投稿日 : 2025.12.26

【西荻窪/ROLLINGA (ロリンガ)】時間が経つほどに居心地の良さが増す、優美なレコードバー

取材・文/富山英三郎  撮影/高瀬竜弥

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いつか常連になりたいお店 #90

「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は2025年8月にオープンした『ROLLINGA』を訪問。商店街の路面に位置するおしゃれな空間で、美味しいお酒と良い音楽を楽しむ。店主のトークもスマートで、初心者から上級者まで内包する居心地の良い場所でした。

エントランスを抜け、アーチをくぐると現れるレコードバー

JR中央・総武線 西荻窪駅北口から徒歩約3分、西荻一番街商店会にある路面店のミュージックバー『ROLLINGA』(東京都杉並区)。吉祥寺と荻窪という人気スポットに挟まれた西荻窪は、静かで肩の力が抜けた空気感が特徴と言える。大型商業施設は少なく、こだわりのある個人店が数多く点在するため、住むほどに魅力が増すエリアでもある。

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「自宅が中央線沿線なので、高円寺から吉祥寺の間で探していました。当初から、タンノイのエジンバラ(スピーカー)とお酒のボトルをひな壇で置いて映える空間をイメージしていて…。でも、なかなか良い場所が見つからず、半年くらい探し続けました」。そう語るのは、店主の松﨑彰人さん。

結果的に、現在の場所であるコンクリート打ちっぱなしの新築スケルトン物件と出会う。そんな『ROLLINGA』は、扉を開けてエントランスを通り、アーチを抜けるとバーカウンターが出現するおしゃれな内装となっている。取材時は床一面に枯葉が撒かれ、上品で哀愁ある雰囲気に演出されていた。

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「独立しようと意識してからは、雑誌やInstagramなどで気になった写真を保存していて。このパターンならこんな感じと、イメージを膨らませていました。今回はたまたまコンクリートの打ちっぱなしだったので、安藤忠雄さんの雰囲気を意識しつつ、お気に入りのNYのバーの感じとか京都にあるホテルのデザインなどをミックスした感じで行こうと思ったんです」

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お酒やバーの楽しみ方を知るきっかけはオーディオだった

1984年生まれの松﨑さんの実家は、群馬県大間々町で100年以上続く洋品店『足利屋』。家が商売をやっていたこともあり、いつかは自分でお店を持ちたいという漠然とした思いが若い頃からあったという。

服飾の専門学校を卒業後は、古着屋で勤務。高校の頃はハイ・スタンダードやブランキー・ジェット・シティ、ミッシェル・ガン・エレファントなど、当時の人気バンドをよく聴いていたという。より深く音楽を聴くようになったのは、古着屋での影響が大きい。

「店長をはじめスタッフ全員が音楽好きで、それぞれCDを持ち寄って幅広いジャンルのものをお店で流していました。そこから徐々に自分の好きなものが見えてきて、一番好きになったのはベン・ハーパー。基本的にはソウルやブルースなどの黒人音楽、フォークやSSWなど、楽器を演奏しているものが好きです」

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古着屋を辞めバックパッカーをした後、ベンチャー系のバッグブランドに勤務。そんなとき、ふとしたことでオーディオにも興味を持つようになる。

「当時はiPodで音楽を聴いていたんですけど、久しぶりにCDでローリングストーンズを聴いたら “あれっ? 全然違うぞ”と思ったんです。調べたら、MP3音源は圧縮されているので、CDのほうが音が良いと書かれていた。それよりも音が良いのはレコードだ、みたいな。そこから興味を持つようになったんです」

まずは安いレコードプレイヤーからスタート。徐々に音響機器のグレードを上げると同時に、ジャズ喫茶やレコードバーにも通うようになった。そのうちデザインにも魅了されるようになり、真空管アンプなどヴィンテージオーディオが好きになっていく。

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「もともとはお酒が強くなかったんです。でも、レコードバーへ行くようになってウイスキーを飲むようになって、そのうちにカクテル含めお酒全般が好きになり、バーという場所の魅力に気づくわけです。そうなると、ミュージックバーというのは自分が好きなものが詰まった場所であり、独立するならこれだと思うようになりました」

お客さんとの関係が深まるバーの接客に喜びを感じる

修行を兼ね、コーヒーカクテルで有名な四谷の『TIGRATO』に入店。約3年後に自分のお店をオープンすることになる。

「古着屋時代からずっと接客業でしたが、バーの接客はこれまで以上にお客さんとの関係が深い。いろいろ教わることもあるし、カクテルを出せばすぐに反応をもらえたり、自分がかけたレコードの感想が聞けたりと面白いんです」

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そんな『ROLLINGA』の音響機器は、前述の通りスピーカーはタンノイのエジンバラ。レコードプレーヤーはマイクロのDD-5、ミキサーはエクラーのWARM2。アンプはサンバレー SV-S1628Dをメインに、サブ機としてラックスマン A3000を置いている。

「最初は室内の反響音が気になったのですが、試行錯誤しているうちに馴染んできて。今は気持ちよく聴けています。お客様からも”音いいね”と言ってもらえますし、長時間聴いていても耳疲れすることもなく満足しています」

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お酒が飲めない人にも、“日常の休息地”として活用してもらいたい

レコードは基本的に片面ずつ、テーマを決めずに選盤しているという。

「ストックの1/4はジャズですね。チェット・ベイカーやスタンゲッツ、あとはノラ・ジョーンズみたいなもの。ソウルだとスティーヴィー・ワンダーとかスライ・ストーン。あとはビートルズやトム・ウェイツ、ヴァン・モリソンとか。新譜だとアシッドフォークみたいなSSWをよくかけます。音楽が詳しくなくても、なんとなく耳馴染みのあるような、お酒のつまみになるようなグッドミュージックを心がけています」

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おしゃれな空間ゆえ、バーに慣れていない人は入店しずらいかもしれない。しかし、松﨑さんは柔和で喋りやすいので、初心者でもすぐに居心地の良い空間へと変わっていくはずだ。また、メニュー表に並ぶモダンカクテルはどれも美味しく、ウイスキーやクラフトジンも豊富に揃う。

「自分の経験から思うのですが、お酒が飲めないという理由だけで、こういう場所での過ごし方を知らないのはもったいない。そういった方々のためノンアルコール・カクテルにも力を入れていますし、ここには音楽もあります。多くの人に “日常の休息地”として活用できる空間を提供しながら、帰宅時には人生の角度が少しでも上向きになってもらえたらと思っています」

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取材・文/富山英三郎
撮影/高瀬竜弥


・店舗名 ROLLINGA(ロリンガ)
・住所 東京都杉並区西荻北3-16-4 1F
・営業時間 17:00〜23:30
・定休日 月曜
(営業日・営業時間はInstagramを要確認)

Instagram @recordbar_rollinga

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