【ニコラ・コンテ】アフロ&スピリチュアルな新アルバムに託した“マニフェスト”

取材・文/三浦 信(COLAXO) 撮影/衣斐 誠  通訳/山口理沙(Piers Japan Inc.)

2018.07.24

ニコラ・コンテ インタビュー

新世代ヨーロピアン・ジャズ・ムーヴメントの最重要プロデューサー/DJ/ギタリストのニコラ・コンテが2年ぶりに来日。ブルーノート東京(東京都港区)で催された公演の合間を縫って、最新アルバム『レット・ユア・ライト・シャイン・オン』について、そして近年、彼が傾倒しているアフロ・ジャズやスピリチュアル・ジャズについて話を聞いた。

ヨハネスブルグで得た感銘

——6年ぶりのオリジナルアルバム『レット・ユア・ライト・シャイン・オン』(今年5月に発表)は、以前と比較すると、よりアフリカン・ミュージックに接近した印象があります。

「自分にとっては自然な変化であると感じています。なるべくして至った形とでも言いましょうか。前作『ラヴ&レヴォリューション』(2011年)や、前々作『リチュアルズ』(2008年)でもその片鱗は見せていたつもりですが、今回は音楽の形式以上に深い次元に進みたいと考えました」

——深い次元というと?

「自分がアフリカン・ミュージックの中に見つけた、精神性や社会性。ミュージシャンである以前に、ひとりの人間として、そういった純粋なものに回帰していきたいという欲求が生まれたのです」

——今回のアルバム制作で、南アフリカ(ヨハネスブルグ)を訪れたそうですが、そのことも影響していますか?

「もちろん。時間的な制約があって、現地でレコーディングできたのは2曲だったけど、自然の強さ、そしてそこに住む人々の純粋さには強い感銘を受けました」

——レコーディング自体はいかがでしたか?

「協力してもらったツミ・モゴロッシ(ds)と、ンドゥドゥゾ・マハシーニ(key)の仕事ぶりには十分満足しています。というのも彼らの実力は、シャバカ・ハッチングスの作品を通じても知っていましたし。大切だったのは腕利きのアフリカ人ミュージシャンを探すことではなく、むしろ彼らとアフリカの地で実際に交流することでした」

——あなたはDJでもあるので、新作の制作に際して多くのレコードも聴かれたのでしょうか?

「リサーチには3年ほどかけました。年代としては70年代のものが多かったですね。アフリカの民族音楽もあれば、それらがルーツとなったアフロ・アメリカン・ジャズやスピリチュアル・ソウル、ファンクまでさまざまです。多くのレコードに接して、音色やリズムを理解することに努めました」

——そういえば、3年ほど前から『Love Flower』と題したミックス・シリーズをMix Cloudで発表していますね。

「まさしく先に挙げた類の楽曲を堪能いただけるでしょう。このシリーズに関しては、私の故郷であるバーリ(イタリア南部の都市)の若きDJ、クラウド・ダンコと共作の形をとりました。彼はジャズよりもヒップホップやファンクに強いのDJでしたが、私なりに若い世代をフックアップする意図でコラボレーションしたのです。彼以外にも若い世代との交流はたくさんあります」

——あなたが考える“アフリカン・ミュージックの魅力”とは?

「神秘的でプリミティブ。西洋的な世界観や価値観とは異なる部分に魅力を感じています」

——今回のアルバムには強いメッセージ性もありますね。

「各曲のタイトルや歌詞を見て、そう感じているのであれば、それは間違いではないのですが、強いて言うなら新作はとても政治的なアルバムと言えるかもしれません。私なりのマニフェストとでも言いましょうか」

——具体的には?

「現代の資本主義は、利益追及型の社会。そこにはテクノロジーの呪縛が存在します。いとも簡単に経済の奴隷になるシステムの中に、私たちは身を置いているのです」

——なるほど。

「もし、そんな経済から自由になることができれば、あらゆる視点が変わり、表現の自由が生まれるでしょう。そんな精神性を大切にすることができれば、人間はひとりひとりがもっと大いなる存在と繋がれるでしょう。それはブッタでもアラーでもキリストでもなんでもいいのです。平和と愛、それこそが大切なことであり、それこそが人生ですから」

ニコラ・コンテ『レット・ユア・ライト・シャイン・オン』