投稿日 : 2018.06.28 更新日 : 2018.09.25

【“ジャズ研”部室訪問/vol.2】理論武装は完璧!? の魅力的な個性派集団「東京大学ジャズ研究会」

日本全国の“学生さん”が運営する、ジャズ研究会やジャズサークルを紹介する当コーナー。今回は「東京大学ジャズ研究会」の部室を訪問。本郷キャンパス(東京都文京区)内「第二食堂3階5号室」にある彼らの活動拠点で、部長の杉山さんに話を聞きました。

ドラム奏者は大歓迎?

——「東京大学ジャズ研究会」が発足したのはいつですか?

「学内の公式の届け出によると1973年となっていました。じつは僕も今回調べてみて初めて知ったんですけど」

——現在のメンバー数は?

「7名です。ほか、院生の人とか入れると、もっと多くなりますが」

——男女比は?

「女性は1名で、あとはすべて男性です」

——なるほど…。寂しいですね。

「…はい」

——主な活動内容を教えてください

「毎週金曜日に、この部室でセッションをやっていて、五月祭や駒場祭といった学祭での演奏や、春夏のリサイタルを学外のライブハウスなどでおこなっています。あと、9月には合宿をやっていますね」

——部内で、もっとも特徴的なメンバーを挙げるなら、誰?

「現役メンバーでいちばん特徴的なのは…、杉山さんですね」

——杉山さん? 部長さんと同姓なんだ。

「はい、ややこしくてすみません(笑)」

——その杉山さんの注目すべき点は?

「女性である、ということです」

——なるほど。さっき言ってた唯一の女性メンバーが杉山さんなのね。彼女の楽器は?

「ピアノです。あと、ジャズは全然関係ないんですけど、2年生で狩猟系サークルに入っているピアニストがいます」

——狩猟? 鹿とか捕まえたりしてるってこと?

「そうですね。鹿とかイノシシとか狩ってるらしいです」

——キャラ的には、かなりワイルドな感じ?

「いや、なんか見た目は東大生って感じですねぇ」

——見た目は東大生(笑)。その人は、狩った動物の皮でドラム作ったりしないの?

「いや、彼はピアノなので」

——さっきから聞いてると、ピアノ率高くない?

「もうダントツで多いです」

——ベースは?

「ベースは現役7人中だと、ひとりです」

——ドラムは?

「いません」

——それは困ったねぇ。

「はい。非常に困った状況です」

——毎週のセッション時にはどうしてるの?

「うちはOBと現役の境い目があまりなくて、執行代までを現役と呼んでいるので、実質的には部費を払えば在籍はできるんですね。それで、ひとつ上の先輩にドラムの方がいらっしゃって、どうしても出ていただきたいときはその方にお願いするか、セッションに関しては誰もいなかったらピアニストが叩きます」

——女性メンバーも欲しいけど、ドラムの新入生を獲得しなきゃ。

「そうですねぇ」

まずは“本を読む”!?

——この、圧倒的なピアノ率の高さを“東京大学の特徴”とするならば、ピアノをやると学力も高くなる、って見方もできませんか?

「うーん、それは分かりませんが…。ちなみに僕はエレクトーンから始めました」

——あ、そうなんだ。いつから?

「3歳くらいから」

——どんな感じでジャズに傾倒していったの?

「最初は日本のフュージョン作品を聴くようになって」

——なるほど。エレクトーンだと、そっちも近いもんね。

「はい。そこから、わりと自然にジャズ系全般を聴くようになって」

——高校生くらいの頃はバンドとかやってた?

「高校の頃はまさにフュージョンにハマってた時期で、すごく演奏したかったんですけど、メンバーにも機会に恵まれず…。いつのまにかフュージョン熱も冷めてきたので、大学に入ってからはジャズをやろうと」

——東大のジャズ研に入ってみて、驚いたことは?

「やる曲がハードというか、変拍子が多かったり、違うキーでやったりとか。普通の人があまりやらないような曲をやったり。噂では聞いていたんですけどね」

——あ、入部前からその噂は聞いてたんだ。

「入部して最初の頃は定番曲をやらせてもらえるんですけど、たまに先輩たちとのセッションで難しい曲に巻き込まれていって(笑)。もちろん、それで鍛えられるので、いい環境ではあったと思います」

——それは現在も伝統として残ってるのかな?

「はい。そういう傾向はあると思います」

——そういえば、さっき廊下で熱心に音楽理論の話をしてるメンバーを見かけましたよ。

「ああ、いましたね。あれは先輩が新入生に解説してたんだと思います」

——二人で鍵盤を押さえながら、すごく難解そうなジャズ理論の話をしてたよ。しかも1時間くらいずっと。

「ああ、よくあるシーンですね(笑)」

——ちなみに、その二人は、ずーっとフランス語で会話してたけど、それもよくあることなのかい?(笑)

「うーん、わかりませんが、その理論はフランス語の方が理解しやすい内容だったんですかねぇ(笑)」

——どうなってんだよ…ここのジャズ研は。

「実際のところ、他大学のジャズ研と比較しても、理論好きというか、理論書をバリバリ読む人が多いですね」

——まずは“本を読む”ってところから始めるんだ(笑)。

「はい。ほとんど素人の状態で入部して、はじめに膨大な量の理論書を読みまくった、という先輩もいたと聞いています」

——東大っぽいエピソードだね。

「いまの三年生に、岡田というサックス奏者がいるんですが、彼も入部時は素人でした。ちなみに高校までは囲碁をやっていて、五段の腕前だそうです」

——ジャズマンになる前は囲碁マンだったの? すごいね! ちなみに彼も、最初に理論書を読みまくったクチかな。

「どうですかね。ただ、みんな理論好きですけど、実践を超えてる話も多いので、普段のセッションではそこまで使う機会がなかったりもします」

——理論書をちょこっと読んで“かぶれる”んじゃなくて、読みすぎて“こじらす”感じがイイよね。

「ジョージ・ラッセルのリディアン・クロマティック・コンセプトとかは、先輩たちはみんな一度は読んでると思いますね。あれは結構高いですけど、持ってる人も結構多かったりします」

——東大ジャズ研にとっては、リディアン・クロマティックは基礎なのね。

「基礎というか、みんな通るところといった感じで。最近だとネガティブ・ハーモニーもよく話題になりますね。ジェイコブ・コリアーがYouTubeにあげてる解説動画とか見たり。いまは“スーパー・ウルトラ・ハイパー・メガ・メタ リディアン”を追っかけるのが流行りといえば流行りで、あとは…」

——うん、もう理論の話はいいや。そうだな…杉山くんの将来の夢を教えてよ。

「えーと、僕は料理を作るのが好きなので、将来はその楽しみをもっと広げたいというか、暮らしの中で活かしていきたいですね」

——料理人になりたいの?

「いや、そういうことではないんですけど」

——じゃ、結婚して専業主夫になりたいってこと?

「いや、専業主夫までは考えてないけど、会社でバリバリ働いてお金を稼ぐよりは、家で家事をやってる方が楽しいな…って(笑)」

——杉山くんってさ…、たまに、すげーパンクなこと言うよね。

「すいません(笑)」

——いや、かっこいいですよ。なんか、東大ジャズ研究会の“ちょっと普通じゃない感じ”を体現してるみたいで。

「はい。現役メンバーも先輩たちも個性的な人が多くて、そこは東大ジャズ研の魅力のひとつかな、と思っていますね」

●東京大学ジャズ研究会
http://utokyojazz.wixsite.com/utokyojazz