投稿日 : 2023.12.12

【レポート】グレッチェン・パーラト・カルテット|モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパンのイベントに出演


モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパンが再始動

現今のジャズシーンで “最高峰のひとり”とも称される歌手、グレッチェン・パーラトが11月に来日公演を実施。富山、東京、大阪を巡る6日間のツアー中で、ひとつだけ通常のライブとは趣向の異なる “特別なステージ”がセットされた。2023年11月3日にザ・ペニンシュラ東京(東京都千代田区)で行われたライブである。

この公演は「モントルー・ジャズ・フェスティバル プレゼンツTHE PENINSULA TOKYO STAGE”」と銘打ち、会場はザ・ペニンシュラ東京の最上階にあるステーキ&グリル「Peter」。公演タイトルにある通り、このライブは「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン(以下、MJFJ)」のプレイベントとして行われた。

MJFJは “世界3大ジャズフェスティバル” の一つとして知られる「モントルー・ジャズ・フェスティバル(スイス)」の日本版。この数年間はコロナ禍により休止していたが、今回のイベントを皮切りに再スタートの動きが始まったようだ。

現代ジャズをリードする奏者たち

満席の会場には、一般の音楽ファンをはじめ、同ホテルやレストランの常連客、スイスのモントルー関係者、日本の音楽関係者も多数。その中には、ミュージシャンの江﨑文武の姿もあった。WONKやmillennium paradeの鍵盤奏者として知られる同氏は、自作以外にもさまざまなミュージシャンのライブやレコーディングをサポート。さらには楽曲提供、プロデュースなど多彩な表現で活躍する音楽家だが、トラディショナルなジャズへの思いも格別のものがある。

そんな彼にとって今回のステージは非常に興味深いものだという。「グレッチェン・パーラトの音楽は僕の青春の1ページです」と、かつての自分をふり返りながら、こう続ける。

10代で上京して、ジャズ研の友人に教えてもらって聴いたのが最初だったと思います。なんだかボサノヴァとジャズとR&B/ソウルが高度に融合したような、そんな音楽だなと思った記憶があります。あれから12年の時が経ちましたが、変わらぬ美声と圧倒的なリズム感に魅了されました

今回の公演はカルテット編成。ボーカルのグレッチェンもさることながら、バンドメンバーたちも魅力的だ。ピアノのデヴィッド・クックは、テイラー・スウィフトの音楽監督を務めるなどジャズ〜ポップフィールドでも活躍する傑士。ベースのアラン・ハンプトンもグッレッチェン作品には欠かせない存在で、ギターやシンガーとしての顔も持つ芸達者である。

そしてドラムのマーク・ジュリアナ。最新のジャズシーンを先導する実力者にして、グレッチェンの夫でもある。

ドラムのマーク・ジュリアナは、グレッチェンのパートナーということもあり、絶大な信頼を置いていることが伝わってきました。アラン・ハンプトンがギターに持ち替えたときはどこか自分のバンド(WONK)との親近感も湧きましたし、シンガーソングライターとしての活躍にも納得しました。デヴィッド・クックのピアノも非常に理知的で、グレッチェンの都会的なサウンドと非常に相性がいい」(江﨑文武)

“モントルー”の名にふさわしい好演

そうした都会的な洗練は今回のロケーションとも見事にマッチしている。高層ビルの最上階で、窓外に広がる都心のきらめく灯。上品でゆったりとした空間で、食事とシャンパンを愉しむ観客たち──。

そこにジャズ界屈指の巧者たちである。いかようにもプレイできる彼らだが、今回のプレミアムな趣向を踏まえつつ、淑やかなパフォーマンスで聴衆を魅了する。ジャズの伝統を踏まえつつ、世界各地のエスニック要素を調合したサウンドは、グレッチェンの唯一無二を実感させる。

国籍やジャンルを超えて、優れたミュージシャンたちが集う場所──。そんな「モントルー・ジャズ・フェスティバル」の冠名と見事にシンクロする好演は、アンコールとともに喝采で幕を閉じた。ちなみに前出の江﨑文武は、今回の出演者だけでなく「モントルー」に対する思いも強いという。

何を隠そう、ビル・エヴァンス(※1)に心酔して音楽家になったので、モントルー・ジャズ・フェスティバルは最初に名前を知ったジャズ・フェスティバルです。いつか現地に赴いてみたい、そう思い続けてきました。日本は世界的に見ても豊かなジャズの土壌がある国だと思います。友人にも様々なすばらしいジャズ・ミュージシャンがいるので、そうしたミュージシャンが国外で活躍する架け橋になってくれるといいなと思いました」(江﨑文武)

※1:米ジャズ・ピアニスト。1968年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでライブ録音されたアルバムは名作として広く知られる。

スイスのモントルーは、アルプスの名峰に抱かれた自然豊かなリゾート地。一方、こちらは大都会の真ん中。双方まったく性質の異なる壮観だが、今宵のステージはビルの最上階(標高およそ100メートル)。MJFJがスイスのモントルーのステージ(標高およそ400メートル)に少しだけ近づいた夜だった。


 

今回のライブは2部制で、食事とシャンパーニュのフリーフローがセット。第1部は4品コース+ルイナールフリーフロー。第2部はワンプレート軽食+ルイナールフリーフロー。
ライブ前に原田潤一(モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパンCEO)がスピーチ。2024年にモントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパンを開催する準備が進んでいることを示唆した(写真左)。スイスの「モントルー・ジャズ・フェスティバル」CEOを務めるマシュー・ジャトンのビデオメッセージも披露(写真中)。ザ・ペニンシュラ東京の副総支配人パトリック・ハドーン氏。同ホテルとMJFJとのパートナーシップを語る(写真右)

【モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン】
https://www.montreuxjazzfestival.jp/

【WONK】
https://www.wonk.tokyo/

WONK ライブ情報
●2023.12.22 江﨑文武 冬公演@自由学園 明日館(完売)
●2024.1.8 WONK@大阪ゴリラホール
●2024.1.10 WONK@Zepp DiverCity TOKYO公演

詳細はこちら


江﨑文武 ソロアルバム「はじまりの夜」】

https://virginmusic.lnk.to/thebeginningnight


WONK 最新シングル「Snowy Road feat.9m88」】

https://virginmusic.lnk.to/SnowyRoad


●WONKと Kieferとのコラボレーション楽曲「Fleeting Fantasy feat. Kiefer」を11月2日にデジタル・リリース