投稿日 : 2026.10.30

【東京・北参道/ROOT DOWN TOKYO(ルートダウン トーキョー)】レコードの音色と独創的なカクテルに身を委ねる夜

取材・文/富山英三郎  撮影/高瀬竜弥

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いつか常連になりたいお店 #95

「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は北参道(東京都渋谷区)にて2026年7月にオープンしたレコードバー『ROOT DOWN TOKYO』を訪問。階段を降りるとラウンジのような空間が広がっており、バーカウンター奥にはアルテックの名品 830Aラグーナが鎮座。ここでしか味わえないクラフトカクテルとともに、心を落ち着かせることができる素敵なお店でした。

北京、上海、そして東京へ

東京メトロ 副都心線「北参道駅」から徒歩約5分、JR 中央・総武線「千駄ヶ谷駅」および都営 大江戸線「国立競技場駅」から徒歩約11分の場所に、ひっそりと佇むレコードバー『ROOT DOWN TOKYO』。千駄ヶ谷小学校とロンハーマンの間にある住宅&オフィス街にポツンと現れる。地下にあるお店だが、路上から窓越しに店内を伺うことができるので、そこまで緊張せずに入店できるだろう。

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店名に「東京」が付いているが、ここは北京、上海に続く3店舗目のレコードバー。

「もともとは、中国人のゲイリー・ワンが北京でスタートしました。その際、私はバーに関するコンサルタントとして入っていたんです。その後、すぐに上海店をオープンすることになり、そこからはビジネスパートナーとして、ROOT DOWNグループのジェネラル・マネージャーとして、BARエリアをマネージメントしています。音楽や音響、デザインはゲイリーが担当しています」。そう語るのは、『ROOT DOWN TOKYO』の共同創設者でありバーテンダーの比嘉政人さん。

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ゲイリー・ワンさんは、80年代後半より6年間東京に滞在しており、そこでDJカルチャーや音楽に大きな影響を受けた人物。2002年にはDJ V-Nutzとして、ターンテーブリストの大会であるDMCの中国代表になったほど。帰国後は、上海にクラブ(The Shelter)をつくるなど、中国のヒップホップやストリートカルチャーのパイオニア的な存在として知られている。

アルテックが引き寄せた、ミッドセンチュリー・モダンな空間

『ROOT DOWN TOKYO』はカウンター7席、テーブル4席 × 2。さらにスタンディングのエリアも備えられている。

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日本在住のオランダ人デザイナーが施工したという内装は、ミッドセンチュリー・モダンの思想を取り入れながら現代的に表現された空間。一般的にイメージされるFRP素材やビビットなカラーはないが、曲線が多用された美しい造形で構成されている。落ち着きがありながらも、どこか浮遊感があるので心地よく過ごすことができる。

「このお店をオープンするにあたり、状態の良いアルテックの830Aラグーナが見つかって。そこから内装デザインのアイデアを広げていったと、ゲイリーは言っていました」

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1957年に発売されたアルテック 830Aラグーナは、当時コンシューマー向けスピーカーシステムの最高峰モデルと呼ばれた名品。豊かな中音域と抜けのいい低音、艶やかな高音というバランスの良さが魅力だ。

そこに接続されているのは、パワーアンプにマッキントッシュ MC275 Mark VI、プリアンプにマッキントッシュ C22 (CE復刻版、90年代製)。ターンテーブルはパイオニア Exclusive P3、カートリッジはオルトフォン 2M Blueという構成。

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「当初はパワーアンプにヴィンテージのマランツ 7を使用していましたが、安定しないときがあり、現在は主にマッキントッシュを使っています。以前よりもダイナミックな音になって、ファンクなどのサウンドによく合います」

店内では、比嘉さんが選盤したレコードが両面フルで流れる。レコードラックには、ジャズやソウル、ファンク、レアグルーヴのレコードが約2000枚ストックされている。

「1970年代前半から中期のファンクやジャズファンク、フュージョンといったサウンドが多いですね。ドナルド・バードやワンネス・オブ・ジュジュ、ギル・スコット・ヘロン、ロイ・エアーズ、クール&ザ・ギャング、マーヴィン・ゲイなどですが、その時代のアルバムをピンポイントで置いている感じです。でも、シャーデーやシャロン・ジョーンズのような80年代後半~90年代のものもかけます」

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バックパッカーからバーテンダーへ。上海での出会い

『ROOT DOWN TOKYO』を取り仕切る比嘉さんは、1988年生まれ。上京して専門学校に入り美容師として活動していたが、2~3年でバックパッカーになったという。その時代、お金稼ぎのために日本に戻ってバイトをしていたのがBARだった。いつしか本腰を入れてバーテンダーを目指すことになり、より高みを目指すため、日本のBARの上海進出に参加し、中国に移住することになったという。

そこで出会ったのが、前述のゲイリー・ワンさんだった。お客さんとして来店していた彼と音楽の話で盛り上がり意気投合。そこから一号店となる『ROOT DOWN BEIJING』(2020年5月オープン)のコンサルタントの相談を受けることに。ほぼ同じ頃、働いていたBARは日本側が撤退することになり、縛りも消え、2号店の『ROOT DOWN SHANGHAI』(2020年12月オープン)からはビジネスパートナーとして参加するようになったという。

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「彼は音楽が好きで、日本のカルチャーであるレコードバーを中国で展開してパイオニアを目指しました。私もオーセンテイックなBARをやりたかったわけではないので、フィーリングが合った。また、BARのことはマネージメント含めて好きにやっていいと言われていたんです」

東京でしか味わうことのできない、ワイン風味のクラフトカクテル

『ROOT DOWN TOKYO』でぜひ味わってほしいのは、ワインの白や赤、ロゼなどを表現したクラフトカクテル。そこには一切ワインは使われていない。ユニークで複雑な味わいがあり、また飲みたくなる完成度を誇っている。

同シリーズは一杯2310円と高価にも思えるが、日本の一般的なカクテルが60mlなのに対し、ここでは90mlと世界標準の量ゆえの価格となっている。

「ワイン風カクテルは東京のみです。3店舗すべてのカクテルは私がプロデュースしていますが、ここでは全く違うことをやろうとしたんです。そんなときに出会ったのが、Birdyというブランドから出しているカクテルでも使えるデキャンタでした。

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くるくる回して空気に触れさせる“スワリング”で味を変える。その手法をカクテルに活かせるツールで、上海時代から研究をしてきました。その結果、面白いカクテルができ始めたので、東京ではスワールを中心としたメニューをやろうと思いました。新しいメソッドであり、世界的にもまだあまり知られていません」

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リスニングバーとして興味を持たれた方も、この話を聞けばカクテルへの興味が一気に上昇するだろう。美味しいお酒を味わいながら、独自のレシピを舌で感じながら、ファンキーでソウルフルな音楽を楽しむ。友人とふらり寄るのも最高だが、ひとり時間を満喫する空間としてもおすすめしたい。

「毎日の営業を大事にして、少しずつ喜んでくれるお客さん増やして、いい空間をつくっていきたい。お客様には、肩肘を張らずフラットに入ってきていただければと思っています」

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取材・文/富山英三郎
撮影/高瀬竜弥


・店舗名 ROOT DOWN TOKYO(ルートダウン トーキョー)
・住所 東京都渋谷区千駄ヶ谷2-7-5 Hello Building B1
・営業時間 18:00〜24:00
・定休日 日曜、月曜
(営業日・営業時間はInstagram、Google mapを要確認)

Instagram: @rootdowntokyo

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