irma Thomas And Marcia Ball/I Just Can’t Get New Orleans Off My Mind (Domino)
Bruce Hornsby/Don’t Blame It On Me (Domino/Bartholomew)
Herbie Hancock With George Porter, Jr., Zigaboo Modeliste And Renard Poché/I’m Gonna Be A Wheel Today (Domino/Bartholomew/Hayes)
Los Lobos/The Fat Man (Domino)
Big Chief Monk Boudreaux, Galactic/So Long (Domino/Bartholomew)
Preservation Hall Jazz Band With Walter “Wolfman” Washington And Theresa Andersson/When The Saints Go Marching In (traditional)

ピーター・バラカン/Peter Barakan
1951年8月20日ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科卒業後、74年に来日。シンコー・ミュージック国際部入社、著作権関係の仕事に従事する。80年、同退社後、執筆活動やラジオ番組への出演などを開始。また80年から86年までイエロー・マジック・オーケストラ、のちに個々のメンバーの海外コーディネーションを担当。 84年、TBS-TVのミュージック・ヴィデオ番組『ザ・ポッパーズMTV』の司会を担当。88年、TBS-TV『CBSドキュメント』(アメリカCBS制作番組60 Minutesを主な素材とする、社会問題を扱ったドキュメンタリー番組)の司会を担当。2010年、TBS系列のニュース専門チャンネル『ニュースバード』に移籍し、番組名も『CBS 60ミニッツ』に変更。2014年3月まで司会を務める。 現在も放送番組の制作、出演のほか、執筆や音楽フェスティバルの監修なども手がける。
http://peterbarakan.net/

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