投稿日 : 2022.12.29

【2022年ベスト】ジャズ アルバム BEST 50

JAZZトランペット
2022年「ジャズ」アルバム BEST50

ブッゲ・ヴェッセルトフト|Bugge Wesseltoft
『Be Am』

Bugge Wesseltoft ブッゲ・ヴェッセルトフト

ノルウェー人ピアニストのブッゲ・ヴェッセルトフトは、ジャズランドというレーベルを主宰し、いわゆるフューチャー・ジャズを牽引したキーパーソン。昨今は元e.s.t.のリズム隊と組んでアルバムを2枚リリースしていた彼だが、ここにきて5年ぶりのソロ作を発表した。優美で壮麗なピアノ・ソロをメインにしながらも、同郷のサックス奏者でもあるホーコン・コーンスタらを迎え、透明で澄み切ったサウンドスケープを作り出している。


チャールス・ロイド|Charles Lloyd
『Trios: Sacred Thread』

Charles Lloydチャールス・ロイド

老いてなお盛んなサックス奏者の新作は、3つの異なるトリオで3枚のアルバムをリリースするという形態。ビル・フリゼールとトーマス・モーガンを迎えての『トリオズ:チャペル』、アンソニー・ウィルソンとジェラレルド・クレイトンが参加した『トリオズ:オーシャン』を発表しているが、個人的に推したいのが、3枚目の『トリオズ:セイクレッド・スレッド』。ギタリストのジュリアン・レイジと、インドを代表する打楽器奏者=ザキール・フセインとの丁々発止の熱演がたまらない。


クリス・ピッツィオコス|Chris Pitiokos
『Art of the Alto』

Chris Pitiokosクリス・ピッツィオコス

大友良英がラジオでかけていたのを聴いて、サックス奏者のクリス・ピッツィオコスの存在を知った。ルインズの吉田達也、JOJO広重、スガダイローなどと来日公演で共演している彼だが、その認知度はいまひとつ。サックスでフレーズを吹くというよりも、振動や軋みや唸りを出し尽くすスタイルは、圧倒的な個性を有しているのだが。前衛の極北といった趣の本作もいいが、2021年に出た2枚のアルバムのほうが、彼の凄さがストレートに伝わるかもしれない。


ダニーロ・ペレス|Danilo Perez
『Crisalida』

Danilo Perez 『Crisalida』

ピアニスト/プロデューサー/コンポーザーとしてグラミー賞の常連であり、ユネスコの平和大使も務める、パナマの英雄ダニーロ・ペレス。彼の最新作は、前半4曲が「La Muralla(ガラスの壁)組曲」、後半4曲が「Fronteras (境界) 組曲」という構成で、静と動の対比が明確だ。キューバ出身の名パーカッショニスト、パレスチナ出身のネイ(笛)奏者など、多国籍のメンバーの個性が交錯。特に、ギリシャ出身の女性シンガーの美声が際立っている。


デイヴ・ストライカー|Dave Stryker
『As We Are』

Dave Strykerデイヴ・ストライカー

デイヴ・ストライカーは、1980年代からスタンリー・タレンタインやジャック・マクダフのバンド・メンバーとして、八面六臂の活躍を見せてきたギタリスト。本作では、ジョン・パティトゥッチ(b)、ブライアン・ブレイド(ds)という最強のリズム隊を迎えており、両者が底を支えているからこそ、ストライカーはより自由に弾きまくっている。30年に渡るキャリアは伊達じゃない、と思わせる老獪なプレイが詰まった逸品だ。


ダヴィ・ヴィレージェス|David Virelles
『nuna』

David Virellesダヴィ・ヴィレージェス

キューバ出身のピアニスト=ダヴィ・ヴィレージェスが、PI RECORDINGSからリリースしたアルバム。ゲストはいるものの、基本的にヴィレージェスがピアノやマリンバを演奏。そのプレイはストイックかつスタティックであり、現代音楽とフリー・ジャズと環境音楽を同一線上に捉えたかのよう。良い意味で掴みどころのないピアノは相変わらず。メインはピアノ・ソロだが、3曲でパーカッションが入るという構成だ。


ドミ& J Dベック|DOMi&JD BECK
『NOT TiGHT』

DOMi&JD BECKドミ&J Dベック

00年生まれの鍵盤奏者と03年生まれのドラマーによるデュオの初作。ハービー・ハンコックやカート・ローゼンウィンケルが参加していることもあり、ジャズに括られることが多いが、もしそうならば、相当に野心的で異形のジャズということになる。そして、エレクトロニカとヒップホップとドラムンベースを無手勝流で混淆したサウンドは、元々ジャズが複数の音楽の交雑により生まれたことを思い出させてくれる。マック・デ・マルコがヴォーカルで1曲に参加。


エズラ・コレクティヴ|Ezra Collective
『Where I’m Meant To Be』

Ezra Collectiveエズラ・コレクティヴ

活況を呈していた南ロンドンにおいて絶大な影響力を誇るエズラ・コレクティヴのセカンド。結成当初の音楽的コンセプトは「ジョン・コルトレーンやフェラ・クティ、ボブ・マーリーといった先人たちを模倣したゴチャ混ぜバンド」だったそうで、本作でもハイブリッドなサウンドを構築。冒頭からアフロビートとコール・アンド・レスポンスの応酬で、長年ステージでインプロヴィゼーションをこなしてきた成果が如実に出ているように思われる。


ギラッド・ヘクセルマン|Gilad Hekselman
『Far Star』

Gilad Hekselmanギラッド・ヘクセルマン

イスラエル出身のギタリスト、ギラッド・ヘクセルマンのアルバムは先鋭的な試行が多数なされた意欲作だ。エリック・ハーランド(ds)がアンサンブルを立体的に見せ、同郷のシャイ・マエストロ(p)がゲストとして華を添える。ジュリアン・レイジやマシュー・スティーヴンス、マイク・モレーノなど、ジャンルや国境をまたぐギタリストが増えている昨今だが、へクセルマンはその中でも頭ひとつ抜けている感じだ。


ゴンサロ・ルバルカバ|Gonzalo Rubalcaba
『Turning Point / Trio D’ete』

Gonzalo Rubalcaba 『Turning Point / Trio D'ete』

ゴンサロ・ルバルカバは、グラミー賞の受賞歴もあるキューバ出身のピアニスト。本作は、彼が、マット・ブリューワー(b)とエリック・ハーランド(ds)と創ったアルバムだ。ラテン風味を漂わせつつ、時にフリーに、時にムーディーに、そのピアノは千変万化する。それを後押しするのが、ハーランドの性急で手数の多いドラム。特に、テンポの速い曲での暴れ馬のようなプレイは凄絶のひとこと。客席にいる気分で「いいぞ、もっとやれ!」と声をかけたくなる。


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