2019.04.29

予算は? 食事は? 服装は? ─ジャズクラブをスマートに楽しむための How to ─

取材・文/富山英三郎  写真/高瀬竜弥

2018年4月30日の特集記事を再掲

ジャズクラブ/ライブレストランは「飲食を楽しみながら音楽を聴ける」場所。音楽はもちろん、ドレッシーで非日常的な空間を堪能できるのも醍醐味だし、ミュージシャンとの距離が近いことも大きな魅力。音楽と飲食を、ひとりでじっくり楽しむのも良いし、デートや接待にも最適である。

こうした、いわゆるジャズクラブは近年、音楽ジャンルのボーダレス化も伴い、オールドスタイルのジャズだけでなく、さまざまなタイプのアーティストが出演。幅広い音楽ファンを対象とした場所となっている。そんなジャズクラブ/ライブレストランの楽しみ方と、超基本的な事項を、本誌スタッフが再検証。ビギナーも安心の“ジャズクラブの歩き方”について考えてみました。

吉田(本誌・若手編集者):「ジャズは好きだけどジャズクラブに行ったことない」という20代読者が意外と多いことを知り、この企画を立案。

富山(ライター):取材でもプライベートでもジャズクラブには行くことが多いが、今回の取材で「ジャズクラブの実態」を客観的に検証した。

まずは“観たいステージ”を選ぶ

吉田 そもそも「ジャズクラブって何よ」って話ですが、今回の記事では「ジャズクラブ=飲食を楽しめるジャズ系のライブハウス」と定義した上で、話を進めたいと思います。

富山 有名なところではブルーノート東京と名古屋(東京都港区/名古屋市中区)。同じ系列で、コットンクラブ(東京都千代田区)やモーション・ブルー・ヨコハマ(神奈川県横浜市)。あとはビルボードライブ東京と大阪(東京都港区/大阪市北区)なんかも該当するね。

吉田 それぞれのお店に特性があって、出演者の傾向にも違いがありますね。

富山 各店のウェブサイトや冊子でライブスケジュールを公開しているので、まずは気になるアーティストの出演があるかチェックするのがいいね。クラブによっては日本人アーティストも積極的にブッキングしているし、ロックやポップス、アイドルなど、出演者のジャンルは幅広い。

吉田 こうしたジャズクラブの最大の魅力は「大好きなプレイヤーを近くで観られる」という点だと思います。その一方で「ジャズには詳しくないけど、特別な日に上質な音楽と食事を楽しみたい」って人もいるでしょうね。

富山 そう、空間と食事を楽しみに行くだけでもいいんだよ。その場合は、自分が行ける日程から気になるお店を選ぶ。でも、ミスマッチを防ぐためにも、当日の出演者がどんな音楽なのかは検索したほうがいい。最近はいわゆる「モダンジャズ」だけじゃないですからね。よくわからない場合は、お店に電話をすれば優しく教えてくれます。

吉田 ちなみに、各店ごとの雰囲気の違いはあるんですか?

富山 内装や雰囲気の違いで言えば、ブルーノート東京は重厚感があって上品な大人の世界。コットンクラブはきらびやかな非日常。ビルボードライブ東京はもう少しやんちゃな高級感。どこも立地のイメージと合っているのが面白いんだよね。おしゃれ上級者な南青山、ハイソなオフィス街・丸の内、新興系セレブな六本木。あくまでも主観だけど(笑)。

予算はどれくらい必要?

吉田 初心者がまず心配なのは“お値段”ですよ。

富山 それはアーティストによって公演料が変わるし、どの席を選ぶのか、どれくらい飲食するかによって価格が大きく変わるからね…。

吉田 でも、大雑把な目安みたいなものは知っておきたいっす。

富山 基本的な仕組みとして、まず「公演料(チケット代)」があります。次に、指定席の場合は「シート料」が加算される。さらに、1ドリンク以上の注文は必須だから「飲食代+サービス料+税」もプラス。これが全貌。

吉田 わかりやすく既存の公演でシミュレーションしてみましょうよ。

富山 では、いまARBANでも告知をしている「2018年7月10日(火)ブルーノート東京のPJ MORTON公演」を例に。この公演を、ペアシート席でハイネケン2杯とフライドポテト1皿を食べたとしよう。そうすると、8500円(公演料)+2700円(1人分シート料)+3267円(飲食代+サービス料+税)=1万4467円となります。

吉田 なるほど、わかりやすい。

富山 僕の経験則でも、軽く飲んで食べてトータルで1万5000円程度といった感じかな。ちなみにブルーノート東京さんはこう言ってます。

公演料の平均が8000円~1万円、ドリンク1~2杯に軽食を1品程度頼まれて2000~3000円。その場合はトータル1万3000円前後でお楽しみいただけます。
(ブルーノート東京・原澤さん)

富山 コットンクラブさんも同じくらいの予算感ですが、ビルボードライブ東京さんはこんなことも仰っていましたね。

公演料の平均が5000円~1万円、カジュアル席(最後列)であればそこから1500円程度安くなります。しかも1ドリンク付きなのでお得にお楽しみいただけますよ。
(ビルボードライブ東京・角野さん)

吉田 なるほど。カジュアル席ね。最近は学割もあるらしいですね。

富山 ブルーノート東京、コットンクラブ、モーション・ブルー・ヨコハマは「スチューデント・プラン」を設けていて、18歳以上の学生を対象に、ミュージックチャージが50%オフ(自由席)になる。ただしこれは、演目によって学割適用の有無があるので、事前に確認したほうがいいね。

予約の手順は?

吉田 大雑把な価格がわかったところで、次に気になるのが予約方法です。

富山 どのジャズクラブも公式HPからチケットを予約することができます。でも、初めて行く場所は、どの席が自分にフィットするのかわかりづらいよね。その場合は電話予約をして、オペレーターと相談しながら決めるのがおすすめ。

吉田 電話予約ってアナログな気がしますけど…。

富山 現代っ子だなぁ。でも、ビルボードライブ東京さんはこんなことを仰っていますよ。

オペレーターはバンド編成などを考慮して、当日の舞台セッティングを予想することができます。ですので、メンバーの誰を中心に見たいかなど、相談しながら決めることができます。また、WEBだとエリア指定はできますが、席をピンポイントで予約することができないんです。さらに、WEBの場合は即時購入なので、その時点からキャンセル料が発生してしまいます。
(ビルボードライブ東京・角野さん)

吉田 これ、お得な情報じゃないですか。

富山 一方、コットンクラブさんはこんなお話でした。

ホテルのコンシェルジュのような丁寧な対応をしております。しかし、BOX席に関してはWEB予約のみになってしまいます。
(コットンクラブ・船木さん)

吉田 クラブによって、WEB予約のメリット・デメリットがあるんですね。

富山 まずはWEBを確認して、よくわからなかったら電話するのがベストですかね。

どの座席を選ぶ?

吉田 電話でオペレーターに相談という話も出ましたけど、玄人が座るエリアとかあるんですか? 彼女にカッコイイところを見せたいんですよね。

富山 玄人が座るエリア…? そういうことを知りたがるって、若そうに見えてさすが昭和生まれだね。では、一般的なレイアウトと特性を紹介していきましょうか。

富山 まずは①の「ステージ前エリア」。今回取材を行った3店舗(ブルーノート東京/コットンクラブ/ビルボードライブ東京)ともに、1Fのこのエリアが自由席になっている。ここはアーティストをとにかく間近で見たい人におすすめです。とはいえ、最前列付近はあまりにもステージに近いからモニター音も聴こえてきたり、音響的にはあまりおすすめできないかな。

吉田 ②の「正面エリア」はどうですか?

富山 ここはステージ全体が見渡せて、音響的にも良いから人気のエリア。それだけに、各店舗とも小上がりになった正面エリアには豪華シートを配した、高価格帯の席になっています。一方、正面とはいえ1Fの奥だとステージが見えにくい場合もある。

吉田 じゃ、③「左右のエリア」は?

富山 もしかしたら、ココがさっき言っていた “玄人好み”のエリアかも。というのも、ステージも客席も見渡せる場所なので、スタッフみたいな感覚を味わうことができるんです。アーティストやお客さんの視線が気にならないから集中できるという人もいるし、入退場の導線近くであれば、通り過ぎるアーティストを間近で見ることもできる。1Fの左右端っこは他のお客さんの迷惑になりにくいから、気ままに踊って盛り上がりたい人にもおすすめです。

吉田 ④の「最後列エリア」はどんな特性があるんですか?

富山 ここはステージからは遠くなるけど、全体を見渡すことができて音響的にも悪くないエリアです。お店によっては低価格帯で観られるのがポイント。カウンター席になっていることが多いので、ひとりで行く際は気楽で便利。

吉田 彼女と行くなら、エリアよりペアシートとかBOX席みたいな隔離されているところがいいんですかね。

富山 ふたりだけの世界になれるから、彼女と行く場合はそっちのほうがいいかもね。まあ、ふたりの関係性にもよるけど(笑)。ちなみに、お店の方もみなさん特別な日にはBOX席を推薦していますね。

「接待や記念日などで使われる方は、BOX席のセンターですね。落ち着いて観たい方や、ゆっくり過ごされたい方は左右の壁際を好まれることが多いです」(ブルーノート東京・原澤さん)

「うちは3層構造なので座席によってかなり見え方が変わります。ですから、どう過ごされたいかの要望をいただいたほうがより楽しめるかもしれません。個人的なおすすめは、4F正面のDXシートカウンターです」(ビルボードライブ東京・角野さん)

「各種記念日などでご利用であれば、BOX席がおすすめです。自分たちの世界に入り込みながら演奏が楽しめると思いますよ。一方、アーティストの息遣いまで聴こえてくる自由席の前列センターは、ファンの方にはたまらないと思います」(コットンクラブ・船木さん)

ドレスコードはあるの?

吉田 じつのところ、いちばん気になるのが服装ですよ。僕みたいな田舎もんは特にあれこれ考えちゃうんで。

富山 だよね、僕も初めて行くときは悩んだ。でも、今回取材した大手ジャズクラブである3店舗は、ドレスコードがないんです。

吉田 えっ? 意外!

富山 そう、つまり服装は自由なので気軽に行けばいいんです。でも、安くはないお金を払ってラグジュアリーな空間に行くことを考えると、自分流のオシャレをコスプレ感覚で楽しむことをおすすめしたい。何より気分が高揚するし、非日常の感覚がより増すわけだから。座席を予約した日から、何を着て、行き帰りに何をするかを考え、ワクワクしながら過ごすほうがお得だと思うんだよ。

吉田 確かに、いつもと違う自分を楽しみたい! そういうのが嫌いな人は、いつもと同じ服装で行けばいいだけで。

富山 そうそう。ちなみに、ジャズクラブをよりスペシャルな場所として使っている方もいるみたいですよ。コットンクラブさんはこう仰っていました。

プロポーズの場所として使われるお客さまもいらっしゃいます。その際は、事前にスタッフと打ち合わせさせていただき、演出面で協力させていただきます。もちろん、すべての願いを叶えることができませんが、できる限りのサポートはいたします。
(コットンクラブ・船木さん)

吉田 なぬっ! 一生の思い出じゃないですか。

富山 吉田くんにはビルボードライブ東京さんのコメントを送るよ。

口下手な方などはデートに利用されるといいかもしれませんね。演奏後は皆さん高揚されていますので、告白が成功するかもしれない(笑)。
(ビルボードライブ東京・角野さん)

吉田 これはメモしておきます。

食事のタイミングは?

吉田 服装のことが解決したので、あとは当日に楽しむだけですね。でも、心配性の僕は食事をどのタイミングで食べればいいのか気になります。

富山 わかる。そもそも、お腹の空き具合に対して、何をどれくらいオーダーすればいいのかも迷うよね。

吉田 そうそう! 結構シャレた感じのメニューだし。

富山 各店舗のメニューやシステムについては、別の項目(各店舗紹介)で説明するので、ここでは概要を。まず、基本的にジャズクラブは1日2公演あって、演奏時間はどちらも60~90分間程度。一般的に「第1部」は開場から開演まで約90分ほどの時間を摂っています。一方、「第2部」の開場から開演までは約45~60分程度。なので、コース料理などを頼んでゆっくりと食事を楽しみたい人は「第1部」を選ぶのがおすすめです。もちろん、演奏中に食べていても問題はない。

吉田 ライブ中に食事って、集中できなそうですよ。

富山 その感覚はわかる。でも、海外のジャズクラブで録音されたライブ盤とか、食器が擦れる音がガンガン入っていることもあるよね。

吉田 確かに。

富山 まあ、日本の場合は、静かな曲調のときにはあまり音を立てないようにするのが暗黙のルールだったりもするからね。ちなみに、当日オーダーで慌てるのは嫌だという人は、予約時にフードの注文も済ませておけば、着席してすぐから運ばれてくるのでスピーディ。そこまでしなくても、スタッフに聞けば素早く出てくるメニューを教えてくれるけどね。

吉田 僕のような貧乏人は、ビールとつまみ程度だから問題ないかな。

やっていいこと/いけないこと

吉田 ライブ中に写真を撮ったり、盛り上がって踊り出してもいいんですか?

富山 アーティストを撮影するのはNG。でも、アーティストが「撮影OKだよ」とステージで言ったときは自由に撮影できます。ライブ中に踊りだすのもOK。ただし、明らかに場違いな盛り上がりとか、他のお客さんからクレームがきた場合は軽く注意されることもあるかもね。お店側としては「雰囲気を壊さなければ自由に楽しんでください」というスタンス。

吉田 つまり「空気を読んで行動せよ」と。そんなに厳しい掟はないんですね。

富山 クラシック音楽じゃないからね。センシティブになり過ぎて、ほとんど楽しめなかった…なんて、もったいない。ルールやマナーを踏まえつつ、もっと身近で気軽な感覚で、ジャズクラブを楽しむのがいいと思うよ。

2018年4月30日の特集記事を再掲