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【あの伝説のジャズクラブへ行ってみた】第2回 – 「SMALLS」編

アメリカの「伝説的ジャズクラブ」体験レポート。第二弾となる今回は、NYの激選区に店を構えるスモールズ。近隣の「老舗」に比べると若い店だが、その名の通り“小さな名店”なのである。

現在進行形の先鋭的ステージ

今回訪れたのは、まさに店名通り小さなジャズクラブ「スモールズ」。20世紀初頭から半ばにかけて、数多くの芸術家が集まったことで知られるグリニッチ・ヴィレッジ地区にある。最寄りの地下鉄駅は、クリストファー・ストリート駅。同じ通りを数百メートル北側に歩けば老舗のヴィレッジ・ヴァンガードがあり、数百メートル南西に歩けば人気のブルー・ノートがあるというジャズ好きには絶好のロケーションだ。

この地区はビート・ジェネレーションに代表される、東海岸のカウンターカルチャー発祥の地でもあり、1950年以降は地価が高騰して高級エリアになってしまったが、現在でもセックスショップ(いわゆる大人のおもちゃ屋)やヘッドショップ(水パイプやマリファナ用の吸引具を売っている店)などが残っていて、アップタウンにはないある種のいかがわしさを残しているのが面白い。同時に話題のブラッスリーやレストランや小さなブティックなどが、次々と出店している。

うっかり歩いていると見落としてしまうくらいの小さな入り口に、smallsのネオンが灯っている。脇の椅子に座っているのは、マネージャーのミッチ氏。急な下り階段を降りると、縦長のフロアに到着する。右手にはバーカウンター、左手には立ち見客用のカウンターがあり、ステージに近いフロア前方はチェアに座って鑑賞できるエリアになっている。

予約制ではないので、いい席を確保したいのであれば早めに入店するしかない。満員でなければいつでも入店できる。日曜から木曜日の19:30~24:00は、20ドルで入場可能。話題のアーティストが出演する土日は、ステージごとに20ドルを支払う。IDチェックがあるのでパスポートの写しなどを携行しておくといい。

店内でフードの提供はないので、近所のレストランを利用するのがいい。おすすめしたいのは、深夜営業をしているコーナービストロというバーガーショップ。地元のアーティストやミュージシャンが通うことでも知られ、看板メニューのビストロバーガーは、ここ数年のバーガーランキングで常に上位に入っている。値段はちょっと高めだが、それを補って余りあるボリュームと美味しさだ。

下北沢っぽいライブハウス感?

感覚的に下北沢などにある小さなライブハウスと同じで、ステージもそれほど大きくなく、キャパシティも70人以下である。カジュアルな雰囲気が特徴で、ジャケットを着用した観光客らしき客も数人いるが、多くの客はジーンズ姿が目立つ。スモールズの始まりは1994年。当初は酒の販売許可を取っていなかったので、飲み物の持ち込みが可能で、出入りも自由なフリースペースとしてスタートした。前述したミッチ氏が出演ミュージシャンとの交渉を行い、クリエイティブなミュージシャンが多数出演してきた。

地元のファンに支えられ、順調に営業を続けていたスモールズだが、9.11の影響が決定打となり、翌年の2002年に閉店。その跡地を買収したブラジル人オーナーは新たにブラジル料理店として営業することになるが、全く流行らず…。そこでミッチ氏にスモールズとしての再スタートを依頼し、04年に再営業を果たすことになる。ジャズバーの経営では儲けが少ないと不満を募らせていたオーナーは、07年にスモールズの売却を決定。そんな折に、ジャズピアニストのスパイク氏とその友人が共同経営者として資金援助をし、ミッチ氏らとともにオープン当初のスピリットを取り戻すべく奮闘。

鮮度の高いアーティストを次々とブッキングし、次第に多くのジャズファンから注目を集め、2011年にはインターネットを利用したライブ・ストリーミングを行うようになる。オンラインで会員登録することで、過去のライブ映像も閲覧可能だ。ビジネス的にも堅調になり、13年には通りを隔てた地下に、姉妹店としてMezzrowをオープン。こうして世界中のジャズファンや耳の肥えた音楽ファンが増え続け、現在まで営業を続けている。

取材時の19:00から演奏をしていたのは、ザ・エド・チェリー・トリオ。エレキギターをメインに、エレクリトリックピアノとドラムというシンプルな編成。多少スピーカーで出音を拾っているが、ほぼ生音で聴こえてくる。ステージと客席の高低差がほとんどないこともあり、音を振動として身体で認識できるほど臨場感たっぷり。ステージの壁面にはいくつか鏡を設置することで、ドラマーやピアニストの手元は見えるように工夫している。そんなDIY感も微笑ましい。

営業時間には19:30~22:00、22:30~1:00、1:00~4:00の3ステージがあり、それぞれ異なるアーティストが演奏するというのも、従来のジャズクラブとの大きな違いである。深夜1時からのステージは、ジャムセッションが通例となっている。

ジャズバーといえば、どこか閉鎖的で、堅苦しい印象もあるが、スモールズはいたって開放的で自由なムードが漂っている。会社帰りのビジネスマンや近所に住んでいると思われるカップルたちが、ビール片手に和気あいあいとしている光景が印象的。初めて顔を突き合わせた来客者同士で、会話が弾むことが多いというのも頷ける。

年々家賃が高騰するマンハッタンでは、ジャズを演奏する場所そのものが限られている。そのため、若手ジャズマンが演奏する機会を少しでも増やし、現在進行形のジャズを聴かせる場所として、スモールズの存在意義は評価されているのだろう。ジャズの裾野を少しでも広げようという、草の根的な取り組みが着実に成果をもたらしているようだ。

https://www.smallslive.com/

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