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アグラフ『the shader』

すっと聴き流しただけならば、これまでと変わらぬ「アグラフのサウンド」の世界観が横たわる。が、細部まで聴くと表現の質がまるで違うことがわかる。その世界観を作っていたアンサンブルやメロディは、粉々に解体され、そこにあるのは、ノイズ、低音、ミュージック・コンクレート的表現、さらに微細な電子音……これらがとんでもない密度でさまざまな流れを作り、ときにリズムに、ときにメロディに、ときにベースラインへと変成され、楽曲のテクスチャーを構成していく。その流れを追うだけでも音楽に対する、新たな知覚を見つけるおもしろさを、よろこびをあたえてくれる。そして、テクスチャーの集まりはまるで小魚の群れが巨大魚を装うように、メロディやアンサンブルのセンスの、いわば“残り香”のような「アグラフ のサウンド」を幻影のように浮き立たせる。電子音楽という表現に対して極限まで自覚した音楽家による表現が迫力を持って迫ってくる快作。

■beat records
http://www.beatink.com/Labels/Beat-Records/agraph/

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