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オノ セイゲン&パール・アレキサンダー『メモリーズ・オブ・プリミティヴ・マン』

ミュージシャンは音を“出す”ことを自らの表現の主眼としている、というのが一般的な認識だろう。しかし実際には、“聴く”という過程を経なければ“出す”という表現は評価を得ることができない。“出す”と“聴く”の関係性は、録音技術が発達した20世紀半ば以降の音楽シーンにとって重要なテーマとなったはずだが、現代音楽の一部でマニアックな実験が続く以外は、録音の恩恵を最も享受しているはずのポピュラー音楽でさえ“見て見ぬふり”であるのが実状だ。
オノ セイゲンは、坂本龍一のサウンドトラック・アルバム『戦場のメリークリスマス』の録音エンジニアとして脚光を浴びた1982年以来、現代音楽の音響派的なコンセプトとジャズ/フュージョンのポピュラリティを融合させる活動を続けているが、本作もその延長線上にある。イベント用に制作したサウンドトラックを土台に、グラミー・ウィナーのコントラバス奏者パール・アレキサンダーをフィーチャーしたトラック・メイクは、音が“出る”空間をコントロールしようとする意識があるからこそ、分子拡散を起こさず、心に沈殿する作品に昇華しているのだ。

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