投稿日 : 2017.05.30 更新日 : 2019.02.26

【ゲイリー・バートン】栄光のキャリアを静かに追想 そして、現役最後のステージへ 後編

取材・文/富澤えいち

ゲイリー・バートン

——チック・コリアとの『クリスタル・サイレンス』がリイシュー(1990年)されるとともに、ポール・ブレイとのデュオ・アルバム『ライト・プレイス、ライト・タイム』(1990年)が制作されました。チック・コリアとポール・ブレイではかなりピアノのスタイルが異なりますが、そのことはデュオにどんな影響を与えたのでしょうか?

「ポール・ブレイとのレコーディングもほかのデュオと同じように、特に大きな目論見があって計画されたことではありませんでした。コペンハーゲンのジャズ・フェスティバルに出演したときにパッと閃いて、次の日にスタジオでレコーディングしたのが『ライト・プレイス、ライト・タイム』です。デュオの場合は特にそうなのですが、相手に寄り添いながら演奏することを強く意識していないとうまくいきません。演奏者が2人しかいないので、お互いが違うことを考えていては1つの曲を作ることは難しいのです。それは、相手がポール・ブレイであれチック・コリアであれ、マコ ト(小曽根真)であっても同じです。重要なのは、デュオごとにアイデアを変えるのではなく、デュオの相手と強いラポート(親密な信頼関係)を築くことなのです」

——ヴィブラフォンとピアノという楽器の違いや類似性がデュオに影響していることはありますか?

「音色は違いますが、ヴィブラフォンもピアノも基本的に鍵盤楽器です。なので、どちらのプレイヤーの頭のなかを覗いてみても、音やハーモニーの描き方は同じだと感じます。だから、音色の違いはあるものの、ピアノの連弾と同じような状況がヴィブラフォンとピアノのデュオでも起きているのではないでしょうか」

——ヴィブラフォンとピアノのヴォイシング(音の積み重ね)に対する考え方の違いは関係しませんか?

「私はヴィブラフォンとピアノにそんなに大きなヴォイシングに対する考え方の違いがあるとは思っていません。ただし、音域はヴィブラフォンよりもピアノのほうが広いし、同時に出せる音も、ヴィブラフォンは最高で4音(マレット4本分)に対して、ピアノは10本の指を使うことができるというハンディキャップはありますけどね(笑)」

——あなたの発明したマレット・ダンプニングというテクニック無しには、ピアノとのデュオは成立しなかったと思いますか?

「そのことに関しては、おそらくそうでしょう。マレット・ダンプニングというテクニックは、ソロやデュオに対応できるような柔軟性をヴィブラフォンに与えてくれたと思います」

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