2020.03.12

【Omoinotake】オーバーグラウンドで戦うために…。ピアノトリオが到達した「日本語とメロディ」

取材/山本輝洋 撮影/平野 明

島根県出身の3人が、このバンドを結成したのは2012年のこと。ボーカルとキーボードを担当する藤井レオと、ベースの福島智朗は中学の同級生。そこに同郷の冨田洋之進(ドラム)が合流し、Omoinotake(おもいのたけ)の活動が始まった。

彼らはライブハウスや路上演奏で腕を磨きながら、みずからの音楽性も問い続けた。結果、ロックバンド然としたトリオは貪欲に異ジャンルを吸収し、やがて奇妙なオリジナリティを発揮し始める。そうして結実した彼らの音楽は、昨今、一般リスナーはもちろん同業のクリエイターたちをも感嘆させているという。

もちろん、ここに至るまで順風満帆ではなかった。今日までの彼らが、どんな試行錯誤を繰り返し、バンドとしてどんな舵取りをしてきたのか。

「ロックバンド」がクロスオーバー化

──皆さんは同郷の知り合いで、上京後にこのバンドを結成したそうですね。以前はどんな関係だったんですか?

藤井 僕とエモアキ(福島)は中学校が一緒で、彼からよく音楽を教えてもらっていたんですよ。最初はGOING STEADYの『さくらの唄』というアルバムをエモアキから借りたのが、いわゆるロックの初体験で。

福島 僕も最初はパワーポップやメロコアが好きで。最初はそっちからですね。

──ところが、現在の Omoinotake は R&B的な風味が強いですよね。

藤井 東京に来て2年ぐらいはロック寄りな感じだったんです。ところが、普通のギターロックのバンドと対バンしても埋もれちゃうな…、ってことをライブハウスで実感して。新たなトライをした方がいいんじゃないかってことで一気に舵を切って。

最新のミニアルバム『モラトリアム』

──舵を切った方向は、ブラックミュージックだった。

藤井 そうですね。ドラムの冨田はジャズもやってたし、僕らもあまり抵抗を感じなかった。それが2014年ごろのことですね。

──スタイルを模索する過程で「ceroのアルバム『Obscure Ride』に影響を受けた」というインタビュー記事を読んだことがあります。

冨田  たとえばロバート・グラスパーの『Black Radio』に感じる、ジャズとヒップホップ。そういうフィーリングを(ceroは)すごく上手く邦楽に落とし込んでるな…と感心して。すごく参考になりました。

冨田 ギターロックの方たちと対バンしていた頃は、4つ打ちやエイトビートが主なドラムパターンだったんですが、もっとリズムの表情で聴かせたり、歌やベースもそういうアプローチで新しい表現ができるんじゃないかな…と。

──まずはドラムパターンの変革から入った。

冨田 そうですね。ドラムはかなり変化しました。

路上ライブで知ったこと

──バンド名「Omoinotake」の由来は?

福島 僕がつけたんですけど、音楽性が変わる前から同じ名前で。自分のありのまま「思いの丈」を全てぶつけよう、といった部分は結成時から変わってないですね。

──Omoinotake の実力と知名度を上げたのは、路上ライブだと聞きました。これはどんな狙いがあったのですか?

藤井 2017年に全国流通のアルバムを出したんですけど、その直前に思ったんです。「知名度も実力もないのにマズいな」と。その焦燥感を抑えられず「フィジカルに何かやりたい」という思いがそのまま路上ライブに出た感じでしたね。

──なるほど。で、実際に路上でライブを繰り返してみて、自分たちの音楽に起こった変化などはありましたか?

藤井 音楽性というよりも、マインドが変わった感じですかね。たとえば、目の前を通りかかる人たちの心をつかむには、どうすればいいのか。どんな流れでライブ自体を進めればいいのか。いま、いろんなステージに立ってみて、路上ライブで気づいたことの大切さがよくわかります。

──最初のフルアルバム『So far』(2017)や、ミニアルバム『beside』(2017)、『street light』(2018)などのアートワークには、シティポップ的な雰囲気があります。そこは、サウンド的にも意識していた?

藤井 『street light』に関しては、路上ライブをやっていた時期の楽曲をまとめた作品なので、そういった要素をイラストで表現していますね。

──自分たちの音楽が「シティポップの一種」として扱われることについては、どう感じますか? そもそもシティポップの定義が難しいですけど…。

藤井 そうですね。僕らも “リスナー目線” でその言葉を捉えているというか…。ただ、シティポップというワードを介して、たくさんの音楽を知ったし、いろんな発見もあった。これは大きな恩恵だと思っています。

 

──先日リリースされたばかりのミニアルバム『モラトリアム』は、過去作と比較すると“ポップソングとしての存在感”が強く感じられました。

藤井 エモアキが詞を書いて、曲を僕が作ったんですけど、昔よりも詞をすごく大事にするようになったと思います。

 

藤井 歌詞が先にできる曲も多いので、その詞が “より活きるメロディ”を意識しました。これまでは「言葉でどうグルーヴを作るか」という部分を強く意識していましたが、今回は「意味がちゃんと伝わる気持ち良いメロディ」を探し始めたのかもしれないです。

 

──詞を書くとき、どんなものから発想を得ている?

福島 最近は「あったこと」しか書かないようにしようと思っていて(笑)。

「あの頃の自分」はアイディアの源

──実体験を書いている?

福島 じゃないと伝わらないかな、と思うようになって。たとえば、本を読んだり映画をみたときでも、それとともに蘇る過去の記憶を掘り下げてみたり。そんなこともよくやりますね。

──匂いや音が、記憶を呼び覚ますことはよくあります。本を読んでいても同じ現象が?

福島 ありますよ。たとえば僕は、村上春樹さんの作品が好きで。昔から読んでいるから、読み返すと「それを読んでいた当時のこと」も同時に蘇るんです。これ読んでた頃は、ああだったな…みたいな感じで。そうした、小説や映画にまつわる記憶は、ひとつの柱のようになっていますね。

──歌詞やメロディ以外の部分で、新たな試みはありましたか?

藤井 これまでは自分たちだけでアレンジもやっていたんですけど、今作からはアレンジャーの方を交えるようになった。

──その効果は?

藤井 サウンドがかなりブラッシュアップされました。あと、打ち込みのドラムも採用したんですね、そのおかげで「録音作品とライブ」のあり方について、明確に分けて考えられるようになった。いずれにせよ、聴いた途端に “強く惹きつける力” を持った曲を作る。それが、オーバーグラウンドで戦っていく上で大事だと感じましたね。

【Omoinotake 最新作】

2020年2月に発売されたサード・ミニアルバム『モラトリアム』

【公式サイト】
http://omoinotake.com/

「ARBAN+TOKYO(アーバン プラス トーキョー)」出演時の Omoinotake ライブレポート
https://www.arban-mag.com/article/50894