【フロー・モリッシー】若きシンガー、フロー・モリッシーが歌うフォーク・ミュージック。 そのルーツとは?

取材・文/木村亮介 写真/Masashi Noda、難波里美

2015.12.07

フロー・モリッシー

1994年生まれ、イギリス・ロンドン出身の若きシンガー・ソングライター、フロー・モリッシー。フェニックスやマムフォード・アンド・サンズ、チャーチズといった話題のアーティストが所属する<Glassnote>からデビューアルバム『Tomorrow Will Be Beautiful』をリリースし、世界から注目を集めている。

10月9日(金)に晴れたら空に豆まいて(東京都渋谷区)で行われた「Montreux Jazz Festival Japan 2015」で初来日を果たした彼女。あどけない笑顔、少女のような幼さが残る外見とは裏腹に、しっかりとした口調で丁寧に話してくれた。デビューを経て少しずつ大人へと変わる彼女の魅力とは一体。

——最新アルバムを聴きましたが、切なくも希望の光が見え隠れするようなすごく美しいアルバムでした。壮大な自然や、それを照らす光が目に浮かぶような作品ですね。

「ありがとう、そう感じてもらえるように作ったので本当に嬉しいわ。」

——まさにタイトル通りの内容だと感じました。このアルバムでどんなことを表現したかったのでしょうか?

「“Tomorrow will be beautiful(明日も美しい日になる)”は自分へのアドバイスでもあって。年を重ねるにつれて、“すべての物事は自分次第で美しく感じることができる”ということに気付いたの。悲しみや、日々の何気ない会話のなかにも美しさを見出すことはできる。幼い頃は何でも刺激的で楽しく感じたけど、大人になっても自分次第でその気持ちを変わらずに持ち続けることができるということを他の人たちにも伝えたいと思ったの。」

——ラブソングも多く、とくに若い女性たちに共感を得られると思うんですけど、あなたもまだ20歳という若さです。同世代に伝えたいメッセージなどもこのアルバムには含まれているのでしょうか?

「このアルバムのもう1つのメッセージとして、外へ出て探しまわらなくても、自分のなかには“知識”や“英智”が存在していて、悲しみやいろいろな感情のなかに本当の強さや答えがあるということを伝えたかったの。私が人生というものをどう捉えているかっていうのも表現しているわ。」

——あなたの音楽には60年代の浮遊感のあるアシッドフォークや、サイケデリックなテイストがすごく盛り込まれていますよね。お父さんやお兄さん、家族から受けた音楽の影響が大きいとお聞きしたのですが。

「家族からの影響はすごく大きかったわ。私の父は、「将来はこうなりなさい」と言う人じゃなくて、音楽にしても人生にしてもいろいろなことをたくさん教えてくれたの。私は父から学んだことのなかから自然と今の道に進むことを決めたわ。だから、ギターやピアノを弾くようになったのも自然な流れかもしれないわね。」

——あなたの音楽にはヨーロッパらしい品の良さもありますが、アメリカ音楽の雰囲気もあります。

「イギリス生まれという枠のなかに収まらないようにしているわ。フランスや日本、アメリカの文化にはいつも刺激をもらっているの。普通のイギリスのシンガー・ソングライターじゃなくて、世界のいろいろな場所でたくさんの人と出会って、いろんなことを経験したいと思っているわ。だから初めてのギグもロンドンじゃなくてパリでやったのよ。最近になるまでロンドンでは演奏していなかったの。」

——そうだったんですね。イギリスにも多くのフォーク・シンガーがいますが、お父さんがボブ・ディランの音楽をよく聴いていて、あなたもよく一緒に歌っていたとお聞きしました。アメリカのフォーク・ミュージックはよく聴いていましたか?

「8歳くらいのときに、とある発表会でボブ・ディランの「Maggie’s Farm」をカウボーイブーツとカウボーイハットで歌ったの(笑)。15歳のときに、兄弟でボブ・ディランのコンサートを観に行ったこともあって、今でもとても印象に残っているわ。でも、「Maggie’s Farm」はYouTubeから削除されちゃったみたいで全然見つけられないの。だから、記憶の中でしかもう聴けないわね(笑)。アメリカのアーティストではニール・ヤング、デヴェンドラ・バンハート、ジェフ・バックリィ、ティム・バックリィ、あとジャクソン・C.・フランク、リー・ヘイズルウッド、ベックをよく聴いていたわ。」

——あなたはいわゆるインターネット世代で、昔に比べて自分の音楽を発信することが容易な時代に育った世代だと思うんです。だからこそ、自分というものを発信するためにとくに意識していたことはあるのでしょうか?

「この時代に育って良かったと思うことは、インターネットというものを考えすぎないところね。生まれたときからすでにあるから特別な意識もないし、世界の人々と繋がることができる素晴らしいツールだと思っているわ。実際に、私のマネージャーも日本のブログ「ULYSSES Magazine(http://ulyssesmagazine.blogspot.jp)」で私のことを知ってくれたのよ。14歳のときからMyspaceに曲をアップしていたし、インターネットに対してマイナスな感情を持ったことはまったくないわ。でも、ネットの情報を価値のあるものに留めるために、どこまでシェアするのかを考えないといけないと思うの。Instagramを見ていると何でもシェアする人がいるけど、シェアしすぎないで自分だけに留めておくのも大切だと思うわ。」

——インターネットを通じて、まさか自分がここまで大きくなると思っていましたか?

「自分がビッグだなんて思っていないわ(笑)。でも、昔からずっと歌を歌う仕事がしたいと思っていたし、いろんな人が共感してくれて、自分の音楽が人の助けになるということが一番嬉しいの。もちろんまったく利益がなければ苦労をするとは思うけど、お金のためにやっているわけではないし、歌を歌うことが私の使命のような気がしているの。」

——いろんなライブで多くのアーティストとふれ合う機会が増えたと思います。普通の20歳ではなかなか経験できないことだと思うのですが。

「年齢のことはあまり気にしたことがないんだけど、新しい国へ行ったときは無意識に何でも吸収するようにしていると思うわ。今年はアメリカやヨーロッパの今まで行ったことのなかった都市をいろいろと回れた。それに、イギリスでも自分が育った地域以外はあまり行ったことがなかったんだけど、今年はたくさん行くことができたわ。私のツアーをサポートしてくれた皆さんに本当に感謝しているの。フランスの双子のバンド、イベイー、イギリスのバンド、ザ・ステイヴス、カナダのトバイアス・ジェッソ・Jr.たちのサポートアクトをしてきたんだけど、初めての経験だったからとても勉強になったわ。」

——そういったライブサポートはもちろん、グラストンベリー・フェスティバルをはじめ、いろんなフェスティバルに出演して、多くの人があなたの音楽を聴くことになったと思います。

「デビュー当時はまったく意識してなかったんだけど、ライブをやったり、いろいろな人に「あの曲は何のことについて歌っているの?」ってたくさん質問をされるようになって、「ああ、もう自分だけの曲じゃないんだ」って気付くことができたわ。みんなで共有しているんだってね。」

——普段、あなたがやっている音楽以外に、どんな音楽を聴いていますか?

「そうね、最近はジャズやワールドミュージックをよく聴いているの。あと、フィリップ・グラスとか、映画音楽のようなインストゥルメンタル・ミュージックも好きだわ。インドのマントラ音楽も好きで、デヴァ・プレマールをよく聴いてるわね。」

——今後どういう音楽を発信していきたいと考えていますか?

「少しずつ変わろうと思っているわ。でも、今はあまり無理はしないつもりよ。いろいろな国に行って、それぞれの地で何かを吸収していければいいなと思ってる。あと、最近パリに引っ越したからその影響も次のアルバムに表れるんじゃないかなって感じているわ。今からどんな風に音楽が変化していくのか、自分でも楽しみなの。」

——パリに引っ越したんですね! Instagramにセルジュ・ゲンスブールとジェーン・バーキンの写真や『ELLE』の昔の誌面の写真を載せていましたね。

「そうなの! フランスと日本が大好きよ。日本とフランスに家があったら最高ね(笑)。」

——ミュージックビデオや写真を拝見すると、ヒッピーやボヘミアン・スタイルなど、アメリカで生まれたファッションにもすごく興味があるのかなと。

「子供の頃は60年代、70年代のファッションなんてまったく知らずに、ただそういう服を着ていただけなの。今となったらその年代の影響は強いのかなって感じるけど、当時はただ自然とそういう服を着ていただけよ(笑)。お気に入りのベルボトムジーンズがあるんだけど、5歳の時から穿いているから、膝が破れちゃって……。でも、父がクリスマスにくれたジーンズだからずっと穿いているわ。あと、紫色の羊皮のジャケットもお気に入りよ。」

——日本でショッピングに行きましたか?

「今ちょうど行ってきたとこなの! かわいい雑貨を買ったのよ、ほら(草履、亀の缶バッジなどを見せながら)。まだ初日だから、来週たくさん買い物をしようと思っているわ。」

——日本に来て、驚いたことはありましたか?

「予想していた通りだったから、あまり驚きはなかったの。でも想像していたよりも街がとてもきれいで、素晴らしいと思ったわ。あと、おもしろいと思ったのは、ひとつの作業にすごく時間をかけるところね。さっき、買い物をしていたらそのラッピングにすごく時間をかけていたの。ちょっと急いでいたんだけど、すごく日本文化の勉強になったわ(笑)。パリの人もそういう時間をすごく大切にするんだけど、さらに時間をかけていたから驚いたわ。」

——イギリスの若い女の子って日本のことをどう思っているのか興味があります(笑)。

「「KAWAII(カワイイ)」文化のイメージがすごく強いと思うわ。でも個人的には、日本はとても落ち着いているし、お寺やお茶の文化がとても好きなの。街もとてもきれいで、みんな優しくてフレンドリーな印象ね。」

——では、最後に。いま、恋をしていますか?(笑)

まったくしていないの…(泣)。パリに引っ越したばかりだし、もしかしたらこれからかもしれないわ。でも1年中旅しているから難しいの……。バックステージパスでも配らないと出会いなんてないし(笑)。あなたたちはどう? 恋してる?」

 

– リリース情報 –

アーティスト:Flo Morrissey
タイトル:Tomorrow Will Be Beautiful
レーベル:Glassnote / Hostess
発売日:2015年10月2日(金)
価格:2,268円(税込)

■オフィシャルサイト
http://flomorrissey.tumblr.com

トラックリスト

01. Show Me
02. Pages Of Gold
03. If You Can’t Love This All Goes Away
04. Betrayed
05. Sleeplessly Dreaming
06. I Only Like His Hat, Not Him
07. Wildflower
08. Why
09. Woman Of Secret Gold
10. Tomorrow Will Be Beautiful
(日本盤ダウンロード・ボーナストラック)
If You Can’t Love This All Goes Away(Single Version)

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