投稿日 : 2022.12.29

【2022年ベスト】ジャズ アルバム BEST 50

JAZZトランペット
2022年「ジャズ」アルバム BEST50

マカヤ・マクレイヴン|Makaya McCraven
『In these times』

Makaya mcCravenマカヤ・マクレイヴン

シカゴ出身のドラマーの最新作は、作曲と制作に7年をかけた労作とのこと。ハープ、フルート、ギターの他、ストリングスもここぞという場面で導入。オーヴァー・ダブやエディットを施されている箇所もあるのだろうが、今回は生演奏のアタックの強さとダイナミズムが前景化している印象。そのせいか、前作に較べて若干グルーヴ感に変化が見られる。ミニマル・ミュージックやビート・ミュージックも視野に入れた射程の長さが魅力で、音楽的な懐の深さが窺える。


曽根麻央|Mao Sone
『Brightness of the Lives』

mao sone曽根麻央

ピアノとトランペットの両方を演奏する“二刀流”こと曽根麻央の最新作は、井上銘(g)、山本連(b)、木村紘(ds)、曽根から成るバンドでの録音。時にグルーヴィ―な展開も見せるバンド・サウンドが軽妙で、パーカッションが加わった曲はトライバルな様相を見せる。前作は部分的にウェザー・リポートを連想させる箇所もあったが、本作はよりオリジナリティが高まっており、完成度の高い仕上がりに。曽根のフリューゲル・ホーンはケニー・ホイーラーに通底している部分も。


マーク・ジュリアナ|Mark Guiliana
『The Sound of Listening』

Mark Guiliana 『The Sound of Listening』

デヴィッド・ボウイ『★』にも参加したドラマー、マーク・ジュリアナ率いるカルテットの最新作。ジュリアナはシンセサイザーやビートのプログラミングも行っており、超絶技巧を誇るドラマーとしての影は今回はやや薄めだ。編成的には、ピアノがファビアン・アルマザンと交代でシャイ・マエストロがプレイしており、ECMからのアルバムも秀逸だった彼のプレイが演奏にふくよかさを与えている。ジェイソン・リグビーのいななくようなサックスもいい。


マーク・ターナー|Mark Turner
『Return From The Stars』

Mark Turnerマーク・ターナー

8年ぶりにECMからのリリースとなるサックス奏者によるカルテット作品。60年代の新主流派を今風にアップグレードしたような作風で、ターナーのソロは流麗で淀みない。分厚くて温かみのある音色にジョー・ヘンダーソンを連想した、という人もいるだろう。ドラムのジョナサン・ピンソンはウェイン・ショーターやハービー・ハンコックのサポートも務める俊英。飛沫をあげるようなシンバルが特徴的な彼は、本作のもうひとりの主役である。


マーキス・ヒル|Marquis Hill
『New Gospel Revisited』

Marquis Hillマーキス・ヒル

黒田卓也らと並ぶ新世代ジャズ・トランぺッターのライヴ盤。オーセンティックなジャズを基軸にしつつも、ヒップホップ的なビート感も活かした曲が多い。それにしても参加メンバーが豪華。ウォルター・スミスⅢ、ジョエル・ロス、ジェームス・フランシス、ケンドリック・スコット、ハリシュ・ラガヴァンが揃い、熱気のこもった演奏を展開。まるでライヴの場に居合わせたような臨場感が魅力だ。私的MVPはヴィブラフォン奏者のジョエル・ロスである。


マーティ・ホロベック|Marty Holoubek
『TRIOⅢ(Radio Edit)』

Marty Holoubek 『TRIOⅢ』

石若駿らと共演してきたホロベックは、日本のジャズ・シーンには必要不可欠な存在となっているベーシスト。そんな彼が、ジム・オルークや勝井祐二と共演してきた山本達久(ds)、映画『ドライヴ・マイ・カー』の音楽を手掛けた石橋英子(p)と組んだのが本作。不穏で怪しげな空気が流れる中、3人が手持ちの札にプラスアルファしたプレイを聴かせる。特に、ホロベックの骨太なベースと、山本のシャープなシンバル使いが強く印象に残る。


メアリー・ハルヴォーソン|Mary Halvorson
『Amaryllis+Belladonna』

Mary Halvorsonメアリー・ハルヴォーソン

注目の女性ギタリストがノンサッチからダブル・アルバムをリリースした。元々、前衛指向が強く、ストレードアヘッドなジャズ・ギタリストに収まらない彼女。別名義ではロバート・ワイアットをヴォーカルに招いたり、ディアフーフのギタリストと協働したりと、表現のレンジを広げてきた。“Amaryllis”はセクステット編成で、“Belladonna”はストリングスとの共演。前者のほうが若干キャッチーだが、予測不可能な揺れや訛りを有する彼女のギターは唯一無二である。


メロディ・ガルドー|Melody Gardot
『Entre eux Deux』

Melody Gardotメロディ・ガルドー

女性ヴォーカリストのメロディ・ガルドーは、一昨年のアルバムも出色の出来だったが、本作は遥かにその上を行っている。ガルドーの他に参加したのは、バーデン・パウエルの子息である男性ピアニスト、フィリップ・バーデン・パウエル。彼のピアノは最小限の音で最大限の効果をもたらしており、その声はガルドーの歌声を巧く引き立てる。一方、ガルドーは、隙間だらけの空間において、ソフトでマイルドなヴォーカルを聴かせている。


ナラ・シネフロ|Nala Sinephro
『Space 1.8』

Nala Sinephroナラ・シネフロ

名門ワープ・レコーズからリリースされた若き才媛のデビュー作。ナラ・シネフロはロンドンを拠点にするカリブ系ベルギー人ミュージシャン。本作では、作曲、プロデュース、エンジニア、レコーディング、ミキシングのすべてを担当。ペダル・ハープやモジュラー・シンセも奏でている。スピリチュアル・ジャズからアンビエント・テクノまでを包含する色彩豊かなサウンドは、アリス・コルトレーンからの影響も窺える。ヌバイア・ガルシアも参加。


オデッド・ツール|Oded Tzur
『Isabela』

Oded Tzurオデッド・ツール

テルアビブ生まれのサックス奏者オデッド・ツールは、高校でジャズとクラシック音楽を学び、インドの古典音楽も身につけた。本作も、インド音楽とジャズの要素を折衷したような演奏が展開されている。ECMからの2作目となる本作では、インド音楽における曲節であるラーガを導入し、スライド奏法を多用している。決してとっつきやすくはないが、スピリチュアル・ジャズの延長として聴けば、新たな地平が見えてくるはず。


1 2 3 4 5