投稿日 : 2026.08.28

【東京・富士見ヶ丘 ヨシダベーカリー】レコードバーにも変身する美味しいベーカリー

取材・文/富山英三郎  撮影/高瀬竜弥

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「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は富士見ヶ丘(東京都杉並区)にあるパン屋『ヨシダベーカリー』を訪問。ここは通常営業時からレコードで音楽が流れており、週に一日程度、夕方からレコードバーに変身するユニークなお店でもあります。真空管アンプやヴィンテージ・スピーカーが置かれ、パン好きはもちろん音楽好きにとってもワクワクする空間でした。

音楽好きの店主が営むベーカリー

京王井の頭線 富士見ヶ丘駅 南口から徒歩約1分。マンション1Fにお店が連なる一画にある、白を基調としたおしゃれな外観の『ヨシダベーカリー』。国産小麦を使った風味豊かなパンをはじめ、サンドイッチやタルトなども豊富に揃う人気のお店。

「美味しいパン屋さん」としてさまざまなメディアで取り上げられており、パン好きには知られた存在だ。その証拠に、平日の昼間でもひっきりなしに常連客がやってくる。

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店内に足を踏み入れると、香ばしい小麦の香りと共に、見た目にも美しいパンが勢揃い。何を買おうかワクワクして選んでいると、ふと「ん? このお店音良いな」と音楽好きなら気づくはずだ。

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ショーケースのパン越しに視点をずらすと、ターンテーブルの上でレコードが回っている。「BGMをレコードで流しているパン屋?」という不思議な組み合わせに驚いていると、真空管アンプやヴィンテージ・スピーカーなども次々と発見。「どういうこと?」と疑問が浮かんでくる。

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「音楽好きなので、やっぱりいい音で聴きたいなということで。オーディオに関しては、子どもの頃から好きだったんです」。そう語るのは、店主の吉田 稔さん。

東京・葛飾区で1976年に生まれた吉田さんは、小学生のときに通っていたそろばん塾の先生がスピーカーを自作するタイプだった。それを譲り受けて以来、オーディオに興味を持つようになったという。

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先生の影響でビートルズなども聴いていたが、当時流行っていたBOØWYやCOMPLEXなども聴いていたとか。その後、10代後半になるとHMV渋谷やZESTに行き始め、渋谷系をはじめとする90年代カルチャーに触れるようになる。そこから、好きなアーティストが影響を受けた音楽を探したりと、レコードを掘るようになった。

「最初はトラットリア(Trattoria Records)とかクルーエル(Crue-L Records)とか。そこからフリーソウルを聴いたり、その延長でジャズやブラジルを聴いたり、いろいろな音楽を聴くようになったんです」

高校を卒業して社会経験を積むなか、次第に一つのことを追求していきたいと思うようになったという。そんな折、夫婦で営むパン屋が近所にでき、店主と話しているうちにやりたいことが見えてきた。

「パン屋をやりながら、好きな音楽を聴けたらいいなというイメージができたんです」

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転機は、フルオート再生のレコードプレイヤー

その後、6年ほどパンづくりの修行をおこない2012年に独立。現在の場所で『ヨシダベーカリー』をオープンする。しかし、当初からレコードをかけていたわけではなかった。

「常に粉まみれなので、レコード盤を頻繁にひっくり返すことができないんです。なので、最初はCDをiTunesに落として聴いていたんですけど、あるときリピート機能のあるフルオート再生のレコードプレイヤーを見つけて。これなら使えると思ったんです」

販売スタッフに操作をお願いするのは難しいため、現在も通常営業時は片面がリピート再生されていることが多い。ひと段落ついたとき、手を洗って盤を交換するのが日常だ。

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「当初は、クワイエットミュージックとか、アルゼンチンのネオ・フォルクローレとかポストクラシカルを流していて。レコードプレイヤーを導入してからは、クラシックにのめり込んでいくんです。チェロの無伴奏ものなど、いろいろな作曲家のものを集めてみたり。協奏曲とかも気になるものは集めていきました。クラシックは安いからいっぱい買えるんですよ(笑)」

しかし最近は、広範囲のアンビエントや現代的なワールドミュージックなど、新譜が中心になってきている。それに合わせ、ヴィンテージのスピーカーのみならず、最新のスピーカーも導入。音楽や気分に合わせて切り替えながら、パンづくりに勤しんでいる。

どんな曲が流れているのか、どんなパンが売られているのかは、Instagramをチェックするとより理解できるだろう。

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現在の機材は、レコードプレイヤーがテクニクスのSL-1300MK2。フルオート機能付きのものでは、当時もっとも性能が良いとされていた名品だ。アンプは、近所に住むセミプロのビルダーさんによる、300Bの真空管を使ったもの。所有していた2A3の真空管アンプを修理するタイミングで借りたものだという。

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店内のスピーカーは、60年代のテレフンケン(ドイツ)RB-70と、50年代のレーベ・オプタ(ドイツ)のユニットをヴィンテージジョインがマウントしたもの。さらに、超薄板ガラスがコーン部分に使われている、マークオーディオのNC5H_UTAG。作業場のスピーカーはマークオーディオのCESTI MBだ。

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さらに、ブレーカースイッチをオーディオ用のものに変更し、光城精工のパワーコンディショナー(≒クリーン電源)、マークオーディオのリニア電源を使うなど、良い音を支える環境にも抜かりがない。

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「理想のサウンドというのはとくにないんです。音楽ジャンルや曲がつくられた年代に合わせて、まろやか系から解像度の高いものまで、気分で切り替えながら楽しんでいます。でも、自分も職人なので、クラフト系の機器に共感することが多いかもしれない」

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週に一日程度、レコードバーとしてもオープン

この連載は、「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介することがコンセプト。このままでは飲食店ではなく、販売店だというツッコミが入りそうだ。しかし、『ヨシダベーカリー』は2026年3月より、週に一日程度レコードバーとしてオープンするようになっている。

「このところレコードを買いすぎているので、もっと有効活用しなくてはという思いもあって。パン屋のB面的な感じで、思いつきで始めたんです。これまでも、パンのオーブンで珈琲を焙煎したり、クレープ屋さんを不定期でやったり、自家製麺をつくったり、餃子をつくったり、この設備と自分の技術でできることをいろいろやっているんです」

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レコードバーとして営業する際は、カウンター上の什器を撤去してオールスタンディングのバーに変更。照明は小さな電球とキャンドルのみ。

お酒はクラフトビールをはじめ、コニャックやカルバドスなど珍しいブランデーを多く揃えている。また、パンやタコスなどフィンガーフードとして食べられるおつまみも用意される。

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「接客は得意ではないんですけど、自分の好きな音楽をかけて共感してくれたり、いろいろな話をしてコミュニケーションできるのは楽しいですね。ルーティンワークにならないよう、今後もいろいろやりながら、本業のパンをブラッシュアップでさせていきたいと思っています」

取材・文/富山英三郎
撮影/高瀬竜弥


・店舗名 ヨシダベーカリー
・住所 東京都杉並区久我山2-23-29 ハイネス富士見ヶ丘 1F
・営業時間 11:00〜19:00(パン屋営業)、18:30〜23:30(レコードバー営業)
・定休日 水曜・日曜
(レコードバーは定休日に営業することが多い。Instagramを要確認)

Instagram:@yoshidabakery

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