投稿日 : 2026.09.11

【ARBAN WEEKLY/今週のニュースまとめ】コルトレーン生誕100年、サリヴァン・フォートナー、ステフォン・ハリスの新作など

デトロイトのアヴァンギャルド証言、埋もれたヴァイブラフォン奏者、電子音響の先駆者を特集したARBAN WEEKLY 2026.09.11のアイキャッチ。アーカイブのテープレコーダーとヴァイブラフォン、アナログシンセの気配を静かな光の中に配した抽象的な構成。

コルトレーン生誕100年—東洋への視線は誰に受け継がれたか

2026年9月1日、ジョン・コルトレーンの生誕100周年を記念する特集をNPRが組んだ。コルトレーンは1926年9月23日生まれで、今回の特集はその節目を前にした報道である。60年代半ば、コルトレーンは東洋音楽やスピリチュアルな思想への接近を深めていったとされる。単なる異文化への憧れではなく、サックスという楽器そのものを通じて瞑想的な音響空間を作ろうとした試みだったと言われている。

この視線は、彼の死後も途切れなかった。妻であり音楽家のアリス・コルトレーンは、インドの聖典やラーガの構造を自身の作品に取り込み、スピリチュアルジャズという系譜を独自に開拓した人物として知られる。同時代を並走したファラオ・サンダースも、アフリカと東洋の要素を重ねた音響を追求し続けた。近年ではカマシ・ワシントンが、大作を通じてこの系譜を現代のジャズ・オーケストレーションとして甦らせている。

生誕100年という数字そのものより、コルトレーンが開いた「サックスの向こう側」への扉が、半世紀以上経ってなお閉じていないことのほうが、記念すべき事実なのかもしれない。

出典:https://www.npr.org/2026/09/01/nx-s1-5951499/celebrating-100-years-of-jazz-great-john-coltrane

ロン・カーター×ヨタム・シルバースタイン、ピアノレス・デュオの系譜

ジャズ専門誌『Jazz Journal』が8-9月の新譜ガイドを発表した。中でも注目したいのが、ベーシスト、ロン・カーターとギタリスト、ヨタム・シルバースタインによるデュエット作である。これはジム・ホールへのトリビュートとして企画されたという。

 

ロン・カーターとジム・ホールは、かつてベースとギターだけで対話する録音を残している。伴奏を必要としないピアノレス・デュオという形式は、当時としては実験的な試みだった。今回のシルバースタインとの再演は、その系譜を半世紀後の若い世代の手に橋渡しする作業とも言える。

なお同時期には、Sidiki Camaraの野心作、Tristan Cappelの追悼盤、15年ぶりとなるDeirdre Cartwrightの新作も発表されている。それぞれの詳細は今後の紹介に譲りたい。

出典:https://jazzjournal.co.uk/2026/08/30/new-releases-august-september-2026-c-d

サリヴァン・フォートナー、ニューオーリンズの記憶を刻む

ニューオーリンズ出身のピアニスト、サリヴァン・フォートナーが新作『Leave That In There』を発表した。ベーシストのタイロン・アレン2世、ドラマーのカイボン・ゴードンとの常編成トリオによる初のスタジオ録音である。

アルバム名は、ハリケーン・カトリーナを記録したドキュメンタリー映画『When the Levees Broke』(スパイク・リー監督、2006年)の台詞から取られたという。収録される12曲のオリジナルと再演には、ルイジアナ南部の風景や家族の記憶、黒人ディアスポラの伝統が織り込まれているとのことだ。

堤防が決壊し、街が水に沈んだあの記憶を、20年近くを経て一枚の音楽作品として刻み直す——グラミー受賞歴のあるピアニストによる、極めて個人的でありながら土地の歴史そのものでもある企画である。

出典:https://www.radiofrance.fr/francemusique/podcasts/au-coeur-du-jazz/sullivan-fortner-trio-apres-le-deluge-espoir-et-resilience-2428000

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ウェンデル・ハリソンが語る、ファラオ・サンダースとサン・ラーの記憶

デトロイトのジャズ・アヴァンギャルドシーンを長く支えてきたウェンデル・ハリソンが、ele-kingのインタビューでファラオ・サンダースとサン・ラーとの出会いを振り返っている。デトロイトは、モータウンのサウンドで語られることが多い都市だが、同時にジャズの実験精神が根を張った土地でもあった。ハリソン自身、クラリネット奏者・サックス奏者としてこの街のシーン形成に長く携わってきた当事者であり、その証言には固有の重みがある。

インタビューでハリソンは、サンダースの音の探求とサン・ラーの宇宙的な音楽哲学、二人の巨人がそれぞれ異なる方向からスピリチュアル・ジャズの地平を切り開いていった様子を語る。一人の証人が二つの潮流を同時に見ていたという事実は、ジャズ史を線ではなく面として捉え直す手がかりになる。デトロイトという土地が、ニューヨークとは異なる形でアヴァンギャルドの拠点になり得たことも、この証言を通じて浮かび上がってくる。

出典:https://www.ele-king.net/interviews/012378

Stefon Harris & Blackout、20年の歩みと友への追悼

ヴィブラフォン奏者、ステフォン・ハリスが率いるBlackoutが、結成20周年を記念したアルバム『Legacy Dances』をMotémaからリリースした。本作は単なる周年企画ではなく、バンドの創設メンバーだったケイシー・ベンジャミンへの追悼という側面を色濃く持つ。

Blackoutは電子的な音響処理とアコースティックな演奏を融合させ、ジャズの語法を拡張してきたバンドである。本作ではルイ・アームストロング、ウィリー・ザ・ライオン・スミス、そして詩人アミリ・バラカへのオマージュも織り込まれ、ジャズを「共感の行動」として捉え直す哲学的な仕上がりになっているという。20年という時間の蓄積と、そこに刻まれた喪失が、一枚のアルバムのなかで響き合っている。

出典: https://www.radiofrance.fr/francemusique/podcasts/au-coeur-du-jazz/stefon-harris-blackout-feat-casey-benjamin-hommage-et-compagnonage-7477111