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【ましのみ&Nyaronsインタビュー】個性的な活動で注目される2組が歩み寄って完成した、2曲のコラボレーション作品

シンガー・ソングライター“ましのみ”と、ネット系エレクトロ・ポップ・ユニット“Nyarons”(にゃーろんず)のコラボレーションによるシングルが2曲続けてリリースされる。個性的なクリエイティビティが発揮されたトラック、ましのみ(写真中央)とchika(Nyarons/写真右)のリアルな感情をポップに昇華したリリックが共存する楽曲の制作は、両者にとっても大きな刺激になったようだ。この貴重なコラボレーションについて、ましのみとNyaronsのふたり(chaca、bassy/写真左)に話を聞いた。

コラボのきっかけはデモテープから

──ましのみさん、今回のコラボについて「あーーーほんとに作るのから何から全部楽しかったーーー 新鮮だと思うから楽しみにしてて下さい」とツイートされていましたね。

ましのみ あ、見てくれました? ホントに楽しかったんですよ。

chika 楽しかったですね。

──そもそも、ましのみさんとNyaronsがコラボすることになったきっかけは?

ましのみ ちょうどコラボレーションに興味が出てきた時期だったんですよね。もともと私の作る曲はかなり幅が広くて、思うがままに作ってきたんですけど、この先は「今はこれが好き」「これがかっこいい」と思うものをもうちょっと突き詰めたいなと思っていて。それは時間をかけてやっていくんですけど、一方で、いろんなアーティストの方とコラボしてみたいという気持ちもあって。そんな中縁あってNyaronsと出会うことができて。Nyaronsは音楽性も好きだし、chikaさんの声も大好きなので、ぜひ一緒にやりたいと思って。こういう形のコラボは初めてですね。

chika あ、そうなんだ。嬉しい(笑)。

2020年2月にましのみがリリースした「7」は、TVドラマ『死にたい夜にかぎって』のオープニング主題歌となった

bassy 僕らもシンガーソングライターの方と一緒に作るのは初めてでした。海外のビートメイカーからトラックが送られてきて、トップメロディや歌を乗せるということは何度もやってるんですけど、実際に対面して、お互いの人となりを知ったうえで曲を作ったことはなかった。

ましのみ そうなんですね! コラボ馴れしてるのかと思ってました。

chika そんなことないんですよ。(これまでのコラボは)相手の顔も知らないので(笑)。

bassy ましのみさんとchikaはお茶もしたしね。

ましのみ そうなんですよ。スカイツリーが見えるスタバで、けっこう深い話をして。

chika お互いの好きな映画とかアニメとか。

ましのみ プライベートな話もしましたね。

bassy 僕はそこには入れないですね(笑)。

ましのみ bassyさんの話題も出ましたよ。chikaさんから「いい人です」って聞きました(笑)。

Nyaronsは、この10月にもEP「Tomare Kakumare」をリリースしている。

ふたりの女性視点で描いたリアルな世界観

──実際の制作は、どんなふうに進めたんですか?

bassy 2曲のうち1曲(「Nurse and Singer」/Nyarons&ましのみ)はNyaronsサイドでプロデュースして、もう1曲(「French Toast」/ましのみ&Nyarons)は、ましのみさんにプロデュースしてもらったんです。「Nurse〜」に関しては、ひとつだけテーマを決めさせてもらって。第三者を設定して歌詞を書くのではなくて、chika、ましのみさんとして歌のなかに登場してほしかったんです。ストリーミングが主流の時代になって曲はどんどん流れていきがちですけど、リアルな内容を入れることで、僕らを知らない人にも印象に残る曲にしたくて。基本ラップの曲なんですが、サビの歌詞だけ僕が書いて、後はお任せしました。

ましのみ だから“Nurse”なんですよね。

chika 私、普段は看護師をしてるんです。

──なるほど! ましのみさんはシンガーだから、「Nurse and Singer」なんですね。

ましのみ そのままですね(笑)。chikaさんもシンガーだけど、この曲ではナースとしての側面で歌詞を書いていて。私もシンガーという役割に徹して歌詞を書くことはないので、新鮮でした。まずchikaさんが歌詞を書いたんですけど、「鳴り止まないNC HR SpO2 アラーム音 / ここは戦場 経験とアセスメント 重ねてこなせ」というフレーズがマジでカッコ良くて。プロフェッショナルだなって。

chika ありがとうございます。その歌詞はけっこう生々しいですね。看護師さんが聴いたら「うんうん」ってなると思います。

ましのみ なので私も、本当に思ってることを書けたんです。

──「鳴り止まないでアンコール / ハートビート エスコートしたいsing a song」とか、まさにシンガーのことを歌っていますよね。

ましのみ はい。自分の曲でそういう歌詞を書くと、ちょっとストレート過ぎるというか、エゴが前に出ちゃう気がして。「Nurse and Singer」はトラックがポップでノレるし、chikaさんとの対比という構造があったから書けたんだと思います。

chika 私も普段思っていることを書いてますね。看護師は「こうなったら、ああなる」という予測がつきやすい仕事なんですが、逆に言うとできることは限られていて、「何もできないな」と思ってしまうこともあって。音楽は無限だし、想像の世界だから、すごくいいなと思うんですよね。

ましのみ うん、うん。

chika ただ、音楽には答えがないんですよ。自分たちがいいと思っても、受け取り側は違うこともあるし。「こうしたら、こうなる」という予測ができなくて、不確かなところがしんどくなることもあるというか。そういう対比を歌詞で表現したかったんです。

bassy リアルですよね。実際に会って話さないと、こういう歌詞は書けないと思います。

大切にしたのは、自分が好きなこと、信じていること

──ましのみさんが主導した「French Toast」は、ちょっとダークなトラックが印象的でした。

bassy 最初に送られてきたデモがポップな感じだと思ってたんだけど、けっこう難解なトラックになっていて(笑)。「Nurse and Singer」とは真逆ですね。

chika 私も最初に聴いたときはビックリしました。

ましのみ え、ホント?

chika でも、すごく中毒性が高い曲だと思ったし、好きですね。闇を抱えたかわいさというか、ダーク・メルヘンみたいな感じで……。

ましのみ まさにダーク・メルヘンをテーマにして作ったんですよ。最初はchikaさんの声ありき、ですね。Nyaronsの「chocoholic」という曲のchikaさんの声が大好きで、「私もこの感じを出したい!」という気持ちもありました。bassyさんもアレンジの関わってくれたので、安心でしたね。

bassy ましのみさんからのリクエストが細部に至るまで色々あって、勉強させていただきました(笑)。

ましのみ すいません!

bassy いえいえ(笑)。自分以外の意見を反映することで、トラックは良くなるので。特に「French Toast」は、ましのみさんが作曲者なので、僕が思い付かないようなアイディアもたくさんあったんですよ。

ましのみ 私は、何事においても遊び心を大事にしてるんです。トラックを自分で触わるようになってからは、「おもしろくしたい」という気持ちがさらに強くなったかも。歌詞に関しては、chikaさんとふたりで話した時に感じたこともかなり入ってますね。共通点がけっこうあるんですよ。意外とリアリストなところだったり。

chika そうですね。

ましのみ 子供の頃のメルヘンなところも残ってるんだけど、現実をちゃんと見つつ、吹っ切れて今を楽しんでいる感じもあって。chikaさんにはガーリーなところとサバサバしたところが両方あるし。ふたりとも、思ったより強いと思います。

chika 「French Toast」の歌詞は「わかる!」という感じ。ましのみさんの価値観もすごく出てると思います。他のみんなが好きなものを好きになるんじゃなくて、自分のこだわりをちゃんと持ってるところとか。「ハイスペックより愛がほしい」という歌詞は、私のことを歌ってる? って思いました(笑)。

ましのみ その話、していいの?(笑)

chika 大丈夫です(笑)。婚約破棄した経験があるんですよ、私。

ましのみ でも落ち込むわけではなくて、そこで得たこと、学んだことを踏まえて、自分の足で力強く歩いてるところがいいなって。

──確かにめちゃくちゃリアルな歌詞ですね……。

chika そうですね(笑)。自分の価値観、好み、信念、直感、遊び心、好奇心を大事にして生活している感じもちゃんとあって。「こうすれば安定する」とか「これが正しい」ではなくて、自分が好きなこと、信じることを選んでるので。

bassy 20代の女性のリアルを垣間見ているような歌詞なんですよね、僕からすると。共感というより、「なるほど、こういう世界観で生きている人たちがいるんだな」っていう。もちろん、同世代の女性は共感できると思います。

──すごく意義のあるコラボレーションになりましたね。

ましのみ 本当にそう思います。2曲のベクトルも全然違うし、自分だけでは作れない曲になったので。

bassy 僕らもすごく新鮮でした。リリースした後の反応も楽しみですね。

chika 私も新鮮な気持ちで制作できました。最初から最後までずっと楽しかったんですよ、ホントに。普段はテーマを決める段階からすごく迷うんですけど、今回は“ましのみさんとだから作れる曲”という縛りがあって、そのぶん深いところにある引き出しを開けることができて。ましのみさんはいい意味でわがままで、こだわりがあるのに適当で、それがすごく楽しくて。

ましのみ めちゃくちゃ見抜かれてる(笑)。

chika 声の相性も良かったし、一緒にやれてよかったです。

ましのみ そうだよね。私、声フェチなんですよ。最初にも言ったけど、chikaさんの声がすごく好きなので、「絶好のチャンス!」と思って。

chika ありがとうございます。こちらこそです!

ましのみ
慶應義塾大学を経て、キーボード弾き語りのスタイルで活動するシンガー・ソングライター。2016年3月19日、ヤマハグループが開催する日本最大規模の音楽コンテスト「Music Revolution 第10回 東日本ファイナル」で約3,000組の中からグランプリを獲得。2018年にはメジャー・デビュー作『ぺっとぼとリテラシー』をリリース。2020年2月に発表した「7」は、TVドラマ『死にたい夜にかぎって』の主題歌となった。
オフィシャルTwitter
https://twitter.com/mashinomi55
Nyarons
ネット系エレクトロポップユニットコンポーザーのbassyとヴォーカリストのchikaにより2016年に結成。既存のポップスに加え、ジャンルはエレクトロ、Chill、Future Bassなど多種多様。YouTubeにアップした初のMV「ハルカカナタ/HARUKAKANATA」がスマッシュヒットとなった。ストリーミングメディアを中心に、現在までに30曲以上をリリース。Spotifyでは主にアメリカ、インドネシア、アジアなどを中心に、10,000人以上のリスナーにフォローされている。
公式ツイッター
https://twitter.com/bassy_chika

リリース情報

「French Toast」
■配信日:11月13日(金)


「Nurse and Singer」
■配信日:11月20日(金)

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