投稿日 : 2021.01.05

【さとうもか インタビュー】各界著名人も絶賛のSSWが語った「飾らない自分」と「2021年の展望」

写真/岡野慶

さとうもかの写真1

バラエティ豊かな楽曲とポップで耳に残る歌声で、幅広い層から支持を集める岡山県在住のシンガーソングライター、さとうもか。3歳からのピアノをはじめ、ギター、サックスなど様々な楽器に触れ、高校音楽科卒業後は、音楽短期大学へ入学し本格的に活動をスタート。

2018年発表の1stフルアルバム『Lukewarm』で一気に注目を集めると、tofubeatsや斎藤ネコ、漫画家の渋谷直角といった著名人たちも絶賛。翌2019年には2nd アルバム『Merry go round』を、2020年8月には、3rdアルバム『GLINTS』を発表するなど、年に1度のハイペースで作品を投下し続けている。そんな彼女から、自身のルーツや音楽観、コロナ禍での活動、2021年の展望などを伺った。

Soundcloudで色んな人が聴いてくれた

ーーもかさんは3歳からピアノを始めて、ギターやサックスも演奏されるんですよね?

最近はピアノとギターがメインで、ギターが8割くらい。サックスは中学と高校の時にやってたんですけど、今は家で眠ってます(笑)。

ーー高校は音楽学科のある学校に通っていて、そこでバンド活動も始められたとか?

実はその学校にはサックスで入学したんですけど、「あまりサックスは好きじゃない」ってことに気づいてしまって。昔から歌が好きで「いつか歌手に」っていう夢を持っていたんですが、その高校にはバンドやギターをやる場が無かったんで、自分たちで軽音部を作ったんです。

ーーそれはすごいですね。もかさんは「さとうもか(※)」の由来になった「モカ・レモン」というバンド名を考えていたそうですが、その時のバンドが「モカ・レモン」ですか?

「さとうもか」は本名でなくアーティスト名。

「モカ・レモン」は小学校の時に考えていたやりたいバンド名だったんです。高校の時のバンド名は「プリン三宅」でした(笑)。ほかにも色んな名前でやっていて、主にやってたのは「さとうみず」(注1)っていうギターと鉄琴と歌のユニットですね。

注1:さとうみず=偶然駅で会った地元の友人と意気投合して始まったギター・鉄琴・歌のユニット。

さとうもかの写真 2

ーー「さとうもか」を名乗っての活動はいつ頃から?

高3くらいの時に、ソロでその名前でやろうと思ったんです。バンドも同時にやってたけど、私以外はみんなそれぞれ別に熱中していることがあったので、みんなそこまで本気じゃなかったというか。「さとうみず」はライブハウスとかで活動してたんですけど、「一人だったらもっとこうしたい」というのがあって、ソロでやってみようと。

ーーその後、活動を本格的にスタートしたのは音大に進まれてからだとか?

そうですね。大学に入ってからも一人で演奏する機会が増えたんです。でもライブハウスで演奏するのがあまり楽しく思えない時期があって。人前で演奏するのも、そんなに得意じゃないし、ノルマとか高いお金を払って趣味じゃない音楽をジーっと聴くのも苦手で。だんだんそういう場に行かなくなったんです。

その後、携帯での宅録にハマって、作った曲をSoundcloud(注2にアップしてたら、色んな人が聴いてくれるようになって。そこから自分の(音楽の)趣味に近い人たちと共演できる機会が増えて、外で演奏するようになったんです。

注2:Soundcloud=プロからアマチュアまで幅広い楽曲を共有する世界最大級の音楽共有プラットフォーム。

ーーCDデビューは2015年のミニアルバム『THE WONDERFUL VOYAGE』だそうですが、それもこの頃に?

そうですね。月に一度、大学に教えに来てくださる寺田康彦(注3)さんというエンジニアさんがいて、色々と私の音楽を聴いてくれたんです。卒業した頃に寺田さんが「CD作ってみる?」と言ってくれたことがきっかけでした。

注3:寺田康彦=日本のレコーディング・エンジニア。これまでYMOや細野晴臣、大貫妙子、スピッツ、タモリなど、様々な作品のエンジニアを務めた。

さとうもかの写真 4

アルバムはいつも作ったことのない曲に挑戦

ーーもかさんの楽曲はポップスからジャズまで踏襲したようなバラエティ豊かな曲調が印象的です。これまでどんな音楽から影響を?

小学校の頃は、aikoさん、YUIさん、YUKIさんとかが好きでした。ポップスと同じくらいジャズからもめっちゃ影響を受けていて、中学校くらいは、ダイナ・ショア、ナット・キング・コール、ビヴァリー・ケニーがすごい好きでした。

ほかにも、チャットモンチーやLOVE PSYCHEDELICO、アヴリル・ラヴィーンにもハマって。大学では洋楽ロックやボサノヴァを聴いたり、卒業後のバイト先でブルーノ・マーズとかの流行りの洋楽にもハマりました。もともとオールディーズの曲が好きだったんですが、それを機に新しい曲の良さにも気づけました。

ーー2020年8月にリリースされた3rdアルバム『GLINTS』は今までの作品と比べてポップス要素が増していますが、こういった作風になった経緯は?

アルバムを作るときは、いつも「今まで作ったことのないような曲に挑戦したい」というのがあって。1st アルバムは、自分がそれまで作った「入れてみたい曲」を集めたような作品で、2nd アルバムは、ジャズやボサノヴァっぽさが色濃く出てると思ってて。次に出す作品は「ポップにしたいな」って思ってたんです。(発売当時は)夏だし、昔のアニソンみたいにポップで耳に残るような曲を作ってみたいっていうのがあって。

2020年)1月に出した「melt bitter」っていうシングルは、歌詞があんまり前向きではなかったので、次はメジャーコード(明るい雰囲気)みたいなイメージのアルバムを考えてたんです。

ーー『GLINTS』では「10人の主人公」を立てて歌詞を書いたそうですが、ベースはもかさんの実体験?

色んな実体験の一部とか、自分や友達の話を織り交ぜたり。でもそうじゃないのも結構多くて、ひとつの感情から想像して作ったり色んな時のことを組み合わせて一曲にしています。

ーー今作も含め、もかさんの楽曲(歌詞)は恋愛をテーマにしたものが多いですね。

恋愛も含めて自分に起きたことがテーマになりやすいんです。恋愛に関しては高校生くらいまで、すごくフワッとしてて。あんまり人に興味を持てなかったんですけど、大学に入ってすごく好きな人ができて、人の気持ちを考えるようになったんです。

その人と出会って「嬉しい/悲しい」とか、「ちょっとよく思われたい」とか、色んなことを思うようになって。そんな風に心が動いたことが印象的だったというか、自分が変われた大きな出来事だったので書きやすいのかな。

ーーほかにも作詞の面で意識していることはありますか?

高校の時とか色んな曲を聴いてたんですけど、歌詞を好きになったことってほぼ無くて。比喩表現が難しすぎて「何が言いたいのか分からない」っていう。それがきっかけで「できるだけ難しくない言葉や言い回しで、ちゃんと状況が伝わる歌詞にする」ということを意識してます。

さとうもかの写真 5

2021年も新しいアルバムを

ーー2020年はコロナで大変な一年でしたが、もかさんはアルバム・リリースも含め、自粛期間も色々なことに挑戦されてましたね。

そうですね。ライブができなくなって、インスタで毎週ライブをやってみたり、ラジオ(注4)が始まったり。毎週何かしらでファンの人たちと、ちょっとだけコミュニケーションが取れるようになりました。

あとYouTube。グッズとかを販売するのに、ただ「グッズ出たよ」だけじゃ面白くないなと思って。時間もあるし「テレビショッピングでもやるか!」ってスタッフと一緒に決めたんです。

注4:2020年6月5日からラジオアプリ「JFN PARK」にてスタートしたレギュラーラジオ番組「ママには内緒ラジオNeo」。2020年12月で終了。

ーー外人の吹き替え番組みたいな設定が面白いですね。以前、漫画の『すごいよ!!マサルさん』(注5)や『ちびまる子ちゃん』(注6)から「人格面で影響を受けた」という記述を拝見したんですが、音楽面も含め、もかさんのユニークな発想はこの辺りからの影響もあるのかと。

もしかすると、ちょっとあるかもしれないですね(笑)。まる子ちゃんは、絶望をめっちゃポジティブに絶望するところ。マサルさんは、我が道を貫くことを本気で恐れてないというか、自分のことをめっちゃ肯定してる感じが良い!

マサルさんは授業中とかでも、すごい変わった体勢で居眠りするんですけど、そういうのも自然にやってる感じがカッコいい。私、カッコつける人とか苦手だし、自分も「できるだけ飾りたくない」って思ってて。そういう部分でもマサルさんとかまる子ちゃんに影響されたというか。

漫画『すごいよマサルさん』と『ちびまる子』

注5:(写真左)『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』=うすた京介作のギャグ漫画。1995〜97年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載。1998年にはテレビアニメ化。
注6:(写真右)『ちびまる子ちゃん』=さくらももこ作の国民的漫画。少女漫画誌『りぼん』(集英社)にて1986年から連載。1990年にはアニメ放送がスタート。

ーーラジオではリスナーさんからの悩みやエピソードをもとに短期間で曲も作ってましたね。すごく面白い曲でした。

(ラジオの)ああいう曲はめっちゃ作るのが早いんです。1時間とか、合計でも3時間くらいでできちゃいます。

ーーそんなに早く!? 曲作りは早い方ですか?

力の入れようにもよるんですけど、2週間とかあったら全然できます。1週間でもできるけど、変な曲になる可能性がありますね(笑)。

ーーアルバムも今のところ1年に1作のペースで発表されてますが、『GLINTS』以降も曲は増えてるんですか? 

最近はそんなに曲作りをしてなかったから、あんまり無いんですけど、昔に作った曲がいっぱいあって。1年に1枚アルバムを出せてるのは、ストックしてる曲がたくさんあったからかも。けど、3枚出したら流石にちょっと減ってきましたね(笑)。でも、2021年も新しいアルバムを出したいと思ってます!

ーーそれは楽しみです! ほかにも2021年の目標や展望があれば聞かせてください。

まず「アルバムやシングルを絶対に出したい」っていうのが一番の目標です。編曲とかも、自分でもうちょっと良くできるようになりたいし、歌ももうちょっと上手くなりたいし…、いっぱいありますね。あと、映画の主題歌を作るっていう夢があります!

さとうもか
1994年生まれ、岡山出身・在住。初めてのピアノ発表会で弾いた「ガラスの靴」という曲の最初のシ・ド・ミの和音で音楽が好きになる。繊細だけど大胆、ユーモラスだけど甘くない、アート心をくすぐる良質なポップネスを持つその才能は、登場するや新世代のYUMINGと称され、様々なアーティストからも支持を得る。 楽曲提供や客演、ラジオなど様々に活動中。

【リリース情報】

さとうもか
1stフルアルバム『Lukewarm』
2018年5月14日発売

さとうもか
2ndフルアルバム『Merry go round』
2019年5月20日発売

さとうもか
3rdフルアルバム『GLINTS』
2020年8月5日発売