投稿日 : 2020.12.17

【榎本有希 インタビュー】2020年秋、関西で活躍してきた実力派サックス奏者が上京!

写真 / 岡野慶

京都・橘高校を経てパフォーマンスの世界へ

──ちょうどこの11月に、関西から東京に出てこられたとお聞きしました。

そうなんです。つい先日引っ越しが終わったばかりで。

──まだ榎本さんのことを知らない読者も多くいると思いますが、まずは紹介もかねてお話を聞かせてください。まず、プロフィールを拝見すると……京都の橘高校でサックスを始めたとあります。

本当は中学時代からサックスに触れてはいたんですけど、あまり本気ではやっていなくて……。

──でも橘といえば、たびたびメディアにも登場するマーチングの強豪校ですよね。

そうなんです。吹奏楽部に入り、一念発起してサックスを練習しはじめました。でも先輩がカラーガードをやっているのをみて憧れて、サックスを置いて旗手になったんです。身長が高いのでダンスに向いてると先輩に言われて。

*鼓笛隊やマーチング・バンドにおいて、フラッグ、ライフル、サーベルなどの手具を用いてパフォーマンスを担うパート。「カラー」は「色」ではなく、国旗や軍旗の意。

──けれど、そこからサックスで大阪音大へ進学されるわけですよね?

ええ。海外のパレードやショーにも出演させていただいて、高校在学中にはすでに将来パフォーマンスを職業にしていきたいと思うようになりました。でも、一生カラーガードで終わることにすこし疑問を覚え、もう一度サックスに戻る決意をしたんです。コンクールでも上位の成績を収めていたので「なんとかなるだろう!」くらいのつもりでいたのですが……そんなに甘いものではないと、大学に入ってから思い知らされます。

──そこで出会ったのが、関西でもパワー・プレイヤーとして知られる古谷光広さんだった。

ええ、最初は衝撃的でした。サックスってこんなに大きな音が出るのか、って(笑) プレイも何をやっているかわからないくらいすごくて。とりあえず大きい音を出し、基礎的なスケールをやって……そうこうするうち、気づけば卒業の時期になっていました。就職することも考えていたのですが、古谷先生に相談したら「オマエ、そのまま社会人になってホンマにええんか?」って言われて。それが自分を見つめ直す機会になったんです。それからいろいろなセッションにも顔を出すようになり、自分のリーダー・ライブも始めました。

上京して米澤美玖のレーベル・メイトに

──徐々にコネクションを広げて、2020年2月には、初のリーダー・アルバム『ムーンライト』をリリースされました。

順風満帆ではありませんでしたけど、なんとか漕ぎ着けました。

──初めて聴いたとき、ジャケットのイメージとサウンドのギャップに驚きました。ライル・メイズ的というか、パット・メセニー的というか。

ありがとうございます! このレコーディングに入る前から東京に出たいと思っていたのですが、自分が何者かを示す意味でも個性を表現したアルバムは必要だと思ったんです。

──東京での活動に際して、どのようなビジョンをお持ちですか?

まだ明確なものはありませんが……自分のオリジナル曲もやりたいし、ライヴやレコーディングでアーティストのサポートもしてみたい。いろいろな機会に巡り会えるんじゃないかと思って、ワクワクしています。

関西を離れるにあたって、11月には「関西ありがとうライブ」を開催
──今回トライロジックプロダクションに所属されることが決まりました。こちらはサックス奏者の米澤美玖さんが所属していることでも知られていますが、このレーベルとはどのようなきっかけで知り合ったんですか?

米澤さんのことは以前から知っていたので、直接事務所に音源をお送りして上京したい旨をお伝えしたんです。何度か音源や映像のやりとりをし、米澤さんが大阪でライブをされる際に飛び入りもさせていただきました。それを経て11月からレーベルに所属が決まったんです。

──上京してすぐ、米澤さんとレーベル・メイトとなったわけですね。

関西にいた時からずっと聴いていたので、雲の上のような存在です! 演奏以外でもとても優しく接してくれて、音楽のこと、仕事のことなどお話しさせていただいています。これから楽しみです。

──今後はご自身でバンドなど率いることと思いますが、具体的にどんな音を奏でたいんですか?

基本的には『ムーンライト』の延長線上にある音だと思います。私はパット・メセニーがとても好きで、綺麗なコードとメロディは唯一無二。先ほど音楽の印象をズバリと言い当てられて驚きました。

──ポスト・フュージョーン的な音を目指している。

そうですね。他にもイエロー・ジャケッツやエリック・マリエンサルが大好き。彼らのようなサウンドが、オリジナルにも出てくるといいなと思います。

──いよいよ東京での活動を本格化させることになりますが、当面の目標はどのようなところでしょう?

2021年、早めの段階でレコーディングしたい……という話はしているのですが、具体的なことは何も決まっていません。ライブもやりたいし、オリジナルも書きたい。やりたいことはたくさんありますが……東京に出てきたばかりで、右も左も分からないので、まずはこの街に慣れないと!

──周りを見回すと、榎本さんと同世代のプレイヤーも多いと思います。数多いミュージシャンの中で、自分はどう言う存在でありたいと思いますか?

東京のミュージシャンって、本当にみんなレベルが高い! 同年代、歳下のプレイヤーと演奏しても刺激をもらうことが多いです。私はまだ名前も顔も知られていないけれど、「関西からなんかスゴイのが出てきたぞ」って言われるようになりたいですね。


榎本有希
1996年1月21日生まれ。大阪府出身。京都橘高校の吹奏楽部でマーチングを始め、国内外のパレードやショーに参加。大阪音楽大学短期学部ジャズコースに進学し、古谷光広、横山貫生にサックスを学ぶ。2020年1月に1stアルバム『ムーンライト』を、7月にシングル「コンテニュー」をリリース。11月から拠点を東京に移し、精力的に活動している。
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