【ゴーゴー・ペンギン】アコースティックとエレクトリックの融合はさらに進む…2年ぶりの新アルバム発表

取材・文/村尾泰郎

2018.03.07

GOGO PENGUINインタビュー

英マンチェスター出身のトリオ、ゴーゴー・ペンギンが2年ぶりの新作『ア・ハムドラム・スター』を完成させた。ジャズ、クラシック、テクノ、ドラムンベースなど、さまざまな音楽から影響を受けたサウンドはますます研ぎ澄まされ、アコースティック/エレクトロニックの境界も軽々と飛び越えた演奏を聴かせてくれる。ジャズという切り口だけでは語りきれない新作について、ゴーゴー・ペンギンの3人、クリス・アイリングワース(ピアノ)、ニック・ブラッカ(ベース)、ロブ・ターナー(ドラム)に話を訊いた。

レコーディング時間が5倍に?

ーー新アルバム『ア・ハムドラム・スター』は、エレクトロニカ的手法を追求した前作の方向性をさらに深化させたようなアルバム。サウンドはエレクトロニック的でありながら、3人の演奏はオーガニックなグルーヴを生み出していて、そのバランスが絶妙です。

クリス うん。まさにそういうサウンドを目指したんだ。“3人でアイディアを持ち寄って曲を作る”という僕らのスタイルが、とてもスムースに進んだ好例だよ。小さなアイディアが曲に発展していって「これはゴーゴー・ペンギンらしい曲になるぞ!」と思える瞬間がこれまで以上にあったんだ。

ロブ レコーディングの時間を充分に取れたのもよかったと思う。今までだと2、3回くらい音を合わせて、すぐにレコーディングしなきゃいけなかった。でも今回はレコーディングに2週間かけることができたんだ。前回はたった3日間しかなかったけどね。

ーーそのせいか、ライブ感のあるバンド・アンサンブルが全面に出て、ダンス・ミュージック的な要素が強くなっている気がしました。

ニック スタジオでは、なるべく自分たちのライブを再現したいという気持ちでやっている。ここ数年、これまで以上にギグを重ねてきたから、お互いの呼吸もわかってきて、いい状態でレコーディングできたと思う。

左から、クリス・アイリングワース(ピアノ)、ロブ・ターナー(ドラム)、ニック・ブラッカ(ベース)。

ーーそうやって時間をかけてレコーディングするなかで、曲も変化していくのでしょうか。

クリス そういう曲もある。今回のアルバムのなかでは「ア・ハンドレッド・ムーンズ」がいちばん変化した。その都度、録音しているから、この曲にはいろんなバージョンがあって、僕が気に入っていたのはプログレっぽいバージョン。でも、僕がいないときに二人が手を加えて、さらに良いバージョンになったんだ。

ーーその曲の〈オルタネイト・バージョン〉が、日本盤ボーナス・トラックとして収録されていますよ。

クリス あ、そうだったね! 〈オルタネイト・バージョン〉は最初に作ったオリジナル・バージョンに近くて、本編に入っているほうは最後にできたバージョンなんだ。いわばリミックスみたいな感覚だね。これからは、そういう手法も増えていく気がする。

ーーちなみにこの曲は、カリブの宗教歌にインスパイアされたそうですね。

ロブ 最初のバージョンは、もっとアンビエントな感じで、途中からブレイクビーツっぽくなってた。でも、その先をどうしようかと悩んでいた時に、YouTubeでジャマイカの宗教歌を見つけて、そのビートを試してみたらうまくいったんだ。

ーーその一方「トランジェント・ステート」は日本の神道から影響を受けた曲だとか。

クリス 僕らは音楽だけじゃなくて、哲学とか宗教、天文学、そういったものから刺激を受けることも多いんだ。以前、日本公演のオフの日に明治神宮に行ったんだけど、神社の静けさがとても印象深くて。それで神社とか神道について調べてみたら、新作に通じるものがあることに気づいた。それは「物の見方は善と悪だけじゃなく、いろんな側面がある」ということ。そういう神道の考え方の持つ美しさや力強さを音楽で表現してみたいと思ったんだ。最初のアイディアは僕だけど、それを3人で広げていった。

第4のメンバーが持つ“もうひとつの耳”

ーー3人の演奏に加えて、エフェクトやミックスにも細かい工夫があって、それがエレクトロニック風なサウンドを生み出しています。そのあたりは、エンジニアのジョン・ライザーと試行錯誤しているのでしょうか。

ロブ ジョン・ライザーは第4のメンバーだ。彼は僕らと別の耳を持っているというか、僕らと“一対の耳”のような関係なんだ。例えば今回、ピアノでずっと持続するサステイン音が欲しくて、それをどうやって作るか考えていたときに、ジョンが薦めてくれた〈スーパーエゴ〉というペダルを使ってみたらうまくいった。レコーディングでもライブでも、彼は音響面で重要な役割を果たしてくれている。

クリス 僕らは音響も楽器だと思ってて、今回はピアノで音響的な工夫をいろいろやった。そういうことって、シンセとか電子楽器を使えば簡単にできるけど、それをあえて自分たちが使っている楽器で表現することが、僕らにとってチャレンジなんだ。

ーー演奏面でもそうですね。例えば今回のドラムは、これまで以上にストイックで打ち込みのように緻密なプレイです。

ロブ これが限界だと思うよ。これ以上、ドラムをエレクトロニックなビートに近づけるとなると、ドラムマシーンを使ったほうがいい(笑)。今回はチューニングとかマイクの位置とか、あらゆるところに気を配ってレコーディングしたんだ。

ーー即興性についてはどう捉えていますか? ゴーゴー・ペンギンの曲は、とても緻密に作られているように思えるのですが。

ロブ インプロビゼーション(即興演奏)には、いろいろタイプがあると思う。ライブにおけるインプロビゼーションは、ミュージシャン同士のやりとりを通じてエキサイティングな空気を作り出すものだけど、すべてが即興だったらゴーゴー・ペンギンではなくなってしまう。いまのところゴーゴー・ペンギンは楽曲を重視しているからね。インプロビゼーションはある種の言語というか、同じメンバーと長年やっていると、お互いが考えていることが段々わかってくる。だから予想外の反応がでることが少なくなってくるんだ。ゴーゴー・ペンギンとして即興をどう捉えるかは、いま模索中で、将来的にどうなるのかはまだわからない。

ーー今後が楽しみです。それにしても、3人とも音楽的ルーツはばらばらで、音楽に対する好みも違うけど、唯一の共通点が「エレクトロニック・ミュージック」だとか。

クリス エレクトロニック・ミュージックのほうが、ジャズやロックよりも自由だと思うんだ。エレクトロニック・ミュージックというフィールドのなかで、ジャズがやりたければジャズをやってもいいし、パンクだって、ダブ・ステップだってできる。楽器は何を使っても良いし、使わずにサンプリングだけでやることもできる。そういう自由さに惹かれるんだ。

ーー自由さというのがゴーゴー・ペンギンの要なんですね。

全員 その通り!

クリス ジャンルに縛られずに、自分たちがやりたい音楽をやる。それが僕らの姿勢だからね。

 

 

 

 

GOGO PENGUIN『A HUMDRUM STAR』

https://www.universal-music.co.jp/gogo-penguin/products/uccq-1080/

 

アルバムのティザー映像