「私の音楽や声は人の感情を引き出すきっかけ。私の存在は媒体にすぎないの」

取材/松浦俊夫 写真/青木勇策

2015.12.17

メラニー・デ・ビアシオ

古き良きジャズ、ブルース、ソウルの影響を受ける歌声から、歴史的ジャズシンガー、ビリー・ホリデイやニーナ・シモンにも例えられるベルギー出身の個性派シンガー、メラニー・デ・ビアシオ。10月10日(土)にUNIT(東京都渋谷区)で開催された「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン 2015」の出演のため来日を果たした。今回の来日は、2005年愛知万博への出演以来、実に10年ぶりとなった。UNITでのパフォーマンスは、ゆっくりと揺れながら時折膝をつき、祈るような歌い方や彼女が作りだす静寂さ、音楽の女神が彼女の体を媒体としてその場にいるような印象さえ受けるほど神秘的で力強いものであった。そのアーティスト性はどこからくるのだろうか?

――ミュージシャンになろうと思ったきっかけは何ですか?
偶然だったとも言えるわ。あまり学校が好きじゃなくて、とても夢見がちな子どもだったの。高校を卒業してからの進路を選ぶのに「これもしたくない、あれもしたくない……」と考えていくうちに、私は音楽が好きだと気がついたの。それでブリュッセル王立音楽院に進学することを決めたの。とても難しい入学試験があったけど、もしそれに受かったら、それは「その道へ進め」という神様からの合図だと思っていたわ。そうしたら受かったの。
――子どものころは、もともとフルートを習っていたそうですね? 本格的に歌を歌うようになったのはいつですか?
フルートをやり始めたのは8歳のとき。学校の授業で何か楽器を選ばないといけなかったの。そのときにたまたまフルートを選んだの。フルートは人の声の共鳴を拾って音として出してくれる楽器で、そういうところが好きだったんだと思う。歌は子どもの頃から歌っていたわ。いつからだったか覚えていないくらい前から。でも、本格的に歌うようになったのは、10代の頃に友達とバンドを組んだのがきっかけ。それから、どんどん歌う機会が増えていったわ。
――ファーストアルバムの『A Stomach Is Burning』(2007年)から歌声だけでなくビジュアルにも一貫したこだわりが感じられます。例えばこのインタビューが始まる前に撮る写真について「モノクロがいい」と話していたり…。クリエイションはすべて自身でコントロールしていますか?
人は音楽を聴く前に何らかのビジュアルを目にすることとなる。音楽を聴いてもらうために、その扉を開けるために、ビジュアルは大切な要素だと思っているから、それも含めてクリエイションの一部だと考えているわ。黒にはすべての色が含まれているの。黒は想像をかきたててくれる色。『NO DEAL』(2013年)のジャケットにしても、そのコンセプトをレーベルに説明するのがなかなか大変だったわ。ジャケット写真の主役は、映っている私ではないの。主役は、私を取り囲んでいる黒や暗さなの。私の音楽や私の声は、あくまで聴く人の感情を引き起こさせるためのきっかけであって、けっして「私が私が…」と個人的な私生活やエゴを歌っているのではないの。私はただの媒体でしかない。そういったものを取り除くのに7年間かかったわ。私の私生活のことなんて、誰も知りたくないわよね。
――前作に比べて本作は、他の音楽的な要素を感じるところがありました。特にロックっぽいところがあるなと思いました。
前作と比べるとよりジャズの要素が少なくなっていると思う。空間の広がり、反響するものがそこにはあって、もっとインディーでアンダーグラウンドな雰囲気を出すことができた。プロデュース、ミックス、マスタリング……すべての工程に私が関わったから、より私らしい作品になったわ。
――ステージで歌いながらフルートも吹かれますが、歌っているときとフルートに持ち替えて演奏するときのフィーリングの違いはありますか?
私にとって、言葉が終わったらフルートを吹き始める、という感覚。言葉の延長にフルートがあるの。ストーリーテリングの続きをフルートでやっているという感覚。だからそんなに違いはないわ。
――あなたは独自のスタイル、世界観を持ったシンガーだと思っているのですが、男女、ジャンル問わずクールだと思うシンガーを教えてもらえますか?
マイルス・デイビスがベストシンガーだと思っているわ。ジミー・ヘンドリックスはベストドラマーだと思っている。彼の音楽や仕草のなかにはたくさんのパーカッションがあると思っているわ。
――今までの人生のなかのいろんな場面で、音楽に影響を受けたり救われたりしたことがあると思います。そのなかでも「この人のこの曲」を1曲しか選べないとしたら何を選びますか?
難しい質問だから『NO DEAL』に関して言わせて。『NO DEAL』を作っているときに、自分にとって大切だった曲、と考えてみるとニック・ケイヴの「Push the sky away」を挙げるわ。曲は出来上がっていてジャケットをどうしようか考えているときに聴いたの。ビジュアルは、私の物語にとってとても大切なんだけど、フランスでリリースするときに「ジャケットを変えてほしい」と言われていて。私としては変えたくなかったの。私は夜にサイクリングをしたり散歩をしたりするのが好きなんだけど、ある夜、ブリュッセルのとある場所へ自転車に乗って向かっている時、ヘッドフォンでこの曲を聴いたわ。そのときに「この空を押しのけて、私の夢にチャンスをください」と歌詞の通りの気持ちになったの。どうしようか悩んでいる時に「レーベルからの制約なんて全部押しのけてやる!」と、背中を押してくれた曲よ。

 

– リリース情報 –

タイトル:No Deal Delux Edition
アーティスト:Melanie De Biasio
レーベル:Play It Again Sam/Hostess
価格:2,500円(税別)
発売日:2015年10月9日(金)

[トラックリスト]
DISC 1
1. I Feel You
2. The Flow
3. No Deal
4. With Love
5. Sweet Darling Pain
6. I’m Gonna Leave You
7. With All My Love

DISC 2
1. I Feel You (EELS Remix)
2. The Flow (Hex Remix)
3. No Deal (Seven Davis Jr Remix)
4. With Love / Sweet Darling Pain (Gilles Peterson & Sinbad Remix)
5. Sweet Darling Pain (Chassol Remix)
6. I’m Gonna Leave You (Clap! Clap! Remix)
7. With All My Love (Jonwayne Remix)
8. I’m Gonna Leave You (The Cinematic Orchestra Remix)

■Hostess
http://hostess.co.jp/news/2015/08/008461.html

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