【アヴィシャイ・コーエン】話題のプロジェクトが日本初上陸!! 来日直前に明かした“プレイ内容”と“イスラエル・ジャズ”の実態

取材・文/佐藤英輔

2018.08.06

アヴィシャイ ・コーエン インタビュー

現ジャズ界において、頂点にいるベーシストは? そんな問いの筆頭に位置するのが、アヴィシャイ・コーエンだろう。1970年にイスラエルで生まれた彼は、ジャズにあこがれ1992年に渡米。ニューヨークを拠点に活動を続けるも、その下積み時代は苦難の連続だったという。

転機が訪れたのは96年だった。その実力をチック・コリアに認められ、彼のアコースティック・ジャズ・コンボである「オリジン」に加入するや、アヴィシャイ・コーエンは一躍注目のプレイヤーとなった。そして、98年以降は情緒とストーリー性に富むリーダー作を順次リリースし、名実ともに現代ジャズ・ベースの匠としての活動を続けている。

そんな彼はダブル・ベースを弾きながら歌うこともするし、フランクにエレクトリック・ベースを弾くことも稀にある。と思えば、クラシック的なアプローチの大型編成にも鋭意手を染めている。近年ではオーケストラやストリング・セクションを伴う特別仕立ての公演を世界各所で持っており、この8月、ついに東京でもその出し物が披露される運びとなった。 “17人の日本人弦楽器奏者との協調コンサート”となる今回の来日公演は、一体どんなものになるのか? 以下は、メールによる質疑応答である。

12年間を過ごしたNYを離れ…

——アメリカを拠点に活動を続けていましたが、現在は、故郷のイスラエルに住んでいますね。

「今はエルサレムの近くに住んでいます。12年間をニューヨークで過ごしましたが、いつも故郷に戻りたいと思っていました。家族と友人の近くにいられるのって良いですよ」

——演奏や録音の環境も大きく変化したのでは?

「イスラエルは素晴らしい音楽家たちの坩堝です。現在は同郷の音楽家と共演することが多いですね。レコーディングも自国の音楽家とする機会が多くなっています」

——イスラエルの若い世代とも絡んでいますね。例えば、アフロ・アラブ・フュージョン・バンドのクォーター・トゥ・アフリカなど。

「ここ10年ほどで新しい世代の活動が活発になっていて、最近はイスラエルにも、本当に多くの才能にあふれた若い音楽家が出ています。その若い人たちをサポートするのが、私の一つの役割だと思っています。新しい世代と一緒に活動することで私自身も感化されますし、同時に学ばされてもいます。私は彼らの成長の手助けとなることに大きな関心を持っていますし、彼らを好きですね」

——実際に、あなたのトリオにいたピアニストのニタイ・ハーシュコヴィッツが、テルアビブの先鋭的なクロスオーバー・レーベル“ロウ・テープス”からリーダー作を出すなど、現在、秀でたイスラエル人ジャズ・ミュージシャンが、あなたを追いかけるように次々と登場していますね。

「イスラエルのジャズ・シーンはこの数年で随分と大きなものになりました。私や他の音楽家の影響もあると思いますが、それとは別の要因もあります」

——どんな要因が?

「イスラエルはこれまで常にモロッコやギリシャ、トルコ、ブルガリア、スペインをはじめ東ヨーロッパ諸国の多くの異なる文化の影響を受けてきました。さらに、世界各国にいるユダヤ人の子孫たちからも影響を受けているのです。その影響は、音楽や言語、食べものなど多岐にわたり、さまざまな場所にそれぞれ違う形で吸収され、より独創的なものを生み出す助けとなっているのです」

弦楽プロジェクトへの意欲

——あなたは、かつて「アヴィシャイ・コーエン・ウィズ・ストリングス」(2013年)というプロジェクトや、2016年からは「アン・イヴニング・ウィズ・アヴィシャイ・コーエン」と題して、オーケストラを用いたライヴ・プロジェクトを行っています。どんな動機で、ストリングスやオーケストラと共演することになったのでしょうか。

「2013年に、アルバム『アルマー』を作ったとき、その収録曲のためにオーケストラを使ったアレンジメントを書きました。これは私にとって大きなステップでした。まわりにいる皆は、私の楽曲がオーケストラに合うと言ってくれていました。が、実際は、編曲と楽曲を進化させるべく、5年以上の歳月をかけて練りました」

——あなたはジャコ・パストリアスの影響でベースを始めたそうですが、彼も一時はビッグ・バンド表現に邁進しました。オーケストラにせよ、ビッグ・バンドにせよ、才ある音楽家は大きな編成で自分の音楽を具現してみたいと思うのでしょうか?

「どうでしょう? それについてはよく分かりませんが、私はそうしたいと思ったんです。違ったアレンジメントで音楽をファンの皆さんや新しいお客さんと共有するのは楽しいことですし、歓びでもあります」

——ちなみに、あなたの場合はクラシックの奏者を起用しても“お高く”とまらず、ヴォーカルまで披露する。そのしなやかな進め方は本当にクールで愉快。素晴らしいと思います。

「ありがとうございます」

——クラシックもかなり勉強しているのですか?

「ずっとバッハの音楽を聴いて勉強してきました。彼はさまざまな技法を全部やってしまっていますからね。私にとって本当に大きなインスピレーションです」

——この8月(26日)に日本で披露する、17人のストリングス・セクションを擁する公演(アヴィシャイ・コーエン トリオ with 17 ストリングス)について教えてください。

「今回のアヴィシャイ・コーエン・トリオ・ウィズ・チェンバー・オーケストラは、チェンバー・オーケストラのために私の楽曲を進化させたものです。初めて公演を行ったのは2016年のドイツ。以降、幸運なことに他の多くのチェンバー・オーケストラと演奏する機会に恵まれてきました」

“一期一会”で生み出す表現

——今回の日本公演も、あなたのトリオに日本人の弦楽器奏者たちが加わることになっています。「アン・イヴニング・ウィズ・アヴィシャイ・コーエン」においても、あなたは各公演地のオーケストラを起用していますね。その一つ一つがまさに“一期一会”となるショウであり、ある意味“ジャズである“とも感じます。

「一期一会。これは、いい言葉ですね!」

——公演では、アルバム『アルマー』(2014年)からの曲を多くやるというインフォメーションが報じられていますが。

「今回のコンサートでは、『アルマー』からの楽曲は2曲だけになります。『アルマー』以外の曲も、チェンバー・オーケストラとトリオ用に特別に新しく編曲されたものを演奏する予定です」

——そうしたスコアは、あなたが書いているのでしょうか。

「ほとんどの楽曲が私のアレンジです。私のアイディアとイメージを基に、何人かの音楽家/編曲家の“ちょっとした何か”が足されていたりもします」

——今回の日本公演において、指揮者の名前は出されていませんね。

「ご指摘の通りで、今回のショウでは指揮者がいません。でも、ラッキーなことに素敵なコンサート・マスターがいますので、オーケストラとトリオで一緒に創っていきます」

——あなたに同行する2人のミュージシャン(エルチン・シリノフとイタマール・ドアリ)ついて、それぞれ教えください。

「ピアニストで作曲家のエルチン・シリノフは、アゼルバイジャン出身で、私のトリオの新しいパートナーです。これから一緒に活動しながら、互いに成長していけることを、とても楽しみにしています。そしてもう一人のパートナーであるイタマール・ドアリは、才能あるイスラエルの打楽器奏者で、マルチなタレントです。彼とはこれまでに世界中のいろいろな所で、さまざま編成で一緒に演奏してきました。最新アルバム『1970』(2017年)のレコーディングも一緒に行っており、また遡れば『オーロラ』(2009年)と『セヴン・シーズ』(2011年)でもフィーチャーしています」

——かつてチック・コリアが、あなたを自分のグループ・メンバーに抜擢したように、あなたもまたシャイ・マエストロやマーク・ジュリアナをはじめ、秀でた奏者たちをその時々でいろいろ起用しています。協調者を選ぶ際には、どんな部分を重視しているのでしょう。

「才能があるだけでなく、学ぶことに熱心な人ですね。そして、それを自身で成長させてその楽器のベストな存在となれる人です」

——あなたのオーケストラを使った出し物は、オリジナル曲をはじめ、イスラエルのフォーク・ソングや、ラテン曲、ジャズのスタンダードなどを素材にしていて多様な文化や音楽様式を軽々と横断している。そのさまは、コントラバスという“魔法の絨毯”を用いて、自由な音楽の旅をしているようにも見えますよ。

「素敵な見方ですね。私の一連の活動は、さまざまな文化や音楽のスタイルを求める長い旅路でもあるんです。それを求めるからこそ、私は音楽家たりえるのだと思います。音楽が発展していくことや、動いていくのを止めることはできません。ただし、それは同時に私を高みに導いてくれる。ジャズという音楽は“即興”という作法にオープンです。そこには、さまざまな“異なるものから影響を受けた音の要素”があり、新しいものを創造することをやめません。私はジャズのそういうところが好きですね」

——もうすぐ開催される来日公演(8月26日)がますます楽しみになりました。

「日本でチェンバー・オーケストラと演奏するという今回のプログラムは“すべてが新しいこと”で、初めて出会う音楽家たちと一緒に演奏できるのを楽しみにしています。そして何より皆さんが楽しんでくれたら、と思っています!」

イスラエル出身の天才ベーシストが創造する
トリオとオーケストラを融合させた
話題のステージが日本初上陸
Blue Note Tokyo 30th Anniversary presents
AVISHAI COHEN TRIO WITH 17 STRINGS
アヴィシャイ・コーエン トリオ with 17 ストリングス
http://www.bluenote.co.jp/jp/event/avishai-cohen-kioi/
日時:2018年8月26日(日)
場所:紀尾井ホール(東京都千代田区)


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