投稿日 : 2026.10.09
【ARBAN WEEKLY|今週の話題まとめ】コルトレーンの歌心を分析/オスカー・ブラウン・ジュニアの遺産/リズ・ライトとケニー・バンクスSr.の新作 ほか
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コルトレーンの歌心は、どこから来たのか
フランスのラジオ局フランス・ミュージックが、サックス奏者で研究者でもあるラファエル・アンベール(Raphaël Imbert)へのインタビューを公開した。テーマは、ジョン・コルトレーンがどのように独自のスタイルを築いたかである。
アンベールは、少年期の家族や宗教的な背景に、コルトレーンの歌唱性の源を見るという。そこにブルースとR&Bの影響が重なり、さらに、1日10時間に及んだとされる練習を支えた理論への貪欲さが加わる。30歳前後で知られるようになってからの約10年で、音楽史と思想に影響を与えた存在として語られている。
宗教的な背景、ブルース、R&B。ジャズの周辺にあった複数の水脈が、一人の奏者のなかでどう合流したのか。この対話は、その過程を順に辿る試みだと思える。コルトレーンの音源を聴き返すときの、一本の補助線になるだろう。
20年を超える二人の『Nearness』
前出のラジオ局、フランス・ミュージックよりもう一本。ジャズ・ボーカリストのリズ・ライト(Lizz Wright)と、ピアニストのケニー・バンクスSr.(Kenny Banks Sr.)が初めて完全にデュオに徹して作ったアルバム『Nearness』について採り上げている。
ふたりの出会いは大学時代のアトランタ。以来20年以上、共同作業を重ねてきたという。収録されているのは、スピリチュアル、ジャズ・スタンダード、オリジナル曲。バンクスはピアノとオルガンを担当し、プロデューサーはChris Bruce、最終曲はア・カペラである。出典によれば、二人が教会で共に歩んだことと、ジャズ、R&B、即興への関心が、この作品の土台になっている。
教会という共通の場と、ジャズ・R&B・即興への関心。二つの水脈が長い協働のなかで重なってきたことが、スピリチュアルとスタンダードを一枚に並べる構成に表れているように思える。ピアノとオルガン、そして最後は声だけ。編成を絞った作りが、題名の「近さ」にそのまま重なる。
旅の混乱が題になった─ クリス・デイヴィス・トリオ『Lost in Geneva』
ピアニストのクリス・デイヴィス(Kris Davis)が、ロバート・ハースト、ジョナサン・ブレイクとのトリオで、新作『Lost in Geneva』をリリースした。アルバムのタイトルは、旅のアクシデントの逸話に由来するという。
表題曲は、時差ぼけと不慣れな環境による混乱を喚起する曲である。2024年の『Run the Gauntlet』以来、3人は数えきれない時間を路上とステージで共にしてきた。
ピアノ・トリオは、三者の対話で成り立つ形式である。時間と場所を共有した経験の厚みが、題名や表題曲という形で作品に刻まれている。『Run the Gauntlet』から続く道中の記録として、並べて聴けるだろう。
クリス・デイヴ、モノネオン、ジャスタス・ウェスト─11月、ビルボードライブ横浜・東京・大阪で
ドラマーのクリス・デイヴ(Chris Dave)、ベーシストのモノネオン(MonoNeon)、ギタリストのジャスタス・ウェスト(Justus West)が、11月にビルボードライブの横浜・東京・大阪で公演を行う。
日程は11月17日が横浜、19日が東京、20日が大阪で、各日2ステージ(開演17:30・20:30)。告知文はこの公演を「ジャンルの境界を軽やかに越えた予測不能のセッション」と紹介。ドラム、ベース、ギターという三つの楽器の奏者が、三つの街で同じ顔ぶれの音を交わす。
出典:https://www.billboard-live.com/tokyo/show?event_id=ev-21707
ミシェル・ンデゲオチェロ『Synonym』─他人の歌を読み替える
英ガーディアン紙が、ミシェル・ンデゲオチェロ(Meshell Ndegeocello)の新作『Synonym』のレビューを掲載した。見出しは、ボブ・ディランからJ-Loまでの鮮やかなオールスターによる再解釈(原題:vivid all-star reinventions)。
レビューが具体的に挙げているのは、たとえば次のような例である。Cat Powerとの「Don’t You Want Me」はレゲエに作り替えられ、Callahanとの「With God on Our Side」が収められている。Anohniとの「I Got You Babe」は、音数を絞ったジャズ・アレンジ(原文:sparse jazz)になっている。さらにグラスパー(Glasper)の参加にも触れられている。
ジャズは、他ジャンルの曲を取り込み、自分たちの言葉で語り直すことを繰り返してきた。本作もまた、その伝統の延長に置いて聴くことができるだろう。
オスカー・ブラウン・ジュニア生誕100年、その遺産を語る
英国のジャズ情報サイトUK Jazz Newsが、シンガーのアンバー・ウィークス(Amber Weekes)へのインタビュー「Oscar Brown, Jr. – Centenary Interview」を掲載した。
ジャズ・ボーカリストで作曲家のオスカー・ブラウン・ジュニアの生誕100年を記念する企画で、ブラウンの芸術的な遺産と影響が語られている。歌い手であり作曲家でもあった人物の仕事を、同じ歌い手が語る。節目の年にその名前に触れることは、残された作品を聴き直す入口にもなる。
出典:https://ukjazznews.com/oscar-brown-jr-centenary-interview-with-amber-weekes
アルダーナとルバルカバ、タイニー・デスクで
米NPRの企画「Tiny Desk Concert」に、サックス奏者のメリッサ・アルダーナ(Melissa Aldana)が、キューバのピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバ(Gonzalo Rubalcaba)とともに登場した。2026年9月29日付で公開された映像である。
ルバルカバがキューバ出身のピアニストであることから、この共演にはキューバの音楽とジャズの往来という文脈が重なると思える。机ひとつの小さな空間を舞台にした企画に、キューバ出身のピアニストを迎えた一本が加わった。
出典:https://www.npr.org/2026/09/29/g-s1-141836/melissa-aldana-gonzalo-rubalcaba-tiny-desk-concert



