ロイ・ヘインズ “90th Birthday Celebration”

取材・文/柳樂光隆 撮影/古賀恒雄

2015.07.01

ロイ・ヘインズ "90th Birthday Celebration"

ロイ・ヘインズ(Roy Haynes)の偉大さを挙げ始めたらきりがない。おそらくこの原稿はそれだけで終わってしまうだろう。ただ、少しだけ、さわりだけでも触れさせてもらいたい。

1925年生まれのこの偉大なジャズドラマーは、1950年代にチャーリー・パーカー(Charlie Parker)やバド・パウエル(Bud Powell)、マイルス・デイビス(Miles Davis)らとビバップを演奏し、60年代にはエリック・ドルフィー(Eric Dolphy)やブッカー・リトル(Booker Little)、ローランド・カーク(Roland Kirk)、アンドリュー・ヒル(Andrew Hill)らと先鋭的なジャズを創造した。60年代後半から70年代にかけてはジョン・コルトレーン(John Coltrane)やファラオ・サンダース(Pharoah Sanders)、レオン・トーマス(Leon Thomas)らの録音を始め、impuls!、Flying Dutchman Records、Cobblestone、Mainstream、Cadetといったレーベルで公民権運動の機運の高まりともリンクしたスピリチュアルジャズ、ジャズファンク、ソウルジャズ、ジャズロックの数多くの傑作にも貢献している。ここまで幅広く、かつジャズの重要人物とことごとく共演し、ジャズの重要な局面に立ち会ったドラマーは他にいないだろう。そんな彼のキャリアそのものがモダンジャズの歴史そのもの、とさえ言える。

80年代以降もチック・コリア(Chick Corea)との『Trio Music』や、ダニーロ・ペレス(Danilo Pérez)との『The Roy Haynes Trio Featuring Danilo Pérez & John Patitucci』など、年齢を感じさせない作品を次々と送り出し、70歳を超えた2000年以降も精力的に活動を続け、ロイ・ハーグローヴ(Roy Hargrove)や、マーカス・ストリックランド(Marcus Strickland)、 ジャリール・ショウ(Jaleel Shaw)ら、次世代を担う名手を次々に抜擢し、常に若手との刺激的なセッションを渇望してきた。世界中のジャズドラマー、ジャズミュージシャンに尊敬されるロイ・ヘインズの90歳のバースデイを祝おうという特別なセッションがBlue Note Tokyoで行われた。

今回のメンバーは、ピアノにマーティン・ベヘラーノ(Martin Bejerano)、ベースにデヴィッド・ウォン(David Wong)、そしてサックスにジャリール・ショウ(Jaleel Shaw)と、ロイが2011年にリリースした若手との共演を主体とした意欲作『Roy-alty』へ参加したミュージシャンで構成。

ステージに登場すると、演奏するのではなくドラムの前で踊りだし「フォー!」と歓声をあげ、客席を一気に盛り上げる。それからドラムセットに腰掛け、自然にシンバルを叩きはじめ、バンドと共にスウィングしていった。軽いスティックさばきで小気味よく4ビートを刻んで、流れるようなシンバルとスネアのコンビネーションを見せながら、時折バンドの演奏にカツを入れるかのようにスネアやタムを力強く叩く。かと思えば、ドラムソロからそのまま立ち上がり、スティックでリズムを刻んでステージの前に出てきてダンスを踊る。そんな、90歳という年齢を感じさせない茶目っ気あるパフォーマンス、さらにバンドメンバーをいじって観客を沸かせた後に、ドラムソロを始めて再びスウィングを復活させてしまう姿は、この日のロイのすごさを物語っていた。メンバーのジャリール・ショウ、マーティン・ベヘラーノ、デヴィッド・ウォンもそれぞれが素晴らしいソロを聴かせていく。すると、そこに少年のように嬉しそうな表情をしたロイが食らいつくように絡んでいき、スタンディングオベーション並みの大拍手が続いた。

終盤には、誕生日ケーキが登場。そこでロイはメンバーにマイクを渡して、照れるメンバーに無理やり自分へのメッセージを言わせてゴキゲンになり、そのままジェームス・ブラウン(James Brown)の「I Feel Good」を熱唱した。最後の最後までBlue Noteのスタッフやバンドメンバーも戸惑わせてしまうエンターテインメントがあり、まさにインプロビゼーション(即興)と言うべきロイのパフォーマンスに、会場は終始満開の笑顔で溢れていた。

[セットリスト]
2015.5.16 sat.

1st
1. TRINKLE TINKLE
2. IT’S EASY TO REMEMBER (AND SO HARD TO FORGET)
3. JAMES
4. INNER TRUST
5. BEMSHA SWING

2nd
1. QUESTION AND ANSWER
2. JAMES
3. EVERYTHING HAPPENS TO ME
4. GREEN CHIMNEYS
5. MONK’S DREAM
6. SUMMER NIGHT

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