投稿日 : 2018.09.18 更新日 : 2022.10.07

シンセを吹き倒せ!! 管楽器奏者のための電子ガジェット続々登場【ジャズ系も楽しめるDTMの世界/vol.4】

管楽器奏者のための電子ガジェット続々登場【ジャズ系も楽しめるDTMの世界/vol.4】

DTM(デスクトップ・ミュージック)を制御する上で欠かせないMIDIコントローラー。現在、主流となっているのは、利便性/汎用性の高い「キーボード型」である。しかし、ギタリストやサックス奏者なら、自分のフィールドでプレイしたいと思うもの。前回の「弦楽器型」に引き続き、今回は管楽器プレイヤーの思いに応える変則型MIDIコントローラーを紹介していきたい。

鈴木本誌編集者。ワガママで目立ちたがり屋。音楽的な知識は豊富だが、楽器演奏や楽曲制作の知識は乏しい。
中村本誌ライター。コンピュータ・ミュージックに精通。記事執筆のほか、楽曲制作も手がけるエキスパート。

鈴木 中村くん、俺は開花した!

中村 自分で言いますか(笑)。前回のギター型コントローラー気に入ったみたいですね?

鈴木 最高だよ! 新たな世界を開いたって感じ。ここから俺の伝説が始まる。

中村 自信過剰な気もしますが、楽しんでるみたいで良かったです。操作環境が変わると新鮮ですもんね。鈴木さんの自信回復にも繋がって何よりですよ。

鈴木 まあ、俺の隠れた才能が開花しただけかな。

中村 ……。それは良かったですね(笑)。さて、今日は前回話に出ていた管楽器型のコントローラーについて紹介したいと思うんですが。

鈴木 そうだったね。でもどんなメリットがあるの?

中村 前回のギターと同様で、鍵盤楽器の操作は苦手だけど管楽器は得意という方は重宝すると思います。管楽器感覚でシンセやストリングスの音を鳴らせたら?

鈴木 面白そう!!

中村 ですよね。こちらもギター型とは違った楽しさがあります。それでは早速いってみましょう!

多彩な音色吹きすさぶ電子管楽器の世界

中村 管楽器型コントローラーと言っていますが、一般的には「ウインドシンセサイザー(以下、ウインドシンセ)」の名称の方が知られていると思います。

鈴木 ういんどしんせ…?

中村 電子管楽器のことです。サックスなどの管楽器に似せた電子楽器で、おもにブレス(息)で強弱のコントロール、リコーダーやサックスなどと同じ運指で音程(ピッチ)をコントロールします。

鈴木 ふむふむ。

中村 内蔵/外付けのシンセサイザーやサンプリング音源、パソコンなどを経由して音を出すんですが、音色はシンセ音からトランペットやバイオリンなど幅広く使えます。

鈴木 なるほど。前回のギター型コントローラーと同じような感じだね。

中村 そうですね。ただウインドシンセはギター型コントローラーに比べるとラインナップは少ないんですが…。

ウインドシンセの歴史
1970年代、米コンピュトーン社がウインドシンセサイザーの元祖とも言える「Lyricon(リリコン)」を市販機として初めて発表。“新しい楽器”として脚光を浴びるも高額な価格設定や使用の難解さから普及には繋がらず同社の倒産を機に製造は中止。その後スタイナーホーンなども人気を博し、その優れた表現力に木管楽器奏者が注目。木管楽器タイプのコントローラーの製作をスタイナーに依頼し、完成させたものがEWI1000の原型である。当初は完全ハンドメイドであったが人気が出たために生産が追いつかなくなり、AKAIがライセンスを買い取り「EWI1000」として製品化した。その後「BIAS 」「STING」やヤマハの「WXシリーズ」などが誕生。ヤマハとアカイの両機はその後、世界中でウインドシンセの人気を二分していく。近年は「WXシリーズ」も販売終了となり、アカイのEWIシリーズを筆頭に、ローランドの電子管楽器「Aerophone(エアロフォン)シリーズ」などの新機種なども誕生している。

鈴木 へ〜。ヤマハとアカイ(AKAI)。意外な取り合わせだね。

中村 リリコン以降はこの2強だったみたいですよ。「WXシリーズ」が販売終了した今では、アカイの「EWI(イーウィ)シリーズ」がウインドシンセの代表格と言ったところでしょうか。黎明期はジャズやプログレなんかの管楽器奏者たちから支持されていて、マイルス・デイビスも非常に興味を持っていたとか。

アカイの旧製品

アカイ「EWI 1000」※現在は販売終了
アカイ「EWI 3000」※現在は販売終了

鈴木 あ、これ見たことあるかも! マイケル・ブレッカー(米サックス奏者)も使ってなかった?

中村 さすが鈴木さん。話が早い! その通りです。 マイケル・ブレッカーの演奏みたらイメージしやすいと思いますよ。

鈴木 おもしろいね! こんな音になるんだ。

中村 有名なとこだと、こんなのもありましたよね。

鈴木 ははは、この曲懐かしいな。アイルトン・セナを思い出すよ

中村 どんなものかイメージは湧きましたかね。EWIシリーズもいろいろ出ているんですけど、今回紹介したいのは『EWI USB』という機種です。

アカイ「EWI USB」(実勢価格:2万9800円前後)。管楽器と同じように息を吹き込み、リコーダーと同じ指使いで付属ソフト(ARIA)やソフトウエア音源などを演奏できるウインドUSBコントローラー。ブレスセンサー、リップセンサー、タッチセンサーなどにより、音程のアップダウン(ベンド)、音量の強弱、ビブラート、タンギング奏法など、管楽器独特の演奏が可能。

鈴木 名前からも想像しやすいね。

中村 たしかに(笑)。名前の通り、これは先端にUSB端子が付いていてパソコンと接続することでDAW(DTMソフト)のソフトシンセや「ARIA」という付属のサンプル・プレーヤーなどを演奏することができます

中村 生楽器と違う点は、裏側にあるローラーを使ってオクターブを変更したり、ベントを使って音程の上げ下げをコントロールしたりもできます。吹き方や押さえ方も生楽器より簡単なので初心者の方にも優しい作りになっていますよ。

中村 あと運指のモードを切り替えることもできて、サックス、EWI、フルート、オーボエ、EVIの5種類から選択することができます。

鈴木 なるほど、サックス以外の管楽器にも対応してるわけだ。

中村 さらにさらに、4つの違う音色を同時に発音することもできます。管楽器を重ねてブラス隊みたいにしたり、シンセとサックス、ストリングスで不思議なレイヤーを組んでみたり。

鈴木 おもしろい! けど実際サックス吹いたりするのとは大分違いそうだね。

中村 まあ、そこは前回のギター同様に慣れが必要ですね。管楽器感覚で吹ける新種の楽器だと思えば楽しいと思いますよ。

鈴木 そうだった。求めすぎちゃダメダメ。

中村 実際、DTMソフトでも管楽器の表現はプログラミングできるんですが、細かく表現するのは少々面倒でして…。そうしたニュアンスを演奏で表現できるなのはかなり重宝しますよ!

鈴木 なるほどね!

電子管楽器の新鋭! ローランド・エアロフォン

中村 もうひとつは、ローランドから発売されている電子管楽器「Aerophone(エアロフォン)」です。エアロフォン(AE-10)という上位機種と、今年7月に発売されたばかりの「エアロフォン・ゴー(AE-05)」という2機種あります。

ローランド「エアロフォン(AE-10)」(実勢価格:8万5000円前後)。サックスをベースに、最新のテクノロジーを駆使して生み出された機種。運指はアコースティック・サックスに準拠しておりリコーダー感覚で演奏が可能。リード構造をともなう専用マウスピースで、多彩なサウンドをブレスでコントロール。ソプラノからバリトンまでの4種類のサックスはもちろん、フルート、トランペット、バイオリン等の管弦楽器からシンセ・リードまで多彩な音色を搭載。モニター・スピーカーやヘッドホン端子を備え、電池駆動でも使用が可能。

 

ローランド「エアロフォン・ゴー(AE-05)」(実勢価格:5万4000円前後)。エアロフォンの魅力をコンパクトなボディに凝縮した機種。本体には4種類のサックスをはじめ、フルート、クラリネット、ミュート・トランペット、バイオリンの管弦楽器、シンセ音からパーカッション・サウンドまで11種類の音色を内蔵。専用アプリを使えば50種類の音色が使用でき、スマートフォンからの曲に合わせての演奏も可能。さらに7台までのエアロフォン・ゴーをワイヤレス接続して同時にアンサンブル演奏ができるアプリも用意されている。

鈴木 メカっぽいルックスでカッコいいね! 値段はちょっと高めだな…。

中村 EWI USBに比べるとちょっと値が張りますね。これには理由があって、この機種はMIDIコントローラーとしてだけじゃなくて単体の楽器としても使えるんですよ。

鈴木 というと?

中村 どちらも本体にスピーカーと音源が内蔵されているんです。エアロフォンは本体のディスプレイから音を選んだり保存もできて単体のまま電子管楽器として使えます。エアロフォン・ゴーも同様なんですが、音源数は少なくてディスプレイもありません。その代わりツマミで音源を選ぶことができます。

「エアロフォン/エアロフォン・ゴー比較サイト」(ISIBASI MUSICより)
https://www.ishibashi.co.jp/roland/aerophone/

鈴木 値段に見合う差があるってことだね。

中村 そうですね。どちらにもUSBやオーディオ出力端子があるので、MIDIコントローラーとしてはもちろん、エアロフォンの音源をそのままDAWソフトに録音したりヘッドホンで練習することもできます。

鈴木 いろいろ魅力的だね!でもDTMで使う目的なら安いエアロフォン・ゴーでも良いのかな?

中村 まあ、パソコンと一緒に使うなら内蔵音源は最低限で大丈夫ですしね。

鈴木 面白そうだけど、さっきのEWI USBとの違いは何なの?

中村 いろいろあるんですが、エアロフォン・ゴーには先ほど言った単体の電子楽器として使えるという点と、「Aerophone GO Plus」という専用アプリがあるんです。これを使うと機能がさらに拡張されるんですよ。

鈴木 出た!専用アプリ。 最新機種は何でもアプリがくっつくな。

中村 これを使うと、もともと装備されてる11音色に加えて50音色を使用することができます。さらに、Bluetooth機能が搭載されていてスマホやタブレットと連動して音楽を流しながら演奏できるんですよ。ちなみにこれは上位機種のエアロフォン(AE-10)にも無い機能なんです。

鈴木 アプリねぇ〜…。 スマホも使いこなせてないおじさんにできるかな…。

中村 まあ、今はYoutubeでリファレンスも出てますから大丈夫ですよ。

中村 機能面にも触れときますね。基本的にEWIと同様で、運指はサックスの配列に準拠しています。リード構造もサックスに近づけているため、ビブラートやピッチコントロールなど、管楽器ならではの演奏表現が可能なんです。

鈴木 俺にはEWIとの違いが分からないな。

中村 EWIはやっぱり王道機種ですから。エアロフォン・ゴーは本体のみで鳴らせることが強みだと思います。キーに関しても、EWI USBはタッチセンサーなのに対して、エアロフォン・ゴーはボタン式になっていて、実際のサックスのように押し込むことで音が鳴ります。個人的な意見としては、押さえ方が簡単なEWI USBは初心者に優しく、エアロフォン・ゴーは経験者に馴染みやすい作りになっていると思います。

鈴木 そういう違いがあるんだね。イメージできてきた!

中村 あと、エアロフォン・ゴーはスマホで音楽を流しながらセッションも可能なので、このあたりは管楽器奏者の方には嬉しい機能かと。まあ、どちらが自分に合ってるのか、実際に触って確かめるしかないです。

鈴木 どっちも楽しそうで悩ましいな。いまのところガジェット的な機能があるエアロフォン・ゴーに惹かれるな〜。最新テクノロジーでいろんなことが可能になりそう!

中村 テクノロジーの進化は表現方法も拡張してくれますからね。最新と言えばヤマハからも面白い楽器が出てますね。ただ電子管楽器ではないのでDTMからは脱線しちゃいますが。

ついでに紹介…話題のアコースティック管楽器

ヤマハ「ヴェノーヴァ」(実勢価格:1万円前後)。管楽器の本格的な演奏感や表現力をより気軽に身近に楽むために開発された、まったく新しいタイプのアコースティック管楽器。ヤマハ独自の「分岐管」構造と蛇行した管により、このコンパクトさでは今まで出せなかったサックスのような音色を実現。

鈴木 あ! これ、この前ニュースで見たよ!

中村 最近話題になってますよね。何度も言いますが、これは電子楽器ではありません。「カジュアル管楽器」を提唱するヤマハの新しい“アコースティック管楽器”。それがこの「ウェノーヴァ(Venova)」です。

鈴木 何これ!?  サックスみたいな音するじゃん!!

中村 面白いですよね。見た目からリコーダーみたいな楽器かと思ってたんですけど、僕も音聴いてビックリしました。

鈴木 楽器まで新しく生まれちゃう時代なんだ。見た目も未来っぽいし。

中村 科学の進歩はデジタルだけじゃないってことですね!電子管楽器は撤退しちゃいましたが、新しく楽器を生み出すところは、さすがヤマハ! って感じです。

鈴木 でもDTMのコントローラーとして使えないんじゃな〜…。

中村 核心つきますね! その機能も付いてたら、さらに面白かったでしょうね(笑)。さて、ここまでで興味ある機種ありましたか?

鈴木 難しいな〜…。機能面で言えばエアロフォン・ゴーは楽しそうだけど、俺は初心者に毛が生えた程度だし、値段も手頃なEWI USBかな。

中村 EWIシリーズは王道ですし楽しいと思いますよ。

鈴木 今回でキーボード以外にもコントローラーっていろいろあるのが分かったよ! 自分でも探してみようかな。

中村 すごく良いと思います! ちょっと前には台所の皿やフラインパンなんかにプラグを接続するとMIDIコントローラー化するものまでありましたしね!

鈴木 何それ! また俺の興味をそそっちゃって(笑) よし、今夜は帰さないぞ! 飲み屋で朝までレクチャーお願いします!

中村 ……。