「伝説的ジャズピアニスト」としての大野雄二を聴く

取材・文/熊谷美広 撮影/名和真紀子

2017.12.06

2017 11.13 mon. @ MOTION BLUE YOKOHAMA

『ルパン三世』の楽曲でおなじみの大野雄二が、今年9月に新アルバム『LET’S FALL IN JAZZ』を発表した。ピアノ・トリオ作品としては5年ぶりとなる同作は「ピアニストとしての大野雄二」の魅力を遺憾なく発揮した秀作だ。このアルバムのリリースを記念し、Motion Blue YOKOHAMAにてライヴが行われた。メンバーは、アルバムと同じ上村信(b)と市原康(ds)。このトリオでの活動は昨年からだが、ふたりとも大野雄二とは昔から共演している、気心の知れた仲間たちだ。

アルバムにも収録されたスタンダード・ナンバー「Sweet Sue, Just You」から、ライヴは軽快にスタート。大野雄二のピアノがスウィンギーに歌っていく。そして時折ユーモラスな語りも…。

「今回はぼくのトリオのライヴですから、ルパンの曲はあんまりやりません。あとジャズですから、毎回違うので、前に聴いたのと違っていても、そういうもんだと思ってください(笑)」

その後もアルバム収録曲を中心に演奏が続く。どの曲も、とても気持ちよさそうに、そしてスウィンギーにプレイしていく。作編曲家として大きな実績のある大野雄二だが、そのルーツにあるのは、あくまでも“ジャズ・ピアニスト”であり、それに対するこだわりも大きい。現在も毎月のようにトリオでのライヴを行ない、ジャズ・ピアニストとしての自分を存分に表現している。

さらにもうひとつの特徴を挙げるなら、あくまでも観客と一緒に音楽を楽しみたい、という姿勢だ。だから決して難解な方向には行かないし、ダラダラと長いソロを取ったりもしない。とてもわかりやすく、楽しく、だが音楽的クォリティは落とさない、そんな演奏が彼の身上だ。無論、それを実現するためには、高い実力と音楽性が必要だ。「My One And Only Love」や「Autumn Leaves」といった、多くの演奏家に親しまれてきたスタンダードを、新鮮に、瑞々しく聴かせる腕前はさすが。

「Autumn Leaves」では、キャノンボール・アダレイの『Somethin’ Else』ヴァージョンのアプローチを取り入れるなど、細やかなこだわりも楽しい。このように、大野雄二のプレイを聴いていると、この人の引き出しの多さに驚かされる。バド・パウエル、セロニアス・モンクから始まり、ウィントン・ケリー、レッド・ガーランド、ビル・エヴァンスなど、ありとあらゆるピアニストを聴き、研究しているということが、ひとつひとつのフレーズやバッキングなどから感じ取ることができる。ものすごい量のジャズのイディオムを蓄積しているのだと思う。そしてそこから、自分自身の音楽性を創り出しているのだ。テーマ→ピアノ・ソロ→ベース・ソロというシンプル構成でもまったく飽きさせないのは、そういった引き出しの多さによるものなのだろう。そしてトリオのメンバーたちも、そんな彼の音楽を、心地よいプレイでしっかりとサポートしている。彼らの確実で安定感のあるプレイによって、大野雄二がより自由になれるのだろう。そういう意味でも、いいトリオだ。

第1部の最後は、彼が音楽を担当した映画『犬神家の一族』から「愛のバラード」が演奏された。スケールの大きな3拍子の楽曲で、彼の作曲家、そしてピアニストとしての魅力が遺憾なく発揮された力演。2部に入っても、スタンダード曲やオリジナルをスウィンギーに、楽しく演奏し、最後に「ルパン三世愛のテーマ」をソロ・ピアノで、そして「ルパン三世のテーマ」をミディアム・シャッフルで演奏し、アンコールでは、ルパン役の初代声優だった山田康雄が歌った「Memory Of Smile」をソロ・ピアノでしっとりと披露し、ライヴは感動的に幕を閉じた。

ジャズ・ピアニストとしての大野雄二の音楽性やエンターテインメント性の豊かさ、音楽性の広さ、そしてトリオの息の合ったアンサンブルが楽しめたライヴだったし、やっぱりジャズって楽しい、と実感させてくれるようなステージであった。

大野雄二トリオ「LET’S FALL IN JAZZ」

出演:大野雄二トリオ 【大野雄二(p)、市原康(ds)、上村信(wb)】
会場:Motion Blue YOKOHAMA
日時:2017年11月13日(月)

<セットリスト>
●1部

  1. SWEET SUE, JUST YOU
  2. MISTY TWILIGHT
  3. MY ONE AND ONLY LOVE
  4. AUTUMN LEAVES
  5. シークレット・デザイアー
  6. LOVE SQUALL
  7. 犬神家の一族~愛のバラード

●2部

  1. C JAM BLUES
  2. LET’S FACE THE MUSIC AND DANCE
  3. A FOGGY DAY
  4. CRY ME A RIVER
  5. LET’S FALL IN LOVE
  6. HUSH-A-BYE
  7. LOVE THEME
  8. THEME FROM LUPIN III

ENC
MEMORY OF SMILE ~piano solo~

●大野雄二オフィシャルサイト
http://www.vap.co.jp/ohno/index.html

【ライブスケジュール】

  • 12月21日(木)東京・御茶ノ水NARU(大野雄二トリオ)
  • 12月22日(金)東京・新宿J(大野雄二トリオ)
  • 12月26日(火)大阪・新歌舞伎座(Yuji Ohno & Lupintic Six with Fujikochans)
  • 12月27日(水)愛知・名古屋ブルーノート(Yuji Ohno & Lupintic Six)

2018年

  • 1月 8日(月)香川・ユープラザうたづ(大野雄二ソロ トーク&ライブ)
  • 1月28日(日)神奈川・鎌倉ダフネ(大野雄二トリオ)
  • 2月10日(土)東京・東久留米市立生涯学習センター(Yuji Ohno & Lupintic Six)
  • 3月10日(土)茨城・常陸太田市民交流センター(Yuji Ohno & Lupintic Six)
  • 4月13日(金)東京国際フォーラムホールA『角川映画 シネマ・コンサート』(大野雄二と“SUKE-KIYO”オーケストラ)
  • 4月14日(土)東京国際フォーラムホールA『角川映画 シネマ・コンサート』(大野雄二と“SUKE-KIYO”オーケストラ)

『LET’S FALL IN JAZZ』
YUJI OHNO TRIO

http://www.vap.co.jp/ohno/discography/vpcg-83523.html

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