投稿日 : 2022.12.29

【2022年ベスト】ブラジル/ラテン音楽 アルバム BEST 20

ラテンパーカッション
2022年「ブラジル/ラテン音楽」アルバム BEST20

2022年にリリースされた音楽アルバムの中から “ラテン系” 作品に的を絞り、聞き逃せない新譜20作をセレクト。トラディショナルな中南米音楽をはじめ、他ジャンルとの融和作品など、世界各地から発信される “ラテンの最新潮流”をフォローした傑作選。

構成・文/江利川侑介

バーラ・デゼージョ|Bala Desejo
『Sim Sim Sim』

BRAZIL

今年の、私的 “ブラジル音楽新人賞” はこのバンド! それぞれがソロとしても活躍するリオの音楽家4人によるバンドのデビュー作。40名を超えるミュージシャンが参加し、トロピカリアをはじめとする豊潤かつ絢爛なブラジル音楽黄金期のサウンドを見事に再現してみせた。


デルフィナ・マンカルド|Delfina Mancardo
『Octante』

ARGENTINA

今年のアルゼンチン作品ではこの一枚が出色。ジョニ・ミッチェルやリアン・ラ・ハヴァスに影響を受けたというフォーキーな自作自演シンガーによるデビュー作。ジャズやR&Bのほか、室内楽を思わせる繊細でたおやかな演奏、そして何より柔らかく芯のある歌声が魅力的だ。


ドウデリン|Dowdelin
『Lanmou Lanmou』

FRANCE

フレンチ・カリビアンの腕利きミュージシャンたちによる電化トロピカル・バンドが最高すぎる新作をひっさげカムバック。トラップにジュークやソカがクラッシュしたかと思えば、ブーツィーなエレクトロにジャズが接近。活気に満ちた多彩なアンサンブルは中毒性高し!!


グスタヴォ・インファンチ|Gustavo Infante
『Pássaros』

BRAZIL

ドリヴァル・カイミ、バーデン・パウエルといったブラジル・ギターの正統を継承しつつ、各種エフェクトや、カセットテープ、オープンリールなどを駆使し、独特のサウンドを作り出す異才のセカンドアルバム。実験的でありつつも桃源郷的ともいえる音世界は、聴くほどに病みつき。


ジョアン・ドナート|João Donato
『Serotonina』

BRAZIL

御年88歳、ボサノヴァ黎明期から活躍する鍵盤奏者による新作。心地よいリズム、メロウなエレピ、ささやくようなヴォーカルのコンビネーションはブラジル音楽黄金期の輝き。快楽系の神経伝達物質”セロトニン”をタイトルに冠しただけあり、聴くだけで幸福感があふれる一枚だ。


ホルヘ・ドレクスレル|Jorge Drexler
『Tinta Y Tiempo』

URUGUAY

いまやスペイン語圏を代表する存在となった、ウルグアイ出身の自作自演シンガーによる新譜。トレードマークともいえるソフトな歌声と美しいメロディは健在で、ベテランから新鋭ラッパーまでを迎え、しっかり現代のサウンドへと昇華。格の違いを見せつける一枚。


ジョイス|Joyce
『Brasileiras Canções』

BRAZIL

未発表音源の発掘をはじめ今年はリイシューでも話題を呼んだジョイスだが、大充実の新譜も忘れてはならない。気心の知れた仲間と、モニカ・サルマーゾやモアシール・ルスといったゲスト陣を迎え、歌とギターによる円熟のコンビネーションでブラジル音楽の伝統を体現する。


カンサド|Kansado
『Futuro Tumbao Ii』

USA

在NYのドミニカ人プロデューサーが、話題となったデビュー作の続編を発表。アフロキューバン音楽のルーツであるルンバから、その発展形ともいえるティト・プエンテなどのラテンジャズまでを、陽光降り注ぐネオソウル/ビートミュージックへと昇華。夏が待ち遠しくなる一枚!


キング・クラーベ|King Klave
『King Klave』

USA/CUBA

在NYのキューバ人ドラマー/プロデューサーによる待望のデビューアルバム。ピノ・パラディーノらをゲストに、ジャズ、ヒップホップ、R&B、ファンク、そしてアフロ・キューバンを矢継ぎ早に融合。その病的ともいえるスピード感にただただ圧倒される。


レオナルド・マルケス|Leonardo Marques
『Flea Market Music』

BRAZIL

プロデューサー/レコーディング・エンジニアとしても活躍する自作自演シンガーによる待望の4thアルバム。自身のスタジオにあるヴィンテージ機材で録音された、パーソナルかつユニークな音の世界が、聴くものを記憶とノスタルジーの旅へと誘う。


レチエレス・レイチ&オルケストラ・フンピレズ|Letieres Leite & Orkestra Rumpilezz
『Moacir De Todos Os Santos』

BRAZIL

現代アフロブラジル音楽の巨匠、レチエレス・レイチが生前最後に発表した作品。内容は、モアシール・サントスの歴史的名作『Coisas』(1965)のカバー集。打楽器と管楽器で構成される躍動感あふれるビッグバンド・サウンドはまさに革命的。カエターノ・ヴェローゾもゲスト参加。


ロス・ビッチョス|Los Bitchos
『Let The Festivities Begin!』

UK

フランツ・フェルディナンドのアレックス・カプラノスがプロデュースするラテン・ガールズバンドによる待望フルアルバム。サーフミュージックとクンビアが合わさった“チーチャ”というスタイルに、トルコ・サイケ、ガレージなどがごちゃ混ぜになった、キッチュでレトロなパーティー・ミュージック。


メリディアン・ブラザーズ&エル・グルーポ・レナシメント
『Meridian Brothers & El Grupo Renacimiento』

COLOMBIA

オルタナティブなラテン・シーンを牽引するボゴタのバンドによる新作は「都市の民衆闘争を支えた70年代のB級サルサ・バンド」という設定。伝統音楽を徹底的に換骨奪胎したようなサウンドはもちろん、コロンビアの人々をエンパワーするメッセージ性にも注目だ。


パブロ・ムリヒエール|Pablo Murgier
『Gare Du Sud』

ARGENTINA

コンテンポラリー・ジャズとの融合を図りながら、現代タンゴ・シーンで活躍する作曲家/ピアニストによる新作。フォルクローレの要素も随所に織り込んだそのサウンドは、同シーンの代名詞ともいえるディエゴ・スキッシや開祖アストル・ピアソラとは別の地平をいくもの。


パッサロ|Pássaro
『Antes De Existir O Mundo』

BRAZIL

各国のフォルクローレと電子音楽をフューズする”スロウテクノ”シーンから注目の新鋭バンドが登場。鼓動を思わせるミッドテンポのビートに、小鳥のさえずりや親指ピアノ、曼荼羅のようなヴォーカルをフィーチャー。万華鏡のなかに迷い込んだような極上のサウンドトリップ!


ハファエル・マルチニ|Rafael Martini
『Martelo』

BRAZIL

“ミナス新世代”と呼ばれるシーンで中核をなす作編曲家/ピアニストによる待望の最新作。ジャズ、ポピュラー、室内楽、電子音楽。あらゆる音楽をのみこむ複雑なアレンジと、アコースティック/エレクトリック混成セクステットによる奔放なアンサンブルはまさに圧巻。


ロンペラージョ|Romperayo
『Asi No Se Puede Muchaches』

COLOMBIA

“オルタナ・ラテン”を牽引するペドロ・オヘダ率いるバンド新作。古典的なコロンビアのダンス・ミュージックから、よりハイブリッドな汎アフリカン・サウンドまでを継承しつつ、いびつでローファイな音響をフューズ。個人的に今年のNO.1のエクスペリメンタル・ラテン!


ソニード・ソラール|Sonido Solar
『Eddie Palmieri Presents Sonido Solar』

USA

カーティス・ブラザーズをはじめとするNYのラテンシーンの猛者たちが、師エディー・パルミエリのプロデュースで結成した新バンド。待望のデビュー・アルバム。ラテンジャズの正統を突き進む、熱いソロと重厚感あふれる貫禄のサウンドに悶絶必至!


チン・ベルナルデス|Tim Bernardes
『Mil Coisas Invisíveis』

BRAZIL

秀逸なオーケストラル・ポップで、”現代ブラジルのブライアン・ウィルソン”とも言われる自作自演シンガーによる待望のセカンドアルバム。前作以上に歌も曲もスケールアップ。「静」と「動」のコントラストが織りなすダイナミックなサウンドには思わず息を呑む。


シェニア・フランサ|Xenia França
『Em Nome Da Estrela』

BRAZIL

デビュー作も話題になったバイーア出身の自作自演シンガーによる、待望の2作目。プロデュースは前作に続きロウレンソ・ヘベッチス。アフロブラジル音楽をベースにしたスムースでエレガントなネオソウル・サウンドはより洗練された。アルトゥール・ヴェロカイも一曲ゲスト参加。