投稿日 : 2018.08.14 更新日 : 2019.12.03

シンセをギターでかき鳴らせ!!【ジャズ系も楽しめるDTMの世界/vol.3】

DTM(デスクトップ・ミュージック)を操作する上で欠かせないMIDIコントローラー。現在、市場の多くは、利便性/汎用性においても優れたキーボード型が主流となっている。しかし、ギターや管楽器などのプレーヤーなら、自分のフィールドでプレイしたいと思うもの。今回の企画は、そうしたプレーヤーたちの思いに応える「変則型MIDIコントローラー」を紹介していきたい。

鈴木本誌編集者。ワガママで目立ちたがり屋。音楽的な知識は豊富だが、楽器演奏や楽曲制作の知識は乏しい。
中村本誌ライター。コンピュータ・ミュージックに精通。記事執筆のほか、楽曲制作も手がけるエキスパート。

どうせやるなら“手慣れた楽器”で

鈴木 中村くん、俺はもうダメだ…。

中村 何ですか? また壁にぶつかったんですか?

鈴木 前回のFKJに圧倒されちゃってさ…。あんなこと俺にはできないよ。

中村 逆に、できたらビックリしますよ(笑)

鈴木 俺はもっとゆるく楽しくやりたいの! そもそも、鍵盤が苦手なことがわかったんだよね。でも、DTMで音楽作りたいっ!!

中村 まあまあ、落ち着いて(笑)。つまり、DAW(DTMソフト)を使っていろんな音を出してみたいと?

鈴木 おい、そうはっきりとレベルを落とすなよ。でもまぁそういうこと!

中村 それなら、こんなのはどうですか?  ストリングスやシンセなど、いろいろな音をギターや管楽器をプレイする感覚で出してみるというのは。

鈴木 何それ!?  そんなことできるの?

中村 できます!  DTMだとMIDIキーボードを使って色んな音を出すじゃないですか? あれをほかの楽器に置き換えるというやり方です。

鈴木 ほぉ。

中村 これには利点もあって、キーボードは苦手だけどギターや管楽器ならスラスラとメロディが鳴らせるとか、チョーキングやビブラートみたいな特殊な表現も使うことができます。

鈴木 面白そう! その辺のやり方教えて!!

中村 そうですね。鈴木さんの自信(やる気)を回復するためにも、今回はギターを使って鳴らすことができる装置について話していきましょう。

自分のギターでMIDIコントロール

中村 まず最初に断っておきますけど、ギターを使ったMIDIコントロールも完璧ではないんです。ギター演奏が100%反映される訳ではないし、不便な点もある。あくまでギターのニュアンスを生かした手段だということを頭に置いてくださいね。

鈴木 はい!

中村 ギターを使ったMIDIコントロールは大きく分けると2種類あります。自分のギターをコントローラー化するコンバーター・タイプと、ギターの形をしたMIDIコントローラーを使うやり方です。

鈴木 ふむふむ。

中村 いちばん手っ取り早いのはコンバーター・タイプ。価格も比較的手頃で何より自分のギターをそのままコントローラーとして使えるのが最大の特徴です。なかでもソナスの「i2M」は、いちばん簡単だと思いますよ。

ソナス「i2M」(実勢価格:1万4000円前後)。ギターやベースなど、自分の楽器に改造を加えることなく、簡単な接続で楽器からのオーディオ出力をMIDIノートに変換(モノボイス)することが可能。USB経由でパソコン内の音源ソフトを演奏したり、DAW(DTMソフト)の打ち込み用として、自分の楽器をコントローラーとして活用させることができる。さらに、オーディオ・インターフェイス機能を備え、すべてのアナログ信号をデジタルオーディオ変換してDAWへの録音が可能。

中村 これなら本体をUSBでパソコンと接続してギターを繋げばOKです。

鈴木 えっ、それだけ?

中村 それだけです。あとはパソコンで「ガレージバンド」などのDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)を起動。ソフトシンセなどを立ち上げれば、ギターを使って好きな楽器の音色が楽しめますよ!

鈴木 すげー、ギターでサックス吹いてる!

中村 面白いですよね! ギターを弾きながらサックス奏者気分が味わえます(笑)。ちなみにギターだけじゃなくベースにも対応していますよ。

鈴木 何だよ、こんな便利なのがあるのか! もっと早く教えてよ。

中村 ただ、不便な点もあります。この装置が認識できるのは1音(モノフォニック)だけなのでコード(和音)の演奏情報は受け取れないんです。

鈴木 コードが弾けない!? それだと楽しさ半減じゃん。

中村 まあ、そこについては科学の進歩に期待ですね。もうひとつ不便な点は「レイテンシー」と言われる遅延現象です。これはDTMとギターの宿命とも言うべき現象なんですが、実際の演奏から発音されるまでの時間に0コンマ数秒の遅れが生じてしまうんです。

鈴木 それって結構重要なことじゃないの?

中村 そうですね…。早弾きとかには向いてないかもです。でも、こればっかりは慣れるしかないですね。

鈴木 でもまあ、チョーキングできたり慣れた運指でプレイできるなら、ジミヘンとかクラプトンのギター・フレーズくらいはできるのかな?

中村 それくらいは楽勝です! サックスとかチェロの音色を使って『パープルヘイズ』とか『いとしのレイラ』弾いてみたり。

鈴木 なるほど、イメージが浮かんできた。

電子ギターの草分け「ギターシンセ」でMIDIコントロール

中村 コンバーターに類似するところだと、ギターシンセを使用したやり方もあります。機種によってはMIDI出力できるものもあるので。

鈴木 ギターシンセって懐かしいね。パット・メセニーを思い出すな~。

中村 まさに! 鈴木さんがやろうとしていることは、彼の流れを汲んでいるとも言えますね。

鈴木 え? ついに俺もパット・メセニーに肩を並べるってこと?(真面目)

中村 そこまで言ってません…。じつはこういう電子音楽とギターの融合って結構昔から研究されているんですよ。

ギターシンセの歴史
1977年、日本のローランドが世界初のギターシンセサイザー「GR-500」を発表。同時期に「ARP」などのシンセ・ブランドも開発に乗り出すが、実用化は困難を極め撤退。80年代にローランドが発表した和音対応の機種「GR-300」の登場で、ジャズやフュージョン、プログレッシヴなどのミュージシャンから人気を博す。以来同社はギターシンセをリードするブランドとなり、その進化は現在に至るまで続いている。このほか、英シンタックスの「シンタックス」、エレクトロ・ハーモニックスの「マイクロギターシンセサイザー」、ヤマハの「G10」など、さまざまなブランドから製品が発表されている。

中村 とまあ、さまざまな歴史を経ての今日なんですが。例えばBOSS(ローランドのギター関連機器ブランド)のモデル「GP-10」なんかは和音も弾けるし、MIDI出力も可能ですよ。

BOSS /ボス「GP-10GK」(実勢価格:5万4000円前後)。ローランドが持つ歴代のシンセサイザーとマルチエフェクトを厳選して集約した低価格モデル。付属のディバイデッド・ピックアップ「GK-3」を使用して「GP-10」に接続することにより、ギター・モデリングをはじめ多彩なサウンドを楽しむことが可能。さらにUSB接続でパソコン(ウィンドウズ/マック)との連携も実現。ギター演奏をMIDIに変換することもできる。

 

鈴木 おーっ、これいいじゃん! 手元の装置でエフェクトとシンセを切り替えられるんだね。

中村 「GP-10GK」というモデルには別売りのディバイデッド・ピックアップ「GK-3」が付属しています。動画に出てくる手元のパーツがそれですね。さっきの「i2M」に比べると少々お値段が…(笑)。

鈴木 でも、エフェクターとして考えればお得かもね。

中村 確かに「GP-10」はギターシンセやエフェクターとして使うのが一般的ですね。DTMでも使えますよ、という感じで考えたほうがいいかも。

ギター型のMIDIコントローラー

中村 最後に、ギターの形状をしたMIDIコントローラーを2つ紹介しましょう。いきなり余談で申し訳ないですが、アラン・ホールズワースやゲイリー・ムーアが使っていた「Synthaxe」なんて機種もありましたよね。

鈴木 うわぁ、見たことある! 懐かしい…。

シンタックス
1980年代に英国で量産された機材。音源にシンセサイザーを使用し、ギターに似たコントローラーで音を操作する点が画期的だった。ネックとボディに2種類の独立した弦を装備し、ネック側では音のピッチ(高低)を、ボディ側では音の強弱をコントロール。さらに6つのキーで音のトリガーをコントロールすることも可能で、80年代当時の革新的モデルとしてギタリストの間で話題になった。

中村 じつはコレ、もう生産完了してまして。今回紹介したいのは、先日国内販売が開始されたばかりの「ジャムスティック+」です!

ジビックス「ジャムスティック+」(市場価格 :3万5000円前後)。接続したデバイスの音源を、ギターのように弦とフレットによって鳴らすことができるMIDIコントローラー。ギターの練習用としても使用可能。また、Bluetooth経由で「iPhone」や「Android」とワイヤレス接続して演奏系アプリを楽しむこともできる。

鈴木 ちっこいギターって感じ? ウクレレくらいのサイズかな?

中村 そうですね。小さいですが、6本の弦と5つのフレットが装備されているのでギター感覚で弾けますよ。

鈴木 フレット5つしかないの? 全然足りないじゃん…。

中村 まあ、ダイナミックなプレイは難しいでしょうけど、付属のボタンを押すとハイポジションにも移動できます。海外では、12フレット仕様の「ジャムスティック 12」というモデルも発売されています。

鈴木 ボタンを押してポジション変えるほうが高度な気もするけど(笑)。

中村 最初に紹介したソナス「i2M」との違いは、コード弾きにも対応している点です。USBケーブルでパソコンと接続すれば、DAW側のいろいろな音源が単音でも和音でも鳴らせます。

鈴木 なんかお利口じゃん!

中村 それだけじゃありませんよ。スマホやタブレット用のアプリも出ていて、Bluetoothを使えば気軽に演奏が楽しめます。さらに、自分が押さえているコードの種類も教えてくれるので、ギターの練習にも良さそうです。

鈴木 さすが最新の機種はいろいろな機能が付いてるね! 至れり尽くせり。

中村 そうですね。個人的には現存するコントローラーでもっともギターの特性を捉えたものだと思います。ギターで浮かんだフレーズをそのままDTMに反映させたいときにすごく便利ですよ。あと、もう一つはこれ。アーティフォンの「インストゥルメント1」です。

アーティフォン「インストゥルメント 1」(市場価格:5万4000円前後)。2016年、キックスターターを使ったクラウドファンディングにより商品化が実現。ギターのようなフレットと弦を模したボディを持ち、スマートフォンと連携することでさまざまな音色を奏でたり、「ガレージバンド」や「ロジック」などのDAWや、ソフトシンセとも連携できるスマート楽器。専用アプリを使えば音色、チューニング、演奏方法を自由にカスタマイズ可能。

鈴木 さっきの「ジャムスティック+」よりホビー感が強いね。

中村 そうですね。弦も無いですし(笑)。ギター風に操作できる新種のデバイスってとこですかね。でも、意外にすごいんです。まずは映像を見てください。

中村 このように、「ジャムスティック+」と違う点は通常のギター演奏以外にもキーボードのように弾けたり、ドラムを叩けたり、チェロやバイオリンのような弾き方もできることですね。

鈴木 超おもしろいじゃん!

中村 そうなんです。弦を鳴らすギター、鍵盤を押さえるピアノ、弓で引くバイオリン、叩いて鳴らすドラムやパーカッション。これらをひとつにまとめたら? という発想から生まれたのが「インストゥルメント 1」です。

鈴木 なるほど! 今までの中でいちばん未来っぽいかも!

中村 そうですね。これ一台でいろいろな表現が可能になるので、これまでのMIDIコントローラーの概念を覆す可能性すら感じます。「ジャムスティック+」と同様、USBでパソコン接続するだけでソフトシンセやドラムなど、いろいろな音色がすぐに出せる点も便利だと思います。

鈴木 このサイズなら持ち運びも簡単だね! ちなみに専用アプリっていうのは何ができるの?

中村 音色やチューニング、演奏方法なんかをカスタマイズするのに使えます。

鈴木 へぇ~、すべての機能を使いこなしたら複雑な曲ができそうだね。

中村 あらっ、意外に喰いつきイイですね(笑)。さて、ひと通り紹介しましたけど、ここまでで興味ある機種はありましたか?

鈴木 そうだな~…。あんまり機材は増やしたくないし、自分のギターからコントロールできる「i2M」は魅力だな~。

中村 「i2M」は値段も手頃だし、機体も小さいから気軽に始められて良いかもしれませんね。

鈴木 早く鳴らしてみたいしね。これ使って有名なギターフレーズを違う音色で鳴らしてみたい!

中村 そういうワクワク感が大事です!

 

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