投稿日 : 2020.10.30

【Kazuo インタビュー】話題沸騰のラッパーが語った「バイリンガル・ラップの秘訣」

Kazuo

ニョーヨークに“日本語と英語を自在に操るバイリンガル・ラッパーがいる”という噂を耳にしたのは今年の夏のこと。巧みなフロウと高速ラップで、今、ネットを中心に急速に知名度を高めているのがKazuo(カズオ)だ。

今年6月にはデビュー・アルバム『AKUMA』をリリースし、以降、9月に公開した動画はわずか2日間で23万回再生を記録。その間、SNSでは1万人以上のフォロワーを増やすなど、怒涛の快進撃を続けている。その注目度とは裏腹に、いまだ謎の多い彼は一体どんな人物なのか。本誌では、現在ニューヨークに住む彼にリモート取材を実施。

不敵でアグレッシブなラップとは反対に、カメラの前に現れた彼は、意外にも物静かな好青年という印象。「普段は大人しいんですよ」と語る彼から、その生い立ち、高速ラップやバイリンガル・ラップの原点を伺った。

授業中でもラップバトル

アメリカ人の父と日本人の母を持つKazuoは、米ニューヨーク生まれ。5歳のときに父親の仕事の関係で神奈川県・横浜に移住してきた。

日本に来てからも、家での会話は基本的に英語。「母親が日本語で話してきても僕は英語で返事していた」という。「もともと大人しい子供だった」というKazuoは、慣れない日本でいじめにもあい、毎日ケンカに明け暮れたという。

「友達が居たらふざけるような子供だったけど、結構いじめも受けていて。いつもケンカしてましたね(笑)」

父親が音楽好きだったこともあり、家の中では常に洋楽やヒップホップが流れ、14歳のときには、すでに英語でフリースタイル・ラップも披露していたという。

「小さい頃から毎日洋楽やヒップホップが流れてたんですよ。好きなアーティストは特にいなかったけど。授業中も友達とよくラップのバトルとかしてましたね。給食中も自習時間も。でも、その頃は遊びだったし、超普通なラップでしたけどね。『My name is Kazuo♪』とか(笑)」

Kazuo 3

自分を表現するには、両方の言葉を使うのが一番自然

Kazuoが15歳のとき、今度はニューヨークへ移住することになる。日本とはまったく違う環境に、当初はカルチャーショックを受けたという。

「日本とアメリカは全然違うし、学校も危険だったので慣れるのには何ヶ月も掛かりましたね。(日本に在住中)旅行で2、3回アメリカに来たことはあったけど、旅行と住むとじゃワケが違うので」

そんな新たな環境に身を置く中、16~17歳の頃にはオリジナル曲も作り始め、19歳で本格的に音楽と向き合うように。エミネムなどの先人たちのラップを参考にしながら、彼の代名詞「高速ラップ」は培われた。そして、もうひとつの代名詞「バイリンガル・ラップ」は、英語と日本語が入り混じる日常生活の中で、「ごくごく自然に身についていた」という。

「家でも普通に日本語と英語を使ってたから、いつの間にか両方使うようになってましたね。友達もハーフやバイリンガルだったし、会話も日本語と英語が普通に混ざってるんですよ」

「フリースタイルでもリリックを書くときも、日本語と英語が同時に出てくるんです。自分を表現するには、両方の言葉を使うのが一番自然だから」

※下記映像は、10月16日に投稿された「Japanese Kazuo VS American Kazuo」

Kazuoの主戦場はニューヨークのストリート。本場のアメリカ人ラッパーたちとのラップバトルでも、お構いなしに英語と日本語を織り交ぜ、高速ラップで相手をねじ伏せていく。

「相手も何も返せなくなってますね(笑)。『この黒人なんで日本語使ってんの⁉︎』って(笑)。『何言ってるか分かんないけど、めちゃくちゃカッコイイ!』って感じですね」

この2つの言語を使うとき、Kazuoの中には“明確な使い分け”があるという。

「怒りを表現するときは日本語の方がやりやすいんです。日本語は表現できるボキャブラリが豊かだけど、英語だと「Fuck」ばかりになっちゃうんで(笑)。逆に高速ラップは英語の方がやりやすいですね。英語の方がビートに乗せやすいので、怒り以外を表現するときは英語を使うんです」

いつか色んなフィールドで活躍したい

「普段は大人しい」というKazuoだが、〈自分本来の気持ち〉や〈怒り〉を反映したハードな一面があるという。Kazuoはこれを「AKUMA」と呼び、リリックにもたびたび登場させている。

「AKUMA には僕の実際の気持ちとか、ハードな面が現れています。Kazuoはリラックスしてるけど、AKUMA は激しいんです」

この名を冠したデビュー・アルバムが、今年6月に発表された『AKUMA』だ。リリース当初は「世間の反応に不安を感じていた」というが、その反響は予想外なものだったという。

「リリースした頃は、正直どんな反応があるか不安もありました。でもみんなすごく気に入ってくれて、本当に驚きました。SNSのフォロワーもたくさん増えたり、たくさんDMもいただきました」

同アルバムは、アメリカ以上に日本からの反響が大きかったという。事実、このリリース以降、KazuoのSNSには日本からのコメントが増加。“バイリンガル・ラッパー”というキーワードとともに、各メディアもKazuoを取り上げた。

その後、9月に公開した動画はわずか2日間で23万回再生を記録。SNSフォロワーも2日間で1万人以上増加した…、というのは冒頭でも触れた通り。そして10月には、『AKUMA』以来となる新曲「ARIGATO」をリリース。この曲には「今のニューヨークのリアル」が詰めこまれているという。

 

「ファンの皆さんに会えるのが楽しみ」と語るKazuoは、今後、日本でのライブも視野に入れているという。最後に、彼の目標や未来のビジョンを聞いてみると、意外な答えが返ってきた。

「色んな音楽を作りたいんです。ロックでもポップスでも。目標にしているのはチャイルディッシュ・ガンビーノとかXXXテンタシオン(2018年死去)とか。特にチャイルディッシュ・ガンビーノは、音楽以外にも俳優活動とか別のフィールドでも活躍している人なので、僕もいつかそんな風に、色んなフィールドで活躍できればと思ってます」

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Kazuo プロフィール
日本人の母親とアメリカ人の父親を持つ、アメリカ生まれ神奈川育ち。幼い頃からHipHopを聴きながら育つ。高校の時にアメリカへ戻り、大学に通いながら19歳の頃にニューヨークのシーンでアーティスト活動を開始。日本語と英語のバイリンガルラップを得意とし、日本で育ちながらも、アメリカの個性的なラッパーに負けないニューヨークスタイルのHipHopが持ち味。アグレシッブな歌詞と高速ラップを使ってメッセージを伝え、エネルギッシュなパフォーマンスを行う。ビートメイクや、ミュージックビデオの監督、編集者とオールマイティな才能を持つ。

【リリース詳細】

Kazuo『ARIGATO』
■配信開始日:2020年10月23日
■各種配信サービス一覧

Kazuo『AKUMA』
■配信開始日:2020年6月26日
■各種配信サービス一覧

Kazuo SNS
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https://twitter.com/HeyKazuo
https://vt.tiktok.com/AQgafY
https://www.youtube.com/user/EnigmaniacX