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ベニー・シングス『STUDIO』

まるで80年代初頭のヨーロピアン・テクノのようなキッチュなサウンドがスタートと同時に飛び出してくる。The MO、シャグラン・ダムールといった名前を思い出す。しかし単なるレトロ・ポップの焼き直しではない。聴き進めるうちに「My Favourite Game」ではスティーリー・ダンに通じるポップ・センスが、「Shoebox Money」ではベニーが敬愛するバート・バカラックを思わせる深いメロディが滲み出してくる。
しかし全体を通じて印象に残るのはミスター・フィンガーズやフランキー・ナックルズが90年代初頭に確立したサイレントなハウスのテイストだ。キッチュに思えたストリングスやヴォコーダーも、実はハウス以降のデッド感を持つ。つまりここには80年代テクノ的なキッチュさと、90年代ハウス的なサイレント感のハイブリッドがあり、それが2015年のいまリバイバルを超えた形で表現されているのだ。2003年『Champagne People』でのアルバム・デビュー時はオランダのローカル・シンガー・ソングライターだったが、2005年のセカンド・アルバム『I Love You (Live At The Bimhuis)』以降は全世界リリースとなり本作がフルアルバムとしては4作目。ポップ・マエストロの真価が問われる1枚となるだろう。

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