投稿日 : 2021.12.29
【2021年ベストアルバム】ブラジル/ラテン音楽 BEST 20
2021年にリリースされた音楽アルバムの中から “ラテン系” 作品に的を絞り、聞き逃せない新譜20作をセレクト。トラディショナルな中南米音楽や、ジャズに根差した作品はもちろん、世界各地から発信されるラテンの最新潮流もフォローした傑作選。
構成・文/江利川侑介
イサーク・デルガード&アライン・ペレス、オルケスタ・アラゴン/Alain Pérez, Issac Delgado, Orquesta Aragón
『Cha Cha Chá: Homenaje a Lo Tradicional』
CUBA
名実ともにキューバを代表する音楽家となったイサーク・デルガード&アライン・ペレスが、老舗楽団と共演した伝統音楽オマージュ作。チャランガと呼ばれるヴァイオリンを配した編成ならではのエレガントでダンサブルな演奏。古き良きキューバ音楽の魅力満載だ。
アマーロ・フレイタス/Amaro Freitas
『Sankofa』
BRASIL
ヴィジェイ・アイヤーを思わせる理知的なポリリズムで濃密なアフロ・ブラジル性を換骨奪胎。ユニークかつインパクトあるジャズを聴かせてきた注目ピアニストの最新作は、アフロ・ディアスポラ的視点が加わり、よりスケールの大きな作品に。世界的ブレイクも間近か。
アントニオ・ネヴィス/Antonio Neves
『A Pegada Agora É Essa』
BRASIL
トロンボーン奏者でありブラジルを代表する作編曲家になりつつある才人の世界デビュー作。サンバやバイレ・ファンキといったブラジルの様々なリズムとジャズ的即興の融合を、ヒップホップ以降の感覚で飛び切り新鮮に掲示してみせた。今年もっとも革新的だった作品。
アルトゥーロ・オファリル ザ・アフロ・ラテン・ジャズ・アンサンブル/Arturo O’Farrill, The Afro Latin Jazz Ensemble
『…Dreaming In Lions…』
USA
グラミー受賞歴もあるラテン・ジャズのマエストロがついにブルーノート・デビュー。自身のビッグ・バンドを率い、キューバの舞踊楽団とコラボ。変幻自在の静と動に多彩な音色、精緻なアンサンブルで二部構成のストーリーを特大スケールで描く。天晴れの一言。
カエターノ・ヴェローゾ/Caetano Veloso
『Meu Coco』
BRASIL
新進気鋭のミュージシャンを迎え、自らが2000年以降に推し進めてきたポストパンク的手法と、ブラジル音楽の豊穣性を融合。コロナ禍や極右政権への批評をナラティブに聴かせるカエターノ流アートロック。79歳にして最高傑作なのでは? すごいとしか言いようがない。
クララ・プレスタ/Clara Presta
『Pajara』
ARGENTINA
多くの優れたアーティストを生み出すアルゼンチン・コルドバ州のシンガー・ソングライター、初ソロ作。フォルクローレを基調とした豊かな音楽的土壌を、たおやかなアンサンブルで現代的に昇華。フアナ・モリーナ登場時を思わせる冒頭曲から一気に引き込まれる。
ディエゴ・スキッシ・キンテート/Diego Schissi Quinteto
『Te』
ARGENTINA
タンゴの改革者アストル・ピアソラの正当なる継承者が、自身の五重奏でリリースした最新作。すべてのパートをパーカッシブにとらえるという、その特異なアンサンブルは更なる高みへ。冒頭曲から最後の一音まで凄まじい緊迫感に満ちた21世紀のタンゴ・ジャズ。
ダグ・ビーバーズ/Doug Beavers
『Sol』
USA
NYラテン・シーンの最重要キーマンによる新作は、人々を照らし元気づけるSOL=太陽をタイトルにした作品に。超一流のサルサやラテンジャズはもちろん、ジェイディラ風やロイ・エアーズへのオマージュありと、これまで以上に誰もが楽しめるアルバム。
エル・ドラゴン・クリオーロ/El Dragon Criollo
『Pase Lo Que Pase』
COLUMBIA
コロンビアの新世代を続々紹介するレーベル、El Palmas Music。その中核をなすドラゴン・クリオージョの待望フルアルバム。80-90’s初頭を意識したチープなアナログ・シンセと中南米のリズムが融合。レイドバックした快楽的なダンスサウンドが最高。
ジェニフェル・ソウザ/Jennifer Souza
『Pacífica Pedra Branca』
BRASIL
ブラジル・ミナスで活躍するシンガー・ソングライターが、信頼する仲間達との妥協なき制作期間を経て8年ぶりに放つ、ブラジル産インディーの傑作。曲、アレンジ、歌、そのすべてが赤裸々なまでに偽りがなく、切実で力強い。聴く者の胸を締め付けるような作品。
ジョアン・ドナート、ジャルズ・マカレー/João Donato, Jards Macalé
『Síntese Do Lance』
BRASIL
御年87歳のジョアン・ドナートと、78歳のジャルズ・マカレー。ブラジルきっての鬼才二人の初となる共演作は、それぞれの個性を活かした最高すぎる作品に。冒頭曲から、この二人にしか生み出せないご機嫌な空気に思わず頬が緩む。ジャケットもお茶目すぎ!
マリーザ・モンチ/Marisa Monte
『Portas』
BRASIL
ブラジルを代表する歌姫の、オリジナル・アルバムとしては10年ぶりの作品。ひたすらに美しい歌の世界はさらに洗練を増し、悲嘆ではなく希望を歌う。ブラジル音楽のもっとも美しい部分を抽出した宝石のような歌々に、ブラジル音楽の再生を感じる。
マルセロ・ガルテル/
Marcelo Galter『Bacia Do Cobre』
BRASIL
今年惜しくも他界した巨匠レチエレス・レイチの懐刀的ピアニストによる、初リーダー作。ドラマーをダブル・パーカッションに置換した変則ピアノ・カルテットでつづるクールなアフロ・ジャズ。抑制の狭間から立ち昇る濃密なアフロ性にくらくらする。
マルティン・ブルン/Martin Bruhn
『Picaflor』
CHILE
南米フォルクローレとチルなクラブ・ミュージックを融合するレーベル SHIKA SHIKA から、アンデスのカーニバル音楽をテーマにした作品が登場。伝統音楽を現代的なサウンドで再現。ニューオリンズのセカンド・ラインにも通じる祝祭性に心躍る。
メリディアン・ブラザーズ & コンフント・メディア・ルナ/Meridian Brothers & Conjunto Media Luna
『Paz En La Tierra』
COLUMBIA
日本でも認知されつつあるオルタナ・ラテン勢の旗手的存在、メリディアン。昨年の大ヒット作と比べると21年新作は一見オーセンティック。しかしその実は深くコロンビアの音楽を理解した彼らならでは、伝統音楽をとことん咀嚼し再構築した温故知新的サウンドだ。
ナイール・ミラブラット/Nair Mirabrat
『Juntos Ahora』
URUGUAY
エレクトロニックなジャズと、ウルグアイのアフロ系音楽 “カンドンベ”を融合するユニットのデビュー作。プロデュースはブラジル・ミナスの俊英アントニオ・ロウレイロ。複雑なリズムを即興を交えスリリングかつカラフルに、それでいてポップに聴かせる本年ベスト作!
オクテ/
Okuté『Okuté』
CUBA
DJにも人気のラテン・レーベル Chulo が送り出すキューバのコレクティブによるデビュー作。アフロ色の強いサウンドで現代キューバ音楽の礎を築いたアルセニオ・ロドリゲスのサウンドを現代に再現。歪んだトレス(キューバの弦楽器)と濃密でラフなアンサンブルに痺れっぱなし!
サロマォン・ソアレス、ヴァネッサ・モレーノ/Salomão Soares, Vanessa Moreno
『Yatra-Tá』
BRASIL
清廉な歌声と卓越したテクニックを兼ね備えた現代ブラジル屈指の歌手新作は、こちらも注目のモントルー・コンペ受賞歴を持つピアニストとの共作。タニア・マリア曲をカバーした冒頭曲から、ゲストを迎えしとやかに聞かせる曲まで、デュオの可能性を追求したような逸品。
スソブリノ/Susobrino
『Pocualeíto』
BOLIVIA
ボリビア生まれ、在ベルギーのマルチ奏者/電子音楽家によるさ最新作。多種多様な民族楽器の音色と実験的なリズムが融合。アンデス未来派の描く風景を、ルーツであるアフリカ性を求めて旅するようなカテゴライズ不能な問題作。”El Camino Refleja” が強烈!
ヨウン/Yoùn
『Bxd In Jazz』
BRASIL
今年目立ったアフロ・ブラジル系アーティストの活躍。なかでも出色だったのが、このR&B/ネオソウル・デュオのデビュー・アルバムだ。ゴスペルからジャズ、サンバソウルまでを90’s R&Bのロマンチシズムで昇華。トラックのセンスも抜群で誰もが楽しめる一枚だ。