【デイム・ファンク】伝承と進化が交差するモダン・ファンクの世界

取材・文/大前至 通訳/Kana Muramatsu 写真/Yuma Totsuka

2016.03.03

デイム・ファンク

ロサンゼルスの名門インディ・レーベルであるStones Throwからリリースしてきた数々の作品群によって、“モダン・ファンク”シーンの旗手としてワールドワイドに活躍するアーティスト、デイム・ファンク。2015年夏にはソロとしては2作目となるアルバム『Invite The Light』をリリース。11月中旬にはワールド/アジア・ツアーの一環として来日し、バンドを率いてのショウを東京と大阪にて披露した上に、さらにDJを中心としたソロ・ツアーも東京、名古屋、大阪の3都市にて行なった。その来日ツアー初日となったビルボードライブ東京でのサウンドチェック後の慌ただしいなか、楽屋にてデイム・ファンクに話を聞いた。

――まずは新作『Invite The Light』について、前作『Toeachizown』(2009年)との違いを教えてください。

「『Toeachizown』はStones Throwのピーナッツ・バター・ウルフと一緒にアイデアを出し合いながら作っていったんだ。“ここはクールだな”、“ここはキープしよう”って具合にアイデアを出し合った結果として『Toeachizown』になったという感じ。まさにタイトル通り、お互いの好きなようにやった。『Invite The Light』はコンセプト・アルバムだね。ピンク・フロイドやラッシュのアルバム、あるいはプリンスの『1999』や『Sign ‘O’ the Times』みたいにね。」

――制作方法についての変化はありましたか? たとえば今回はPro Toolsも使っていますね?

「前作まではずっと1トラックでCDに直接録音してきたんだ。今回はPro Toolsは使っているけど、ほかにはそこまで大きな変化はない。俺が好きな音楽がレコーディングされた時代に使われてたビンテージのキーボード、シンセサイザー、ドラムマシーンをずっと使っている。1979年~2015年のヴァイブをキープしつつ、俺が初めてレコーディングした頃から使っている同じ楽器を使用して作品を作りたかった。今回、Pro Toolsを使ったのは、単にトラックをそれぞれ分けて録音したかったからなんだ。」

――今回、ファンクだけでなくて、ハウスなども取り入れて、曲のジャンルも広がったように思いますが、それはなぜですか?

「昔からラリー・ハード/ミスター・フィンガーズの大ファンだし、ムーディーマンも好きだし、オマー・Sも友達だったりする。俺としてはファンクだけとか、モダン・ファンク、ブギーだけって思われたくなかったんだ。ファンクが得意かもしれないけど、DJとしては他のジャンルの音楽もプレイする。俺はただ音楽が好きだからね。ジャンルを広げたけれども『Invite The Light』にはまだファンクはベースとしてあるし、やっぱりこれはモダン・ファンクのレコードだと言えるよ。」

――『Toeachizown』はインスト曲が中心でしたが、『Invite The Light』では自らのボーカル曲が増えましたね。

「自分の声をどう使うかということ、ありのままの自分に自信が持てるようになったから、自分のボーカルが自然に増えたんだ。ブラック・ミュージック界では、特に同じ黒人の間ではどうしてもスティーヴィー・ワンダーやルーサー・ヴァンドロスのような声を求められる。でも、ほかのジャンル、パンク・ロックやメタルなんかだと誰も気にしない。ボブ・ディランの声なんて一部の人にとっては最悪だろ? でも彼はシンガーでずっと歌い続けている。それに自分自身で語りたいストーリーがあって、インストだけでは明らかに物足りない曲も多かった。今までと違うこともしたかったし、そうすることでよりクールなバランスになったと思う。」

――ボーカリストとしての自分をどう評価しますか?

「ボーカリストとしての自分を定義するなら、スタイリスティック・ボーカリストだね。自分のボーカルは、ありのままの自分の一面であり、俺のストーリーの一部であり、俺の生き方の一面でもある。俺の着こなしや身のこなし、そのすべてが反映されている。キャメオのラリー・ブラックモンもジュニー・モリソン、オハイオ・プレイヤーズ、パーラメント、ファンカデリックも彼ら独自のスタイルを持っていて、いわゆる典型的なボーカリストじゃない。彼らと同じく、俺も典型的ではないボーカリストだと思っているよ。」

2015年11月17日にビルボードライブ東京(東京都港区)で行われたバンドセットでのショウ

――さまざまなアーティストがゲストとして参加しているのも今回の作品の特徴ですね。

「自分の作る音楽に乗せて、彼らのようなアーティストがどういう風に歌うのかを、リスナーに聴いてもらいたかったからさ。今回参加してくれているアーティストたちとの関係を築いていくなかで、リスナーに今までとは違うヴァイブのサウンドも聴いてほしかった。それから、特定のアーティストを特定の曲に戦略的に起用することで、よりクールになるとも思ったんだ。たとえば、アリエル・ピンクとの曲はポール・マッカートニー&スティーヴィー・ワンダーのデュエットのような立ち位置だし、スヌープ・ドッグも特別な場所に存在してくれている。どうしてもあの部分にフリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)のベースを入れたかったから、それも策略的にそうしたし、マスター・ブラスターのコンピューター・ジェイにも絶対に参加してもらいたかった。ジョディ・ワトリー、リオン・シルヴァースもそう。この2人が1つの作品に一緒に参加しているってすごいことだぜ?! 彼女は怒ってグループのシャラマーを去り、いろんな背景を経て、突然、シャラマーのプロデューサーであったリオンとリオンの息子が参加している。お互いに知っている同士がこういう形で同じレコードに参加してくれるのはクールだと思った。そうやって、参加したすべての人たちがそれぞれ存在すべき場所にいてくれているんだ。」

――今回のゲストの中で、特に印象深かった人は誰でしょう?

「ジュニー・モリソンが参加してくれたことは光栄だった。オハイオ・プレイヤーズのオリジナル・メンバーで、彼がオハイオ・プレイヤーズで作った「Funky Worm」はG・ファンクのきっかけになった曲のひとつだし、後にパーラメント、ファンカデリックのミュージック・ディレクターになって、「Knee Deep」を彼がソング・ライティングしたり、「One Nation Under A Groove」の冒頭のボーカルも彼だ。そんなジュニー・モリソンがアルバムに参加してくれたのは今作で最も重要な点だと思う。」

――ジュニー・モリソンはイントロとアウトロに参加していますが、どういう風に彼にオーダーしたんですか?

「ただ、アルバムに参加してほしいってお願いしただけなんだ。それから彼にアルバムのコンセプトを話した。そうしたら、“ちょうどいい感じのが浮かんだよ”って、彼自身がイントロを作ってきた。本当はもっと長い曲だったんだけど、その1曲を2つに分けて、前半をイントロに、後半をアウトロにしたんだ。この曲で彼が言いたかったのは“この地球上にファンクが存在しなかったら人類にとっては大きな損失だっただろう”ということ。彼は最高の曲を作ってくれたよ。」

――個人的に嬉しかったのが、ア・トライブ・コールド・クウェストのQ・ティップの参加ですね。

「アムステルダムでショウのバックステージで彼と会ったんだ。俺の音楽のことも知っていてくれて、連絡先を交換した。『Invite The Light』を作るってことになって、彼に連絡を取って、参加してくれないかお願いしたんだ。トラックを聴いたらすごく気に入ってくれて、翌日に彼のヴァースが送られてきた。たったの1日でだぜ?! 最高だよ。俺はメジャーのラジオでかけてもらえるような人間でもないし、トップ・アーティストの一員でもない。でも、曲をわたしたら、金の話をしなくても、翌日にすぐ送ってくれるような仲間がこの世界にいてくれるだけで、俺だってすごいことをやっているのかもしれないって実感するのさ。」

――これまでソロ・アルバムを2枚出して、その間にもさまざまな作品に関わってきましたが、最初にやり出した頃と今では自分のなかのモダン・ファンクの定義に変化はありましたか?

「エムトゥーメイやチェンジといったグループがやってきたことが、今でもモダン・ファンクとして同じように自分の中で変わらずに継続している。ただ、自分がデビューした2008年頃と比べて変わったものがあるとすれば、シンガー・ソングライティングの要素が強くなったということかな。ボーカル部分が増えて、リリックを書いて、自分自身をより心から感情的に表現するようになった。ビートじゃなくて、歌を作ろうとしている。ビートもクールだけど、歌やアルバムを作るにはそれ以上の要素が必要になってきた。それが昔との違いだね。」

――今晩はこれからバンドでのライブが行なわれますが、今回のツアーのメンバーを紹介して下さい。

「バンドの名前はザ・ライト(The Light)。日本へ来る前に韓国でショウをやってきたんだけど、最高だったよ。そして、やっとこのバンドと共に日本に来られた。E・デイはバンドのミュージック・ディレクターでキーボード、ベース、ボーカルを担当している。彼はこれまでもメリー・ジェーン・ガールズ、メイシー・グレイ、ギャップ・バンドとかと一緒にやっていて、ロサンゼルスで活躍しているミュージシャンだ。レジー・レッグはドラム担当で、ボーカリストでもある。彼のドラム・プレイは最高さ。これまでも素晴らしいメンバーとライブをしてきた。亡くなってしまったジェイ・ワン(J-1)、コンピューター・ジェイ、それにマーズ・ヴォルタのジョン・セオドラ。彼は日本へ一緒に来てプレイしたことがあるね。彼らとも楽しかったけど、今回のメンバーと一緒にやれて最高だよ。そして、日本の人たちがこれまでと変わらずに、ずっとこういう音楽をサポートしてくれていることに感謝している。また日本に戻ってこられて嬉しいよ。」

 

リリース情報
アーティスト:Dam-Funk
タイトル:Invite the Light
レーベル:Stones Throw/BBQ
価格:2,400円(税別)
発売日:2015年9月20日(日)

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