投稿日 : 2020.08.26 更新日 : 2020.09.30

【有華 インタビュー】「就活して会社員になるのか…」若きシンガー・ソングライターの苦心と決心

有華 インタビュー

作詞と歌唱でいちばん大切なこと


「失恋すると私、すごく痩せるんですよ」

だから周囲にもすぐ失恋がバレるんです…と、彼女は屈託なく話す。そんな恋愛話や過去の失敗談でインタビュアーを笑わせたかと思うと、ときに涙をこらえながら、大切なひとの死についても健気に語ってくれる。シンガー・ソングライターの有華(ゆか)は、そんな「自分の身の上に起きた出来事」を、自作曲にふんだんに盛り込む。

「ただ実体験をそのまま歌ってもダメだと思うんです。この歌を聴いてくれる人に対して“寄り添う気持ち”がないと。歌詞を書く上でも歌唱の面でも、その気持ちはとても大切です」

その姿勢が、聴く者の心を掴んだ。近年の彼女の活躍はすごい。2017年に初めてのワンマンライブを成功させると、翌年には全国9会場を巡るツアーを敢行。好評につき追加公演も実施された。さらに翌2019年にも全国12会場でワンマンライブ。この取材中も、全国ツアーの真っ只中だ。

しかし、この快進撃が始まるまで、長い苦境も経験した。

「高校生のときにオリジナル曲を作り始めて、大学生になる頃には地元(大阪)のライブハウスに出てました。当時の私は『まあ、1〜2年後にはデビューしてるやろな』って、めちゃめちゃ天狗になってました。それが、いつしか『もう無理なのかな…』という気持ちになっていきましたね」

スランプの理由さえ、つかめなかったという。

「いいライブができた、という手応えはあるんです。でも、聴く人の心を掴めてない。ライブが終わって物販のブースを見ても、ぜんぜん売れてないし。完全に行き詰まってしまった。このまま就活して、社会人になるのかな…と」

ミュージシャンか会社員か…

結局、彼女は大学を卒業後、とある有名企業に入社する。配属されたのは営業部だった。

「新人にしては、営業成績は良かったと思いますよ。初めての相手でもすぐに仲良くなれるので、向いてる仕事でしたね」

明るく無邪気で飾り気のない、彼女の人柄が功を奏した。新人としては異例の好成績を収め、表彰されるほどの大活躍。しかし、音楽への情熱が消えることはなかった。

「会社員として仕事をしながら、音楽活動も続けていました。でも営業の仕事を優先しなきゃいけなくて、何度も悔しい思いをしました。収録や撮影に行けなかったり。あと辛かったのは、エクセルですかね(笑)

そんな激務の合間に、曲を作り、歌い、力を蓄えた。すると、意外なところに光明が見えはじめる。

「大学を卒業する年に、インスタグラムで歌をアップし始めたんです。もがき苦しんでいた時期で、とにかく多くの人に見てもらいたい。その一心でした」

インスタの投稿が運命を変えた

その後、会社員になってからもインスタに歌唱を上げ続け、気づけばフォロワーが10万人に到達。会社を辞め、音楽に専念する決意は固まった。

「SNSで多くの人に支持されている。それは数字を見ればわかりますけど、目の前にお客さんがいたわけではないので実感はなかった」

と語る彼女だが、それを実感するときが訪れる。

「インスタで人気が出て、初めてワンマンライブをやることになったんです。ステージの幕が上がって客席を見たとき、思わず『うおっ!』って声が出ちゃいました。それまで、30人くらいのお客さんしか見たことがなかったから、びっくりして」

以来、数多くのステージで観衆を沸かせてきたのは、冒頭で書いた通りだ。この取材時も、彼女はライブのステージに立つ直前だった。しかし、今日の客席には誰もいない。この日、彼女が臨んだのは無観客の配信ライブだ。

ライブ配信イベント「MUSIC GATE」に出演した有華。8月19日、20日の2日間で実施され(有華は2日目に出演)計6組が出演した。当日の有華のステージは、アーカイブ動画として有料視聴することができる。公開期間は2020年10月2日まで。詳しくはこちら

「無観客ライブは初めてです。いつも自分の部屋でインスタライブとかやってますが(笑)、規模もぜんぜん違うし機材も本格的で驚きました。お客さんは誰もいないけど、いつもの感じで歌える自信はあります。見えない相手に向かって歌うのは慣れてますから」

インスタでライブを重ねた経験が、こんなところで役に立つとは。ただし、彼女に慢心はない。

「いつか出たいと思っているテレビの歌番組があるんです。それだって無観客ライブと同じように、見えない視聴者に届ける力が必要です。そのためには、もっと練習して、経験を積まないと。私はまだまだ修行中の身ですから」

彼女は笑顔でそう語り終えると、誰もいないステージに歩いて行った。

 

有華/ゆか
1994年10月9日生まれ。大阪府出身。幼少期より地元のミュージックスクールにて声楽(コーラス)を学び、高校生からはオリジナル曲を作り始める。SNS(インスタグラム)上に投稿した楽曲の歌声、大阪のおばちゃんみたいに明るく飾り気のないキャラが話題を呼ぶ。2017年に初のワンマンライブ(東名阪福)を開催し、以降も4度の全国ツアーを実施。公式サイトはこちら

 

ライブ配信イベント
『MUSIC GATE』スタート!!

2020年8月にスタートした、ライブ配信イベント「MUSIC GATE」。さまざまなジャンルの “注目ミュージシャン”たちがライブパフォーマンスを生配信(過去のアーカイブ動画の聴取も可能)。さらにアーティストのインタビュートークなども披露される。

先日、2回目の開催となった「MUSIC GATE vol.2」(8月19日、20日に開催)が大盛況で幕を閉じ、次回「MUSIC GATE vol.3」も開催決定。日程は、9月20日(日)、21日(月・祝)、22日(火・祝)実施予定。詳細は以下のサイトで近日発表!

MUSIC GATE
https://live-gate.jp/