2019.10.09

ハイレゾ録音もライブ配信も! 「森の響き」を再現した最大70席のアコースティックホール【TheGLEE】

取材・文/富山英三郎  撮影/高瀬竜弥

TheGLEEの写真_1

「森の響き」をコンセプトに、アコースティックでのライブを想定したホールが神楽坂(東京都新宿区)にある。フード&ドリンクの提供もおこなっているので、観客は食事を楽しみながら鑑賞可能。レーベル機能も有しており、同ホールでおこなわたライブ音源をハイレゾでリリースしている。さらに、業務用のインターネット回線を引き込んでいるので、ライブのネット配信もできるというから驚きだ。生演奏という一期一会を、ハイテクを用いて拡散する最先端ホール『TheGLEE(ザグリー)』の実態に迫った。

アコースティックでも、PA使いでも

地下鉄の飯田橋駅から徒歩約3分。メインストリートである神楽坂通りから一本小道に入った場所に『TheGLEE(ザグリー)』はある。

「アコースティックホール」と聞くと、クラシックや伝統的な邦楽専用の会場であるかのように感じるが、ここでおこなわれているライブの半数はジャズ。過去にはモニターなしでの名演もあるが、多くはプレイヤーの希望もあり、PAを通したライブがおこなわれている。そこらへんの臨機応変さもまた魅力のひとつ。そんな『TheGLEE』が選ばれる理由は、やはり「響きの良さ」「音の良さ」にある。

TheGLEEの写真_2

「森の響き」をコンセプトとするこのホールは、日本音響エンジニアリングが監修。壁面は上質なコンサートホールと同じく凸凹構造となっており、反射音を拡散させ、均一の密度で美しいサウンドを響かせる。ゆえに、アコースティックライブであれば会場のどこに座っても等しくいい音が楽しめる。それほどのホール設計ゆえに、モニターを入れたライブもまたパーフェクトな響きを形成する。

ハイレゾでのライブレコーディングができる

「音楽のジャンル問わず、皆さんに”音が良い”と言っていただいております。そこで、せっかくならハイレゾ・レコーディングができるようにしようと、機材を2014年に導入しました」とは、ホールやレーベルの運営を手がける甲 壮志(きのえ つよし)さん。

同時に音楽レーベルもスタート。しかし、当時はハイレゾの販売方法が確立されていなかったこともあり、ダウンロードコード付きのカードを販売していた。現在は、ダウンロードコート付きのCDや、e-onkyoやmoraなどからのダウンロードといった販売手法が取られている。今後、年内にはスマホからストリーミング再生することも可能になるとか。これが実現すると、公演後に当日のライブ音源を聴きながら帰ることができる。

『Organic Funky』 SARUGAKU & Black Peppersのジャケット写真、TheGLEE
『Organic Funky』 SARUGAKU & Black Peppers  [TheGLEE] ¥2,000(+TAX)  ピアニスト・作編曲・音楽プロデュースを手がける「猿楽/SARUGAKU」の呼びかけにより集まった、同世代ミュージシャンチーム「BlackPeppers」とのオリジナルセッションユニット。ジャズをベースに、有機的に絡み合うファンキーなグルーヴ感と軽快なサウンドはライブ音源ならでは。ホールの響きの良さもかじることができる。なお、このアルバムはライブ後にオルガンやピアノの音を追加録音している。  メンバー:猿楽(ピアノ)、船曳耕市(ベース)、平岡タカノリ(ドラム)、西村貴行(サックス) http://label.theglee.jp/release/490/

”まずは録音してみよう”から始まる

「考え方はシンプルで、せっかく毎日いい演奏をやっているのだから”録音してみようよ”ということなんです。ブルーノートやヴィレッジバンガードなど、ジャズの名ライブ盤ってたくさんありますよね? あれもまた同じような考え方だったのではないかと思うんです。しかも、ライブでは奇跡も起こる。なので、お声がけさせていただくアーティストさんには、”まずは録るだけ録りましょう。そして、お互い納得がいったらリリースしましょう”とお話ししています」

近年、メジャーレーベルといえど予算が少なく、アルバム制作は減少の一途を辿っている。しかし、ライブを録音するのであれば費用が抑えられ、しかも『TheGLEE』のような良質な環境でハイレゾ・レコーディングできるのは、両者にとってWIN WINの関係といえる 。

「その手軽さもあって、5年間で120タイトルくらいリリースしています。ジャズが多いですが、クラシックや邦楽系、声優系など幅広いですね」

TheGLEEの写真_3
フロント近くにはこれまでに出演したアーティストのサイン入りパネルがずらり。指揮者の佐渡裕氏や、武部聡志氏、鳥山雄司氏の名前も。

業務用のインターネット回線を装備

設備の充実はレコーディング機材だけではない。ピアノはニューヨーク・スタンウェイの1925年モデル。固定のカメラは3台あり、常設のプロジェクターは舞台壁面を覆うように投影することができる。さらに注目すべきは、業務用のインターネット回線を引いている点だ。

「イヤホンを中心としたハイレゾ製品を発売している、ラディウスという会社があるんです。そちらは、ハイビジョン動画をハイレゾ音質で、リアルタイムに楽しめるというアプリのサービスを始めたんです。そんな巨大なデータを飛ばせるホールとして『TheGLEE』が選ばれ、展示会のデモンストレーションで使用されたこともあります」

ライブの生配信はトレンドのひとつ。それらを手軽にできてしまうハイテク環境があるというのは、次世代アーティストにとっては心強いだろう。

TheGLEEの写真_4

お酒を飲みながらクラシック演奏が聴ける

客席は、70席と55席のレイアウトを用意。テーブルの大きさが変わるため、それぞれフードのメニューが異なり、70席の場合は軽食のみの提供となる。

「クラシックの演者さんは、ライブレストランのスタイルに戸惑われることも多かったです(笑)。でも、お客さまの評判がよく、結果的にクラシックの新しい楽しみ方が生まれました」

ライブ以外に、レコーディングスタジオとして使用することも可能。その場合はもちろん一発録りだ。しかし、誰もがパソコンで切り張りしながら音楽を作る時代。また、スペースの問題もあり、いまや一発録りは贅沢なレコーディング方法ともいえる。そんな古くて新しい環境を有しながら、最新技術も貪欲に導入している『TheGLEE』。もしかすると、こういう場所こそが時代の最先端なのかもしれない。

TheGLEEの写真_5


・店舗名 /ザグリー
・住所/ 東京都新宿区神楽坂3-4 AYビルB1
・電話番号/03-5261-3124(平日10:00〜18:00)
・オフィシャルサイト/http://theglee.jp