ARBAN

『Caipi』

 約5年ぶりの新アルバム。“現代ジャズの最重要ギタリスト”とまで評されるプレイヤーだが、マルチ奏者としての天稟もいかんなく発揮。完成までに10年を要したという本作でも、弦(ギター/ベース)、打(ドラム/パーカッション)、鍵(ピアノ/シンセサイザー)をみずから演奏している。さらに特筆すべきは、全編に声(ボーカル/コーラス)を入れたこと。これだけで十分に“革新”と言えるほどの趣向だが、まだある。エリック・クラプトンやアレックス・コズミディといった「自分以外のギタリスト」を招いたこと。さらに、ブラジル音楽に主題を求めたことも、これまでにない試みだ。若きブラジル人ギタリスト、ペドロ・マルチンスの参加も注目だが、今回はドラム、キーボード、パーカッション、ボイスを担当。とは言え、本作の持つ柔らかな暖色系の音世界をさらにカラフルにし、優美で独創的なハーモニーづくりにも大きく貢献しているのではないか。こうした「ブラジルへの接近」は、かつてのパット・メセニーを想起させるが、本作はメセニーのそれよりも音の重心が低く、コンパクトかつポップだ。もちろん、良い意味で。

http://www.songxjazz.com/release/Caipi.html

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